30代前半での転職を実現させるポイントは?企業が期待することやキャリアチェンジの方法を解説

30代前半での転職を実現するには、どのようなことに留意して転職活動を進めるとよいでしょうか?転職市場の現状や企業の期待、転職を実現させるためのポイントなどを組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

30代前半の転職市場の現状

まずは、30代の前半の転職市場の状況を、転職率、転職先の業種・職種、年収の変化の3つの観点から紹介します。

30代前半の転職状況

厚生労働省「雇用動向調査」によると、2023年の一般労働者の転職入職率(※1)は8.5%。性別・年齢別に見ると、30〜34歳においては男性が9.2 % 、女性が12.3% で、20代後半よりは低く、30代後半よりは高い状況です(図1)。

図1 年齢別転職入職率(一般労働者、2023年)

グラフ:厚生労働省「令和5年雇用動向調査」図4-2、図4-3から一般労働者のデータを使用し作成
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/dl/kekka_gaiyo-03.pdf

また、2024年7月~12月の間にリクルートエージェントを利用して転職が決まった登録者の年齢分布を見ると、30~34歳は21.84% と、25~29歳(35.38%)に次ぐ割合でした。30代前半も一定数が転職を実現していることが分かります(※2)。

(※1)出典:「令和5年 雇用動向調査結果(入職と離職の推移)表3 性・就業形態、職歴別入職者数及び入職率」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/dl/kekka_gaiyo-01.pdf

(※2)出典:「リクルートエージェント 転職データライブラリ(転職者の平均年齢)」(株式会社リクルート(現:インディードリクルートパートナーズ))
https://www.r-agent.com/data/market/age/

転職先の業種・職種

次に、どのような業種・職種に転職しているか見てみましょう。『リクルートエージェント』の転職者分析(2013年度~2022年度)(※3)によると、2022 年度にリクルートエージェントを利用して転職が決まった登録者の業種・職種の異同パターンは、30〜34歳においては、「異業種×異職種」が35.7%と最も多く、次いで「異業種×同職種」(33.9%)、「同業種×同職種」(19.2%)、「同業種×異職種」(11.2%)の順でした(図2)。約8割が、業種または職種、あるいはその両方を変えての転職を実現しています。

図2 【年齢別】転職時の業種・職種異同のパターン別割合(2022年度)

(※3)出典:「リクルートエージェント 転職者分析(2013年度〜2022年度)」(株式会社リクルート(現:インディードリクルートパートナーズ))
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20231129_hr_01.pdf

年収の変動状況

次に、転職前と転職後の年収の変化について見ます。厚生労働省「雇用動向調査」によると2023年1年間の転職入職者(パートタイム労働者等も含む)のうち、30〜34歳の賃金変動状況は、前職の賃金に比べて「増加」した割合が44.6%、「減少」した割合が29.1%、「変わらない」が25.6%となっています(※4)。約7割の人が、年収を維持または増加させる形で転職を実現していました。なお、「増加」のうち「1割以上の増加」は30.4%でした。

(※4)出典:「令和5年雇用動向調査」転職入職者の賃金変動状況別割合(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/dl/kekka_gaiyo-03.pdf

企業が30代前半に期待するもの

転職も年収アップも一定数が実現している30代前半。求人内容にもよりますが、この年代に企業が期待するものの傾向としては、以下が挙げられます。

即戦力としての知見・経験

5〜10年程度の社会人経験を積んでいると考えられる年代であることから、自社にはない知見を生かし、即戦力としてできるだけ早期に業績アップに貢献することを期待されています。

管理職または管理職候補としてのスキル

30代は、リーダーや管理職などマネジメント経験を求めるポジションの求人が増えてくる年代でもあります。したがって、企業や求人内容によっては、メンバーの育成・管理を行うピープルマネジメントや、タスクや進捗の管理を行うプロジェクトマネジメントの経験・スキルが求められる場合もあるでしょう。

未経験業種・職種からの転職の場合、向上心や学習意欲も

株式会社リクルート(現:インディードリクルートパートナーズ)が企業の中途採用担当者を対象に行った調査によると、選考時に重視することは同業種からの応募者と異業種からの応募者でおおむね同じ傾向ですが、「前職での成果・実績」「向上心」「学習意欲」「志望理由」などの項目は、異業種からの応募者に対する選択率の方がやや高い結果が出ています(※5)。未経験の業種・職種に適応できるかどうかといった観点から、向上心や学習意欲を見られる場合があることがうかがえます。

(※5)出典:「採用担当の本音調査/社員の就業・転職意向実態調査」(株式会社リクルート(現:インディードリクルートパートナーズ))
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20240424_work_02.pdf

30代前半の転職を実現させるためのポイント

前述した企業からの期待などを踏まえると、30代前半の転職を実現させる上でのポイントや留意点として、次のようなものが挙げられます。

今後のキャリアを描き、転職の目的を明確にする

30代前半は、「これまで培った経験・スキルを活かして転職する」「異業種や異職種にキャリアチェンジする」のどちらの選択肢も幅広く持つことができる年代と考えられます。どちらを選択するのかも含めて、今後、自分はどのような領域でキャリアを築いていきたいのか?ということを、これまでの経験や身に付けたスキルの棚卸しをした上で考えましょう。

そうして今後のキャリアの方向性を整理していくと、自ずと今回の転職の目的やキャリア上の位置づけも見えてくるでしょう。すると、目的に見合った求人を見極め、選択しやすくなるでしょう。

自身の「キャリアアップの軸」を明確にする

働く上で大事にしたいことを整理するとともに、今後どのようにキャリアアップしていきたいのか、その「軸」も整理した上で中長期的なキャリアビジョンを描きましょう。キャリアアップの軸の例としては、「専門スキルやビジネススキルを磨き、人材市場での価値を高める」「仕事の幅や裁量範囲を広げる」「収入やポジションを上げる」などが挙げられます。

軸を考える際には、「今の仕事への不満を解消したい」「興味がある業界で働いてみたい」などの短期的な視点ではなく、3年後、5年後にどのようなポジションでどのような仕事をしていたいかを考え、さらに、10年、20年の長期視点でも目標を描くことがポイントです。これらをもとに、必要とされる経験・スキルが身に付く転職先を探してみましょう。

自身の強みを整理する

応募・選考に向けては、自身のアピールポイントとなる「強み」を整理しましょう。強みは、キャリアの棚卸しを通じてこれまでの経験やスキル、実績を整理することで明らかになります。強みの整理は、自身の経験・スキル・強みを活かせる求人を見つける上でも有効です。

組織風土・文化が自身に合うかどうかに着目する

「仕事の進め方を始めとしたその企業の文化や組織風土になじめそうかどうか」も、企業とのマッチングをはかる上で重要なポイントです。企業も、選考において着目する点の一つで、この点が合うとより入社後も適応しやすくなると考えられるでしょう。 カルチャーマッチを感じる企業に対しては、面接でそれを裏付ける経験や考え方をアピールするのも一つの方法です。

年収アップにこだわりすぎない

転職の際には年収アップを期待する人も多いでしょう。しかし、年収にこだわりすぎると、選択肢を狭めたり、選考がスムーズに進まなかったりする可能性があります。

入社時点で希望年収に達していなくても、入社後に成果を挙げて給与を上げる、転職先で身に付けたスキルを活かして次の転職で年収を上げるなど、中長期的な視点で考えてみましょう。そうすることで、選択肢が広がり、マッチする企業に出会いやすくなるでしょう。

未経験の業種・職種に挑戦する場合

未経験の業種や職種に挑戦する場合、上述したポイントに加え、次の点に留意して転職活動を進めるとよいでしょう。

自身のポータブルスキルを明確にする

未経験の業種・職種を目指す場合、これまでの仕事で身に付けた専門性はもちろんですが、強みとするポータブルスキルを明確にしておくとよいでしょう。ポータブルスキルには、「仕事の進め方」(対課題)、「人との関わり方」(対人)に関するものがあり、「論理的思考力」「コミュニケーション能力」「交渉力」などが一例です。特に、未経験の職種への転職を希望する場合、ポータブルスキルをしっかりとアピールすることが転職実現の鍵の一つとなります。

向上心や学習意欲をアピールする

先述したように、異業種からの応募者に対して、向上心や学習意欲を重視する企業の割合は、同業種からの応募者に対してよりもやや高い傾向にあることから、向上心や学習意欲が伝わるよう面接でコミュニケーションをとることもポイントの一つになるでしょう。

転職エージェントやスカウトサービスを活用するのも一案

転職実現に向けて迷いや不安がある場合、転職エージェントに相談するのも一案です。自身のキャリアや経験、培ってきたスキル、今後のキャリアの意向などを踏まえた助言や、企業の選択肢の提示を受けることができるでしょう。

また、スカウトサービスに経歴や希望条件を登録しておくと、自身のキャリアに興味を持った企業や転職エージェントからスカウトメールが届きます。意外な業種・職種・ポジションからのスカウトが届く可能性もあり、選択肢をより広く・多く持つための一助となるでしょう。

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アドバイザー

粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。