アイスブレイクは、会議や商談、教育研修、転職の面接など、ビジネスにおけるさまざまなシーンに用いられているコミュニケーション手法です。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、アイスブレイクの目的や効果、活用の注意点について伺いました。オンラインでも使える効果的な活用方法も合わせてご紹介します。
「アイスブレイク」とは何か
アイスブレイクとは、「場を和ませる」ためのコミュニケーション方法のことを指します。本題とは関係のない雑談などをすることでリラックスしたムードを作るケースや、自己紹介や簡単なゲームなどで参加者同士の交流を促すケースが多いでしょう。
アイスブレイクの語源は、「アイス=氷」のように堅くなった場のムードや参加者の緊張感を「壊す」という意味から来ています。
アイスブレイクの目的
アイスブレイクは、会議・商談・教育研修・セミナー・面接などの緊張感が漂いやすい場において、参加者の気持ちをほぐしたり、初対面の相手とのコミュニケーションをスムーズにしたりするために使われます。場全体を和ませ、盛り上げることで発言しやすいムードを作ったり、お互いについて知ることで信頼関係を高め、パフォーマンスを高めたりすることを目的としています。シチュエーションによって所要時間はさまざまですが、研修やセミナーの場合は10~15分程度、会議や面接などの場合は5分程度でアイスブレイクを行ってから本題に入るケースが多く見られます。
アイスブレイクの言い換え
アイスブレイクは「コミュニティビルディング(community building)」や「アイスブレイキング(ice breaking)」とも呼ばれています。
「アイスブレイク」の4つの効果
アイスブレイクによって得られる4つの効果について解説します。
1:緊張をほぐし、発言しやすい場を作る
面識がない相手との対面や、互いのことを良く知らない参加者が集まる場では、「自分の発言がどう受け取られるのか」と不安に思い、萎縮してしまうケースも少なくはないでしょう。こうした場面でアイスブレイクを用いることによって、参加者の緊張がほぐれ、自分の考えや意見を発言しやすいムードを作ることができます。
2:お互いを知ることでスムーズなコミュニケーションができる
アイスブレイクの時間に自己紹介や雑談をしたり、全員でゲームをしたりすることで、参加者がお互いについて知る機会を作ることができます。参加者それぞれの人となりが伝わりやすくなり、より早い段階からスムーズなコミュニケーションができるようになるでしょう。
また、面接の際には、冒頭にアイスブレイクの時間を設けることで、求職者の緊張もほぐれ、より自分の考えを伝えやすくなります。採用担当者は、限られた時間の中で相手の考えを深掘りすることが必要ですが、アイスブレイクによって求職者の本音を引き出しやすくなるでしょう。
3:相互理解が深まり、プロジェクトや通常業務を進めやすくなる
部署やチームが違うメンバーが参加するプロジェクトの場合、通常の業務の中でコミュニケーションが取りにくいケースもあります。しかし、会議などの冒頭にアイスブレイクを設けることで、自然に相互理解を深めることができるため、プロジェクトをより進めやすくなるでしょう。
また、リモートワークなどによって、チームのメンバーと対面でコミュニケーションする機会が減っている場合にも、アイスブレイクでコミュニケーションを深めることができます。メンバー同士が連携しやすくなれば、よりスムーズに業務を進めることができるでしょう。さらに、顧客との商談の場においても、アイスブレイクで相手との距離を縮めることで、潜在ニーズを引き出しやすくなります。
4:参加者の主体性・積極性を促進できる
会議の場では、参加者が活発に意見を出し合い、議論を交わすことが求められるケースが多くあります。アイスブレイクによって発言しやすいムードを作ることで、参加者が主体的に意見を出したり、積極的に会議に参加したりするなど、プラスの方向へ導くことができるでしょう。また、研修やセミナーなどでも、アイスブレイクを行うことでより主体的・積極的に参加するムードを作ることができます。
「アイスブレイク」で注意したいこと
アイスブレイクは、あくまで「コミュニケーションをスムーズにする」という目的のために行う手法です。アイスブレイクで場が盛り上がっても、その時間を長引かせ過ぎてしまえば、本題である会議、商談、面接、研修、セミナーなどの目的を果たせなくなります。アイスブレイクを行う際には、進行管理をきちんと行い、適切な時間内に収めるように注意しましょう。
また、ビジネスの場なので、節度あるコミュニケーションとすることも大事です。雑談や自己紹介などを行う場合にも、「参加者のプライベートに踏み込みすぎない内容」を意識することがポイントです。
ビジネスシーンで使える「アイスブレイク」の手法5選 | オンラインで使える例も紹介
ビジネスのさまざまな場面で使える5つのアイスブレイクの手法をご紹介します。オンラインで使える例も紹介するので、シーンに合わせて活用してみましょう。
(1)時事ネタなどをテーマにした雑談
「最近、気になった時事ネタ」「最近、面白いと思ったエンターテインメント(本、映画、TV番組など)」などのテーマに対し、雑談形式で各自に話してもらう手法です。会議や打ち合わせなど、複数の参加者が集まるシーンにも役立つ手法であり、オンラインでも使うことができます。商談などの際にも、雑談形式で話しながら相手にもテーマを振るなどで、自然に会話を盛り上げやすくなるでしょう。
また、転職の面接では「最近興味のあるニュースはありますか?」などと問われたり、趣味や特技など履歴書に書いてある情報を見て質問をされたり、面接会場に来場するために利用した交通手段や週末の過ごし方などを聞かれたりするケースもあります。
(2)テーマに合わせた自己紹介
自己紹介の時間を設け、「自身の仕事内容」などを簡単に伝える自己紹介と合わせて「最近ハマっていること」「最近、買ってみて良かったモノ」などのテーマについても話してもらう手法です。プロジェクトのキックオフ会議や研修など、初対面のメンバーが集まる場面に活用でき、オンラインでも活用できます。
仕事だけでなく、そのほかのテーマについて話してもらうことで、各自の人となりを知ることができ、参加者の距離を近づけることができるでしょう。
(3)カードを使ったゲーム
アイスブレイクに活用できるカードゲームを利用する手法で、研修やセミナーなどの場面で使われることが多いでしょう。カードゲームの中には、お題や質問の書いてあるカードを使い、各自がカードを引いてから書かれた内容に回答するのみなど、短時間でできるものもあります。
オンラインで行う場合は、進行役がカードを引いてお題や質問を読み上げ、各自に答えてもらう形式で進めると良いでしょう。対面形式の研修でグループワークに取り組む場合などは、グループごとに分かれて行えばより交流が深まるので、その後のワークも進めやすくなります。
(4)心理テスト
その場で簡単な心理テストを行う手法です。色による性格診断や、物事に対する優先順位を診断する心理テストなど、さまざまな心理テストがあります。心理テストを紹介している本や、心理テストのお題が書かれているカードゲームなどを活用すると良いでしょう。研修やセミナー、プロジェクトのキックオフ会議など、初対面の参加者同士のコミュニケーションを活発にできる手法です。オンラインでも使いやすい手法でしょう。
対面による研修の場合は、参加者に事前に心理テストを受けてもらい、診断結果が同じメンバーをグループに分け、当日は各グループで互いの共通点を探ってもらうなどの方法もあります。より深いコミュニケーションにつなげることができるでしょう。
(5)他己紹介
参加者にペアを組んでもらって互いに自己紹介を行う時間を設け、その後、全体に向けてペアを組んだ相手について他己紹介をしてもらう手法です。会議や研修、セミナーなど、参加人数が多い場面で使うことができます。ペアの相手について知ることが必要なため、自己紹介のみのアイスブレイクより、さらに一歩、距離を近づけることができるでしょう。
自己紹介、他己紹介で伝える内容は「名前、仕事内容」に加え、「趣味」「休日によくしていること」など、仕事以外の要素を1〜2点プラスすることで、それぞれの人柄が伝わりやすくなります。長くなり過ぎないように、1名あたり1〜2分程度などの時間制限を設けることがポイントです。
オンラインの場合は「ブレイクアウトルーム」を設定できる会議ツールを利用すると良いでしょう。各ペアの自己紹介をそれぞれブレイクアウトルームで行った後、全体で他己紹介を行う形式で実施することができます。
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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