【2023年度上半期】スタートアップ・ベンチャーの転職市場は今後どうなる?

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スタートアップ・ベンチャーの2023年度上半期の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2023年度上半期の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひ参考にしてください。

スタートアップ・ベンチャーの2023年度上半期の転職市場の展望を一言でいうと

宇宙ビジネス・ロボティクス・生成系AI・メタバースなど成長領域の求人が続々。
求職者は、成長やスピードを求めて大手からスタートアップへ。自由な働き方にも期待。

1.【スタートアップ・ベンチャー】業界・企業側の動き

IT・インターネット分野では、資金調達に成功したベンチャーが人材に投資しており、全体で求人が増加しています。エンジニア領域のニーズはPdM(※1)が最多、次いでフロントエンド/バックエンド、VPoE(※2)、CDO(※3)など。ビジネス領域では、SaaS系企業を中心に、既存顧客からの情報収集・課題分析により、システムの仕組みを改善しプロダクトのアレンジへつなげるカスタマーサクセス、ソリューションコンサルタントなどの求人が増えています。

新領域としては、ChatGPTに代表される生成系AIの活用を進めているスタートアップが急成長しています。メタバースは「教育」「エンタメ」「社内コミュニケーション」など他領域との掛け算により収益化を実現している企業が複数あります。「脱炭素」のキーワードでは、再生可能エネルギーのコントロールやEV充電などを手がけ、国策に応じて柔軟に対応できているクリーンテックベンチャーが伸びています。これらの新領域では企業数が増えていることもあり、求人数も増えています。

一方、「ハードテック」「ディープテック」の領域でも複数分野が活性化しています。2023年4月、宇宙開発ベンチャーとして「日本初の上場企業」が誕生。これに続く企業も複数あり、業界全体が勢いづいています。求人の約8割はエンジニアで、年間100人単位の採用を計画している企業も見られます。50~100人規模のプロジェクトマネジメント経験者も重宝され、50代以上のシニア層が採用されている事例もあります。

量子コンピューティングも大手企業と組んでの開発を進めており、エンジニアのニーズがあります。

ロボティクス領域では物流関連の求人が急増。数百億円規模の調達を果たした企業を筆頭に、異分野で培った技術を物流現場でのピッキングや搬送などへ展開していく動きがあります。ビジネス開発の責任者を、COO・CSOなどのポジションで募集しています。ドローンも、物流や農業での活用が拡大。セグメントが明確な企業に投資が集まっており、採用ニーズが生まれています。

分野を問わず、ベンチャーの採用成功のカギは「採用プロセスの短縮・明確化」に加え、「経営陣がどれだけ採用活動に関与しているか」にあります。RPO(採用代行)や人事担当者に一任せず、経営者自身が直接メッセージを発信していくことが重要です。人事制度・報酬制度を改革する企業も増えているため、乗り遅れると他社に対して劣位となる可能性があるでしょう。

2.【スタートアップ・ベンチャー】求職者側の動き

大手企業からスタートアップへの転職を検討する人が増えています。新たなテクノロジーが台頭し、時代の変化を感じる中、自社で取り組んでいない、あるいはスピードが遅いことにもどかしさや危機感を抱き、スタートアップを目指すようです。以前は大手からベンチャーへ移ると年収がダウンするケースが多くありましたが、現在は維持が可能なケースも増えハードルが下がっています。

スタートアップからスタートアップへの転職では、より事業が若いフェーズの企業へ移り、前職での経験を生かすことで価値を発揮したい・成長したいと考える人が多いようです。

「フルリモートワーク可」「副業可」など、自由な働き方を求めて志望する人も増えています。しかし企業によってはそれらを認めない例もあり、働き方の面では、企業と求職者でギャップが出てきているケースもあります。

※1 PdM:Product Manager(プロダクトマネジャー) 商品やサービスなどのプロダクトの企画立案を行い、製品開発のプロジェクトを成功に導く役職
※2 VPoE:Vice President of Engineering(ヴァイス・プレジデント・オブ・エンジニアリング) 企業の技術部門をマネジメントする役職
※3 CDO:Chief Design Officer(チーフ・デザイン・オフィサー) 企業ブランドやプロダクトのデザイン責任者、主にユーザビリティ向上を導く役職

2023年度上半期のそのほかの業界の動向について知りたい方は、こちらを参考にしてください。
【2023年度上半期】転職市場の動向|17業界コロナ禍後の中途採用・転職活動の最新状況を解説

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虎井祐樹

大手モビリティ会社へ入社。組織立ち上げも経験。2019年よりリクルートキャリア(現リクルート)へ入社、経営/事業企画・マーケティング等のハイキャリア領域を担当。スタートアップ領域特化の立ち上げメンバーとしてコンサルタント職務に従事。

新堂尊康

東海3県における製造業専任コンサルタントとして従事。2016年より、「宇宙・ロボティクス・AI/IoT」をはじめとしたニュービジネス領域のコンサルタントとして従事。