最近、さまざまなビジネスシーンで「スキーム」という言葉を耳にしますが、「何となく意味は理解しているけど、正確に説明できるか自信がない」という方も多いのではないでしょうか。今回は、ビジネス用語である「スキーム」の意味や、混同されがちな言葉との違い、活用例、ビジネスでよく使われるスキームの種類について解説します。
スキームとは
まず、ビジネスで使用される「スキーム」の意味と、使う場合の注意点について解説します。
ビジネス用語としてのスキームの意味
「スキーム」の語源は英語の「scheme」であり、「計画」「案」「図式」「枠組み」といった意味があります。
一方で、ビジネス用語の「スキーム」は、「ある目標の達成に向けた具体的な方法や枠組み」を指します。つまり、単なる計画や案ではなく、もっと踏み込んだ具体的な行動や手順までを想定し、「すぐに実行できる段階まで固められたもの」というニュアンスです。したがって、漠然としたビジネスモデルや、構想段階にある枠組みはスキームとは言えません。
また、スキームは「事業スキーム」や「販売スキーム」というように、別の言葉を組み合わせて使用されることの多い言葉であることも覚えておきましょう。
英語のやりとりでは注意が必要
スキームという言葉は海外のビジネスシーンでも使用されていますが、アメリカ英語の「scheme」には、「陰謀」「策略」「悪巧み」といったネガティブな意味も含まれるため、使い方を間違えると誤解を招く可能性があります。特にアメリカの企業などとやり取りする場合は、相手がビジネス用語の文脈でスキームという言葉を用いない限り、こちらから使用するのは避けておいた方がよいでしょう。
IT業界で使われるスキーム
「スキーム」という言葉には、分野特有の意味で使われているものもあります。
例えば、ITにおける「scheme(スキーム)」とはプログラミング言語の一つであり、数値計算や言語処理、Webアプリケーションなど幅広い分野で利用されています。Web開発の分野では、インターネットのURLの先頭部分、つまり「http」「https」などの部分を「スキーム名」と呼んでいます。
ビジネスシーンでのスキームの活用例
具体的な方法や枠組みを意味する「スキーム」は、人や資金、情報といったビジネスリソースが行き来するようなビジネス上の計画において、とても幅広く活用されています。
ビジネスシーンにおけるスキームの使われ方について、いくつかの例を紹介しましょう。
【自社内で、事業についてのスキームを作成・検討する場面】
「新プロジェクトのスキームを、一週間後までに作成してください」
「今日の会議では、○○事業のスキームについて検討します」
【新規事業への融資を金融機関に相談する場面】
「弊社の資金調達スキームについて説明いたします」
【M&A(合併吸収)に関して企業間で交渉する場面】
「このM&Aスキームは事業譲渡になります」
スキームと混同されやすい言葉との意味の違い
スキームに似た意味を持つビジネス用語や、混同されやすい言葉について、それぞれの意味とスキームとの違いを知っておきましょう。
スキーマとは
スキームと語感が似ていて、混同されやすい言葉に「スキーマ(schema)」があります。
スキーマとは「概要」「図式」を意味し、方法や枠組みを含むスキームと比較すると、まだ抽象的でまとまっていない状態を表すものです。IT用語として使われることが多く、その場合は「データの種類や大きさ、他のデータとの関連など、データベースを定義する仕様や設計」といった意味があります。
具体的でほぼ完成形に近い計画が「スキーム」、もっと前段階の大きな概念の状態を指すのが「スキーマ」だと認識しておくとよいでしょう。
プランとは
「プラン(plan)」は直訳すると「計画」であり、「海外旅行のプランを立てる」「料金プランを選ぶ」など、日常的にも使用されるポピュラーな言葉です。
ビジネスシーンでもプランは計画を意味しますが、「地域に貢献するビジネスプランを考える」「新規プロジェクトのプランを構想する」など、まだ細部まで検討していない、構想段階の計画というニュアンスで使われることが多い言葉です。それに対してスキームは、すぐに実行に移せるほど具体化された枠組みや、手順が決まっている計画に対して用いられると考えましょう。
フローとは
「フロー(frow)」とは「一連の流れ」という意味。ビジネスシーンにおいては「仕事をどのように始め、どのようなステップを経て、どのように終わらせるか」を指します。フローは単体でも使われますが、「ワークフロー」や「フローチャート」といった形で使われる場合も多くあります。
ワークフローは複数人で担当する業務で、各自が取り組むべき仕事の流れを図式化したもの。フロー図にすることで進捗の把握がしやすく、自分の担当業務が全体の中でどのような役割を担うかが理解できます。一方、フローチャートは作業手順を表すものであり、「どの作業をいつ行うか」を、わかりやすく見える化したものです。
ロジックとは
「ロジック(logic)」とは、「論理」「論法」という意味。複雑な物事を分かりやすく簡潔に伝えていくための「考え方の道筋」を表します。ビジネスでは、「ロジックに沿った戦略設計」「売上を上げるためのロジックを考える」といった使われ方をします。また、一般的に知られている言葉として「ロジカルシンキング」がありますが、これは「論理的思考」を意味します。
スキームとの関わりで言えば、ロジックはスキームの方法や枠組みを論理的に組み立てるための考え方です。つまり、より精度や完成度の高いスキームを作成するためには、しっかりとしたロジックが必要となります。
ビジネスで活用されるスキームの種類
ビジネスにおけるスキームは、使われる場面や目的別に、他の言葉と組み合わせて使用されるのが一般的です。ビジネスにおいて使用される代表的なスキームと、その意味について知っておきましょう。
事業スキーム
「事業スキーム」とは、企業が行う事業の具体的な計画や構想に基づいた、仕組みや枠組みを示したものです。例えば、継続的に行う新規事業などを立案する際の、仕入れ・生産・営業などに関する具体的な計画を指して使われる言葉です。
事業スキームでは、策定された計画を「スキーム図」と呼ばれるわかりやすい図面に起こすことが一般的です。例えば、事業の資金調達で金融機関に融資の相談に行く場面や、営業の場面などで、外部の人に見せて説明するために、事業スキームを事業計画書として作成するケースがあります。もちろん、自社内での資金繰りや経営状況を見直すために、スキーム図を作成する場合もあります。
資金調達スキーム
「資金調達スキーム」は、新しく事業を立ち上げる際などに、外部から資金を調達するための具体的な計画や仕組み・枠組みのことです。
資金調達には融資や借り入れ、第三者割当増資などさまざまな方法がありますが、どの手段を選ぶにしても、提出する事業計画書には、しっかりとした資金調達スキームを掲載する必要があります。そのため、上述した事業スキームと同様に、資金の流れや計画を細かく記載し、第三者にも理解しやすいよう、わかりやすく示すことが重要になります。
M&Aスキーム
「M&Aスキーム」は、M&A(Mergers&Acquisitions)=「合併買収」の手法や、その流れのことを指します。株式譲渡や事業譲渡が代表的ですが、その他にも、会社分割や株式交換、合併や資本業務提携など、M&Aのスキームにはさまざまな種類があります。
M&Aを実施する際には、M&Aの目的や譲渡対象、M&Aによって得られる利益、税務上・会計上の取り扱い、対象企業との関係性などを考慮しながら、最適なスキームを選択します。今回はどのようなM&Aを行うのか、M&A後の体制はどうなるかなどを示す際に、M&Aスキームが活用されます。
販売スキーム
「販売スキーム」は、自社の商品やサービスの販売方法に関する具体的な計画のことです。
販路の拡大・開拓や、販売方法の見直しの際には、販売スキームを用いることで、商品メーカーや販売店、消費者といった関係先を軸として枠組みや仕組みを再検討することができます。具体的には、顧客データや口コミなどに基づいた顧客満足度などの指標を分析し、販売における問題点や課題点を浮き彫りにしていくことなどです。
販売スキームを使って自社の現状を分析することで、売上向上や、販売不振などの課題をクリアするための方策を探ることができるでしょう。
評価スキーム
「評価スキーム」とは、人事評価や事業評価を客観的に行うための枠組みです。評価の基準や方法をスキームとして構築しておくことで、客観的な評価ができるようになり、人事業務がスムーズに行えるようになります。
また、客観的な評価基準が示されることで、評価を受ける社員側にとっても納得感が高まり、業務の取り組みに対する指針も明確になります。社員のモチベーション向上や、業績向上の面においても、評価スキームの構築や、必要に応じての見直しは重要となるでしょう。
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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