40代の転職活動のポイントとは?転職が実現した人の特徴も解説

屋外でスマートフォンを操作する人

「早期退職」も含め、キャリアの転換期を迎える方も多い40代。昨今の40代の転職市場の傾向や転職活動のポイント、理想のキャリアを実現できる人とそうでない人の特徴についても、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

40代転職市場の傾向

近年、大手企業を中心に「早期退職制度」を導入する企業があります。対象を「45歳以上」と設定する企業も多く、40代でセカンドキャリアを考える方が増えています。一方、日本では少子高齢化に伴い、労働人口が減少へと向かっています。この流れを受け、企業では40代以上の人材の採用・活用を推進する動きが見られます。
「人材紹介大手3社 転職紹介実績の集計結果」(一般社団法人 日本人材紹介事業協会調べ)(※1)(※2)によると、2008年10月~3月の転職紹介人数が988人だったのに対して、2022年10月~3月の転職紹介人数は7,884人と約8倍にも増加しています。

かつては「ミドルシニアの転職は厳しい」といわれることもあったようですが、この数字を見ると、40代の転職は以前よりもチャンスは広がってきていると言えるでしょう。

(※1)出典:一般社団法人 日本人材紹介事業協会 人材紹介大手3社 転職紹介実績の集計結果2022(令和4)年度下期

(※2)出典:一般社団法人 日本人材紹介事業協会 人材紹介大手3社 転職紹介実績の集計結果2008(平成20)年度下期

40代人材への企業側のニーズ

識者が支援した企業の事例を紹介すると、経験・スキルが豊富な人材を積極的に受け入れているのは、中堅企業や中小ベンチャー企業、スタートアップ企業などが挙げられます。専門スキルを活かして即戦力となり、リーダー・マネジャーとして組織を率いる人材、IPOに向けた準備を担う人材を求めています。特に、比較的経験が浅い若手層が多いベンチャーやスタートアップなどでは、若手の指導・育成、組織の仕組みづくりを任せられる人材に期待を寄せています。「CxO」や、その候補として迎えられるケースも多数あります。

一方、大手企業でも、新規事業開発で異分野に乗り出したり、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「SDGs」などの取り組みを推進したりするにあたり、その分野の専門知識を持つ人材を採用するケースが見られます。

いずれにしてもピンポイントの経験・スキルを求める採用となっています。「ITエンジニア」「建築施工管理」といった人材不足の専門職は年齢を問わず一定数の求人があるものの、全体的には求人数が限られています。経験・スキルが豊富な人材の採用は、責任者やプロフェッショナルとして事業に影響を与えるため、企業側も慎重に選考を重ねる「厳選採用」となるケースが多いと言えます。

40代の求職者側のニーズ

識者が支援した求職者方々の傾向として40代は、家庭を持ち、住宅ローンや子どもの養育費を背負う方も多い年代です。収入を下げられない事情を抱え、「年収維持」を希望する傾向が強く見られます。しかし、年収水準が高い大手企業などから中堅・中小企業やスタートアップに転職する場合、給与条件の折り合いがつかないこともあります。また、「管理職として転職したい」など、役職にこだわる方も少なくありません。

若手と比べて譲れない条件が増えるため、40代のミドルシニア層の転職は、求人を厳選する傾向が強くなると言えます。

40代の人が転職を検討する理由

「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」(株式会社リクルート調べ)(※3)によると、退職を検討する理由には「仕事内容への不満」「人間関係への不満」「賃金への不満」「労働条件や勤務地への不満」がどの年代にも共通して上位4項目を占めています。

40代が転職を検討する理由の5番目以降には、「成長機会がない」「会社の将来性や雇用安定性への不安」が続きます。「会社の将来性や雇用安定性への不安」の項目が他の世代よりもやや高めの傾向となっているのは、経験を重ねたことで、自身の適性や能力、社内での立ち位置、会社を取り巻く状況などへの理解・分析が進み、さまざまな事柄を客観視できるようになったからかもしれません。また、子どもの進学や住宅ローンなどプライベートの状況変化が多く見られるのもこの世代です。「今の会社で働き続けたいという希望が叶わないかもしれない」と転職を検討するケースが見られます。

(※3)出典:株式会社リクルート 就業者の転職や価値観等に関する実態 調査2022

40代の転職、理想のキャリアを実現できる人の特徴

理想のキャリアを実現できる人の特徴には、「エビデンスを用いて貢献度が伝えられる」「転職活動で入り口を狭めない」といったことがあります。それぞれについて解説します。

エビデンスを用いて貢献度が伝えられる

「根拠をもって会社への貢献度をアピールする」ことが重要です。単に「貢献できます」とだけ伝えるのでは説得力に欠けますが、自分は応募企業に対してどのような価値を発揮できて、事業や組織にどのような貢献ができるか、具体的な「エビデンス(実績、専門知識、資格、経験、エピソードなど)」を用いて伝えられれば、強い説得力を持ったアピールにつながります。

転職活動で入り口を狭めない

転職の軸やキャリアの方向性を定めておくことは大切なことですが、40代の転職で理想のキャリアを実現できる人は、最初は選択肢を広げ、転職エージェントや企業との対話を通じて転職先を探していく姿勢をとっています。例えば、求人情報の上では希望年収を満たしていないケースでも、選考を受ける中で評価が上がり、年収が希望通りになることもよくあるため、求人情報の年収だけで判断せずに事業内容や仕事内容に魅力を感じたら応募することで選択肢を増やすことができます。

40代の転職、理想のキャリアを実現できないの特徴

識者が支援した求職者方々の事例の紹介すると、40代の転職で理想のキャリアを実現できない人の特徴には、「前職の役職や企業規模のみをアピールする」「安定志向を前面に出しすぎる」といったことがあります。それぞれについて解説します。

前職の役職や企業規模のみをアピールする

40代の転職では、前職の役職や企業規模をアピールする人が意外と多く見受けられます。しかし、大企業に勤めていた実績も、部長職についていた実績も、それだけを伝えるのでは評価にはつながりません。そのポジションでどのような実績を出して、それを応募先企業でどう活かせるかまで伝えることが大切です。

安定志向を前面に出しすぎる

「長く働きたい」と応募先企業に対してアピールすることは、「腰を据えて貢献してくれる」という良い印象につながりますが、そのためには「なぜ応募先企業で長く働きたいのか?」を具体的に伝える必要があります。転職理由を問われ、「前職では自身のキャリアに将来性が見えない」「定年まで雇用が確保される会社で働きたい」などと伝えてしまうと、「雇用の不安を解消したいだけなのでは?」と疑問を持たれる可能性も少なくありません。「応募先企業だからこそ長く働きたいのである」ということが伝わるように、具体的なエピソードを交えて回答するようにしましょう。

40代の転職が有利になる経験・スキル

企業に重宝される経験・スキルには、「マネジメント力」「企画力」「提案力」「専門性」などがあります。「人材開発実態調査2017」(※4)によると、課長クラスでは「部下を動機づける力」「部下を指導・育成する力」が重視され、部長クラスでは「内部環境を踏まえ、組織のビジョンを構成する力」「戦略を立案する力」が上位になります。1000名以上の大手企業では、「環境変化を踏まえて新しい事業や仕組みを企画・推進する力」「組織風土を変革する力」も重視されています。

(※4)出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 人材開発実態調査2017

40代の転職活動で知っておきたいポイントと注意点

40代での転職で理想のキャリアを実現させるために、意識しておきたいポイントをお伝えします。

自身の経験・スキルを整理し、転職市場価値を掴む

大手企業で20年以上経験を積んできた方が転職市場に出てみると、自身が思っていたほど評価されず、転職活動で苦戦した…というケースは少なくありません。そこで、まずは自身の経験・スキルの「転職市場価値」を理解することが大切です。

40代は経験が豊富だからこそ、キャリアの整理が不十分となりがちです。これまでの経験を網羅的に応募書類に盛り込んだ結果、相手企業に「強み」が伝わらず、書類選考を通過できないケースもあります。転職市場でのニーズをつかんだ上で、どの経験・強みを武器に転職活動に臨むのかを決めましょう。

なお、一昔前は、年齢が高くなるほど「同業界・同職種」への転職を目指すのが一般的でしたが、近年は異業界や異職種への転職事例が増えています。先ほども触れたように、異分野に参入して新規事業を立ち上げる企業がその分野のベテランを採用するなど、自身が想像していなかった業種の企業で経験・スキルが活かせるケースもあります。視野を広げて、自身の経験・スキルが活かせる場所を探してみましょう。

「条件」にこだわりすぎない

業界・企業規模・年収などの諸条件・勤務地など、条件にこだわりすぎると、選択肢が限られてしまいます。希望条件を満たす企業がなかなか見つからず、転職活動が長引いてしまう事態に陥りかねません。
「できれば叶えたい」という希望条件はいったん外し、幅広い求人に目を向けてみることで、チャンスが増えるでしょう。

謙虚な姿勢を心がける

高度な経験や優れた実績を持つ方ほど、謙虚な姿勢を心がけることが必要です。応募企業で自身の経験・スキルが活かせることを自信満々にアピールした結果、採用担当者が「この人が入ることで組織バランスが崩れるかもしれない」「自身のやり方に固執して、既存社員と衝突するかもしれない」といった懸念を抱き、採用を見送るケースもあります。                

応募企業のやり方を受け入れた上で、自身の経験を活かしていこうとする姿勢があれば、採用担当者に安心感を持ってもらえるでしょう。企業側は「成果を挙げてくれるかどうか」と同時に、「この人と一緒に働きたいかどうか」を見ているのです。

また、入社当初から高い給与や役職を求めた場合、「そのとおりの条件で受け入れたら、既存社員から反発が生じそう」と不安視され、採用を見送られる可能性もあります。応募企業の事情にも配慮して条件のすり合わせをする、提示された条件を受け入れ入社して成果を出して希望を叶える、などの方法を検討する必要があります。

「できること」だけでなく「やりたいこと」を伝える

「こんな仕事をしてきました」「こんなことができます」だけに終始する人に対して、物足りなさを感じる企業もあります。マーケットは常に変化しているため、すでに実績を積んできた人であっても「変化」にチャレンジする姿勢が求められます。

「入社後、何がやりたいのか」「何を目指すのか」といった目標や将来ビジョンを語れるようにしておくことで、前向きな意欲が伝わるでしょう。

マネジメント経験を活かせる企業を探す

マネジメント力を持った人材は、企業から注目される傾向にあります。
自身が経験してきたマネジメントを振り返り、人数規模・対象層・手法などを整理した上で、マネジメント経験が活かせる企業を探してみてください。業界が異なっても、対象層や手法が共通していれば、マネジャーのポジションで受け入れられることもあります。

スタートアップ企業などでは、組織を一から立ち上げたり、混沌としている組織を整えたりするマネジメントを求めるケースも多くあります。「新規部署」や「子会社」など新たな組織の立ち上げの際のマネジメント経験を持つ方は、ぜひそのプロセスや工夫を整理してアピールしてはいかがでしょうか。

40代の転職・理想のキャリアを実現できた事例

40代の転職で理想のキャリアを実現できた事例をご紹介します。

一時的な年収ダウンを受け入れ、大手からベンチャー企業へ

大手企業系列のSIerで課長職・プロジェクトマネジャーを務めていたAさん(40代前半)。「伸びている技術分野で、自社サービスを手がけたい」と考えて転職活動を行い、AI(人工知能)ベンチャー企業に開発部長として迎えられました。その企業は急速に組織が拡大していたことから、大規模組織のマネジメント経験を持つ人材として、Aさんに期待を寄せたのです。

年収は100万円ほどダウンしましたが、「会社の成長に貢献することで、将来的に年収を上げられる」と考え、入社を決意しました。

役職定年を目前に、新しいチャレンジに踏み出す

金融機関のグループ会社で情報システム部門の管理職を務めていたBさん(40代半ば)は、数年後の役職定年を控え、キャリアの先行きへの限界を感じていました。

会社に残って裁量権もやりがいも持てない仕事を続けるよりも、経験を活かしてチャレンジがしたいと考え、早期退職を決意。ITベンチャーの情報システム部門に、執行役員候補の部長職として採用されました。前職の年収も維持し、この先も長く働いていけることに安心したようです。

40代の転職・理想のキャリアを実現できなかった事例

40代の転職で理想のキャリアを実現できなかった例をご紹介します。

カルチャーギャップを受け入れられず、転職先企業を早期退職

Cさん(40代前半)は、大手コンサルティングファームから100人規模のITベンチャーへ転職されました。年収は数百万円ダウンとなりましたが、企業理念に共感したこと、成長性に魅力を感じたことから転職を決めたのです。

しかし、実際に入社してみると、大きなカルチャーギャップを感じることになります。前職では、論理的思考で課題を分析し、緻密な戦略を練った上で実践に移していました。ところが転職先のベンチャー企業では、勢いがある若手社員たちが「考えるより先に行動を起こす」というスタンスで活動していたのです。

仕事の進め方にも風土にもなじめないと感じたCさんは、1年も経たずに退職しました。

業界・職種は同じでも、「フェーズ」が異なり、経験が活かせなかった

Dさん(40代前半)は、IT企業でカスタマーサクセスを担当していました。しかし業績不振に陥り、事業縮小方向へ向かっていたため、転職を決意。前職と近いサービスを手がけるIT企業へ、前職と同じカスタマーサクセスとして入社しました。

業界・職種経験をそのまま活かせると考えていたDさんですが、入社直後からギャップに気付きます。前職では、仕組みが出来上がっている中でルーティン業務を回していたのですが、転職先企業はこれからカスタマーサクセス部門を整備していくフェーズにあったのです。

「一から仕組みを作ってほしい」と言われて取り組んでみたものの、成果を出せず。居づらさを感じ、短期間で退職しました。

40代の転職は視野を広げて行うことが大切

以前は選択肢が限られていたと思われた40代の転職ですが、現在はチャンスが広がりつつあります。専門的な経験・スキルを活かし、選択肢を広げて転職活動を行うようにしましょう。

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粟野友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。