
30代後半で転職を考えたとき、「今から転職するのは難しいのではないか」「転職したくてもスキルに自信がないから無理かもしれない…」「異業種の仕事に興味があるけれど、30代後半で未経験転職は厳しいだろう」などと悩んでいる方もいるかもしれません。実際のところ、30代後半で希望に合う転職を実現することはできるのでしょうか。30代後半の転職市場の傾向や、希望に合う転職を実現するコツ、転職活動で意識しておきたいポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
30代後半で転職するのは難しい?転職市場の傾向
「30代後半で転職することは難しいのではないか」と悩んでいる方のために、まずは転職市場の傾向について解説します。 #H3 30代後半で転職を実現する人は一定数いる 厚生労働省の「雇用動向調査」で公表している「年齢階級別転職入職率」によれば、「35~39歳」の数値は、2000年までは7%前後でしたが、2005年で初めて10%を超え、近年では増減を繰り返しながら9~10%程度で推移していることがわかります。
(※)出典:「雇用動向調査 年次別推移(表番号4-2 性、年齢階級別転職入職率)」(厚生労働省)
30代後半の転職で求められる経験・スキルの傾向
20代〜30代前半の転職では、社会人としての経験年数が比較的短いと考えられることからポテンシャル採用を行うケースも見られます。一方、ある程度の社会人経験を積んでいると考えられる30代後半で転職する場合は、「即戦力」として期待される傾向もあり、社会人経験の年数に応じた経験・スキルが求められることがあります。 応募企業の採用要件に対し、これまでの経験・スキルが合致していれば、転職を実現できる可能性は十分にあると言えるでしょう。また、アピールできる経験・スキルによっては、年収条件やポジションなどの希望を叶えられるかもしれません。
30代後半に求められる経験・スキルは、企業によっても異なりますが、以下にその一例を紹介します。
【30代後半に求める経験・スキルの一例】
・マネジメントの経験・スキル
・即戦力として現場で活躍できるスキル
・業務や業界における専門知識や深い知見
・人材育成における指導・管理の経験・スキル
・取引先、協力会社などの業界・業種における人脈
・新規事業や組織を立ち上げた経験
・技術・知識における高い専門性
企業が求めていることを理解し、30代後半までに積み重ねてきた経験・スキルと、それに伴う実績をアピールすることで、転職実現につなげやすくなるでしょう。
30代後半で希望に合う転職を実現するコツ
30代後半で希望に合う転職を実現するために役立つコツの一例を紹介していきます。
キャリアの棚卸しで経験・スキル・実績を整理する
キャリアの棚卸しを行い、これまでの経験・スキル・実績を振り返って整理し、自身の強みを洗い出しましょう。自身の経験・スキル・強みに合致する求人を見つけるためには、どのような業種・職種・企業で活かせるのか検討することがポイントになります。 また、経験・スキル・強みをまとめて書き出しておくと、履歴書や職務経歴書などの応募書類の作成や、面接でアピールする事柄の抽出に役立てることができます。
転職で実現したいことを明確にする
転職によってどのようなことを実現したいのかを明確にすることも重要です。仕事のやりがい、目指すポジション、将来のキャリア、実現したいワーク・ライフ・バランスや年収条件など、さまざまな角度から希望することを検討してみましょう。 さらに、転職先に望む希望条件を明確にしたら、それらに優先順位をつけることもポイントです。譲れない条件をもとに求人を探すことで、応募企業の幅や転職先の可能性を広げられるでしょう。また、希望条件に優先順位をつけて整理しておけば、内定を承諾するかを検討する際にも役立てられます。
転職市場の相場を理解し、自身の市場価値を把握する
転職実現においては、企業と求職者の需給バランスが重要であり、転職市場の相場と自身の市場価値がマッチしているかどうかがポイントになります。そのため、転職サイトや転職エージェントなどで情報収集を行い、転職市場の相場を理解することも必要と言えるでしょう。 希望条件に合う求人の人材要件や、自身の経験・スキルに合致する求人の年収・ポジションなどの条件面を把握することで、転職市場の相場や自身の市場価値を理解しやすくなるでしょう。
キャリアプランを明確にする
今後のキャリアの方向性を明確にしておくことで、中長期的に働ける転職先を判断しやすくなるでしょう。企業も採用の際に、入社後の活躍貢献性に加え、定着性にも期待し、「中長期的に活躍・貢献できる人材であるか」を見極めるために、面接で入社後のキャリアプランについて質問するケースが見られます。直近で実現したいことだけでなく、5年後、10年後に目指したい姿を考え、「応募企業に入社後、どのようなキャリアを描いていきたいか」を明確に回答できるようにすることがポイントです。
社風や企業文化についてきちんと検討する
希望条件に合致する転職先が見つかった場合でも、「職場の人間関係が合わない」「仕事の進め方が合わない」「企業理念と自身の価値観が合わない」などで、入社後に思わぬ結果に直面するケースも見られます。 また、前述の通り、企業は入社後の活躍貢献性に加え、定着性を求めることもあり、「入社後、職場や業務に馴染めるかどうか」を判断する傾向もあります。希望条件だけでなく、社風や企業文化が合うかどうかをきちんと検討することが重要です。
新しい環境に順応する意識を持つ
「自身の経験・スキルがあれば、希望条件に合う転職を実現できる」と思っている場合でも、職場の人間関係や仕事の進め方などにギャップを感じるケースもあるようです。 30代後半の場合は、社会人経験を一定以上積んできていることが想定されるため、前職や前々職の職場や仕事内容と比較し、「自身には合わない」と感じる可能性もあります。職場環境や風土、企業文化は、企業によって異なるものなので、それを前提とした上で、入社後、新しい環境に順応していく意識を持つことも重要と言えるでしょう。
転職エージェントやスカウトサービスを活用する
転職エージェントでは、転職支援のプロであるキャリアアドバイザーからさまざまなサポートを受けることができます。自身の経験・スキル・希望に合う求人の紹介に加え、客観的なアドバイスを受けられるため、転職実現に役立つでしょう。
転職エージェントによっては、キャリアの棚卸しや応募書類の作成、面接対策などのサポートを受けられるケースもあります。転職市場の相場や、未経験からの転職事例などについて聞くこともできるため、30代後半で転職に向かう不安や疑問を解消できるかもしれません。 また、スカウトサービスでは、企業や転職エージェントからスカウトメールを受けられるため、自身の経験・スキルを求める企業の傾向や相場観の把握にも役立つ上、スカウトを受けた転職エージェントに相談することも可能です。転職エージェントとスカウトサービスを併用することで、希望を叶える転職実現の可能性を高められるかもしれません。
30代後半の転職で意識しておきたいポイント
30代後半で転職を目指す場合に、意識しておきたいポイントを解説します。
現職(前職)への不満のみでなく、転職理由や転職目的を明確にする
現職(前職) への不満のみが転職理由となっている場合は、転職の目的も不明確なため、自身に合わない転職先を選択してしまう可能性があります。不満が転職のきっかけとなった場合でも、「解消したい問題は何か」を考え、どのような転職先なら解決できるのかを考えてみることがポイントです。場合によっては、現職のままでも解消できる方法が見つかるかもしれません。
在職中と退職後の転職活動、どちらを選ぶか検討する
在職中に転職活動を進める場合は、定期収入を得られる上、希望に合う転職先が見つからなかった場合に現職に残る選択ができるというメリットがあります。一方、退職後の転職活動は、業務と並行する必要がないため、応募書類の作成や面接対策などに集中しやすく、面接日程や入社日の調整もしやすいことにメリットがあると言えるでしょう。しかし、裏返せば、相互にデメリットもあるので、どちらにするかしっかり検討することが重要です。
転職活動の計画を立て、ゴールをイメージする
転職活動が想定以上に長引いた場合、モチベーションが下がったり、収入に不安を感じたりするケースが見られます。準備期間やゴールまでの期間をイメージしてスケジュールを立てた上で、計画に沿って行動することも重要です。一般的な転職活動にかかる期間の目安は3カ月程度なので、転職したい時期から逆算して計画を立てることをおすすめします。
スキルに自信がない場合は、資格取得の勉強をする方法もある
「転職したいけれどスキルがない」と悩んでいる場合や、「未経験の業種や職種に転職したいけれど、求人が見つからない」と感じた場合は、資格取得や業務に必要な知識の勉強をするのも一案です。「30代後半の今から学んでも、転職は難しいのではないか」と悩む方もいるかもしれませんが、自らリスキリングができる人材として評価につながる可能性もあります。また、現職に残って成果を上げ、アピールできる材料を作ったり、業務に必要な経験・スキルを積める環境に一度転職してから再度、未経験転職を目指したりする方法もあります。計画的にステップを踏んでいくことで、希望に合う転職を実現できるかもしれません。
30代後半の転職に不安を感じている場合は、転職エージェントやスカウトサービスの活用を
「30代後半で希望を叶える転職は難しいのではないか」「経験・スキルに自信がないため、転職できないのではないか」「未経験からの転職にチャレンジしたいけれど、どうすればいいのかわからない」などの不安を抱えている場合は、転職エージェントに相談するのもおすすめです。転職支援のプロから客観的なアドバイスを受けることで、自身の強みやキャリアの方向性が見えやすくなる可能性があります。また、転職活動の進め方やキャリアの可能性について相談できるケースもあります。
転職エージェントによるさまざまなサポートは、効率的に転職活動を進めることに役立てられるでしょう。これに加えて、スカウトサービスを活用するのも一案です。企業や転職エージェントからスカウトを受けることで「詳しく話を聞いてみたい」と思える仕事に出会えるかもしれません。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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