生保・損保の2023年度上半期の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2023年度上半期の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひ参考にしてください。
生保・損保の2023年度上半期の転職市場の展望を一言でいうと
生保ではDX関連・代理店営業、損保では「総合職」の求人が増加。
いずれも異業界出身者の受け入れに積極的。同業界内で職種チェンジのチャンスも。
1.【生保・損保】業界・企業側の動き
生保・損保ともに引き続き採用が活発で、求人が増加しています。
生保は新規事業・業務改善の両軸でDXを推進しており社内SEを募集。近年、少額短期・物損・ペットなど新分野の商品開発サイクルが加速しており、内製化が進んでいる企業ではアジャイル開発やシステムアーキテクトのポジションの求人が増えています。
ここ数年は代理店営業の求人も増加しています。その背景にあるのは、商品リリースサイクルの短期化、法人向け事業保険に注力する企業の増加です。新商品開発、営業活動の活発化に伴い、引受・支払業務を担う事務職、商品をシステムに乗せていく企画職、ペーパーレス化を進める業務改善などのポジションの求人も増えています。
損保の中途採用は、バブル期に大量採用した社員の定年退職が近づいているため、人員補充を目的とした採用が目立ちます。新卒採用だけでは補えなくなり、中途採用へかじを切っています。また、これには変革期を迎え、新しい風を吹き込みたいとする意図もあります。これまでの中途採用は高度な専門職に限られていたが、最近は営業や損害サービスなどのポジションを「総合職」として迎える求人が増えています。
損保は新規事業にも意欲的です。これまで種をまいてきた案件が少しずつ花開き、正式にリリースするフェーズに入っています。これまでは0→1の企画職を求めていましたが、一定の形ができたプロジェクトをマネジメントするポジションの求人が少しずつ出てきています。また、営業は、以前は採用対象を同業界経験者に限定していましたが、異業界からも受け入れるようになってきました。例えば、生保の代理店営業では、不動産営業、コンビニスーパーバイザー、塾講師などが採用されている事例があります。コミュニケーション力や指導力などのコンピテンシーを重視した採用にシフトするようになってきました。
また、「転勤」に抵抗感を示す求職者の増加に伴い、損保ではエリアごとの採用を強化しています。生保では「エリア限定職」を設ける企業とそうでない企業に分かれ、全国転勤がある企業は採用に苦戦している印象です。
2.【生保・損保】求職者側の動き
生保では同業界内での転職が多くなっています。その目的は「年収アップ」「働き方を変えたい」「職種転換して専門性を身に付けたい」など。近年は専門性が高いポジションでも、生保関連の経験があればポテンシャル重視で採用・育成する動きがあり、営業から専門職へ移行したい若手にとってチャンスが広がっています。
損保では、「業界経験不問」の求人の増加に伴い、異業界からの転職が増えています。損保を選ぶ理由としては「安定性」「年収の高さ」に加え、変革の方向性や課題が明確化されているため、「成長性を感じられること」があるようです。異業界からの応募者に向け、丁寧な説明や面接をしている企業が求職者に選ばれています。
生保・損保ともに、一部企業ではシニア層を採用する動きも見られます。ITや資産運用など、専門性が高いポジションでは50代が採用されている事例も出てきました。新卒採用のみならず、シニア層にも目を向けた採用が人手不足解消への有効策となるかもしれません。
2023年度上半期のそのほかの業界の動向について知りたい方は、こちらを参考にしてください。
【2023年度上半期】転職市場の動向|17業界コロナ禍後の中途採用・転職活動の最新状況を解説
酒井智世
新卒で機械メーカーに入社し、人事業務に従事。その後リクルートキャリア(現リクルート)に入社し、建設不動産業界のキャリアアドバイザーを経験。現在はリクルーティングアドバイザーとして金融業界の大手企業を中心に担当。
山本哲也
新卒で政府系金融機関に入社。その後リクルートキャリア(現リクルート)に入社し、一貫してリクルーティングアドバイザーとして従事。東海営業部、新卒社員の育成を経て、製造業、外資系インターネット系企業担当などを中心に担当し、現在は金融業界の大手企業を中心に担当。