転職エージェントの利用を開始する際に、担当者と「面談」を行うことが一般的です。対面のほか、電話やオンラインで行うケースも多くなっています。面談に臨むにあたっての事前準備、面談の流れ、面談を活用するポイント、抱かれがちな疑問などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職エージェントの面談とは?
転職エージェントとの面談では、職務経歴やキャリアプラン、転職の目的、転職先企業に求める条件などを共有します。これによって、転職やキャリアに関する提案やアドバイス、求人の紹介がより適切に行われます。面談にかける時間は1~2時間程度が一般的です。
転職エージェントの面談前に準備しておきたいもの
転職エージェントの面談に臨むにあたり、事前に準備しておくと良いものは以下のとおりです。
履歴書・職務経歴書などの応募書類
転職活動を開始する際は、これまでの職務経歴(所属企業・所属部署・担当業務)をすべて書き出し、成果や実績、身につけたスキルなどを整理しておきましょう。文書にまとめ、履歴書・職務経歴書を作成します。
可能な限り履歴書・職務経歴書は、面談の前にあらかじめ転職エージェントへ送っておくのが望ましいでしょう。経歴を一から説明する時間を省き、強みや今後のキャリアビジョンの深掘り、求人案件の検討のやりとりに時間を使うことができます。すでに作成している場合は、事前に送付した方が良いか転職エージェントの担当者に聞いてみましょう。
筆記用具・メモ帳
筆記用具・メモ帳を用意しておくと、面談中に転職エージェントから提供された情報やアドバイスをさっと書き留めておくことができます。
A4サイズが入る鞄
転職エージェントのオフィスへ面談に赴く場合、求人や資料を渡されて持ち帰ることがあるため、A4サイズが入る鞄を持参すると便利です。
転職エージェントの面談当日に確認したいこと
面談前に下記の内容を整理しておくと、対話がスムーズに進み、時間を有効活用できるでしょう。
転職を検討するに至った経緯
転職を検討するに至った経緯が分かると、転職エージェントの担当者はより的確にアドバイスできるようになります。面談までに、退職を考えたきっかけやこれまでの経緯についてまとめておくとスムーズです。まだ転職するか迷っている場合も、迷っている理由を伝えて担当者と対話することで、思考を整理し方向性を明らかにすることができるでしょう。
仕事に対する思い、働き方の志向など
職務経歴や得意とする領域・分野のほか、「仕事において大切にしたいこと」「こだわりたいこと」「理想とする働き方」といった志向についても考えを整理しておくと良いでしょう。自身の志向や価値観を転職エージェントに理解してもらうことにより、単なるスキルマッチではなく、カルチャーがマッチする企業の紹介を受けられる可能性が高まります。
希望条件の整理
転職にあたっての希望条件を明確にしておきます。その場で思いつくまま話すと、条件が膨れ上がってしまい、焦点がぼやけてしまうこともあります。今回の転職で何を実現したいのか、「軸」を定めたうえで希望条件を挙げ、優先順位をつけておくと良いでしょう。条件項目については、下記を参考にしてください。
- 業界
- 職種・仕事内容
- 役職・ポジション
- 企業属性(大手/ベンチャーなど)
- 社風
- 年収
- 勤務地
- 勤務時間/働き方
- 入社希望時期
そのほか、転職エージェントに聞きたいこと
面談で聞き忘れが生じないように、面談前に「興味がある業界・職種の転職市場動向」「年収相場」「自身と同様のキャリアの求職者の転職事例」「転職活動の進め方」など、転職エージェントに聞いておきたいことをピックアップしておきましょう。
面談の一般的な流れ
転職エージェントとの面談は、対面・オンライン・電話のいずれのスタイルであっても、一般的に次の流れで進みます。
経歴のヒアリング
お互いの自己紹介などでアイスブレイクを行った後、職務経歴の確認から始めるのが一般的です。「これまでのキャリア」「成果・実績」「得意とする分野・スキル」などについてのヒアリングが行われます。
転職の目的や条件を確認
今後のキャリアビジョンを踏まえ、今回の転職の目的、転職先に求める条件、転職時期の希望などについての確認が行われます。
すでに転職活動を進めている場合、その手段や進捗状況も伝えておきましょう。他の転職エージェントを利用している場合も、選考が進んでいる求人の状況も共有しておけば、今後のスケジュールの調整をしてもらえます。
転職の方向性の提案
転職の目的・条件を踏まえ、転職エージェントから転職の方向性や選択肢が提案されるのですり合わせを行います。場合によっては、想定外の業界・企業の選択肢を提案されることもあれば、「今は転職するよりも現職にとどまる方が良いのではないか」といったアドバイスを受けることもあります。
求人の紹介
面談を経て、転職活動を行う意思が固まったら、その場で求人の紹介を受けるケースもあります。面談のタイミングで希望に合う求人がない、あるいは紹介を受けた求人に興味を持てない場合は、後日改めて求人の紹介を受けることもできます。
紹介された求人を断る場合は、「どの部分が希望にそぐわないのか」「どの点に懸念を抱いたのか」などを伝えておくと良いでしょう。次回紹介される求人のマッチング精度が高まる可能性があります。
今後の転職活動の進め方についての案内
今後の転職活動の進め方、大まかなスケジュールなどの案内があります。このとき、連絡を取りやすい方法や時間帯などを伝えておくと、やりとりがスムーズになります。「この時期は多忙なので面接を入れられない」といった状況も共有しておくと良いでしょう。
転職エージェントの面談を上手に活用するポイント
面談の時間を有意義に使うために、次のポイントを意識してください。
聞きたいことや不安を共有する
転職活動に臨む際には、さまざまな疑問や不安にかられるものです。どのようなことに疑問や不安を感じているかを伝えておくと、適切なフォローをしてもらいやすくなるでしょう。
転職エージェントには隠さず正直に話す
転職を検討するに至った事情や転職先の条件など、話しづらいこともあるかもしれません。しかし、転職エージェントには隠さず正直に話すことをおすすめします。複雑な事情などにも留意しながらサポートしてくれることが期待できます。
希望のスタイルを伝える
転職エージェントにどのようなサポートを期待するかを伝えておきましょう。例えば「希望条件にぴったりマッチする求人のみを紹介してほしい」「多様な選択肢を検討したいので、希望に合致する可能性がある求人を幅広く提案してほしい」といったように、求めるサポートのスタイルを共有しておくとスムーズです。
転職エージェントとの面談に関するよくあるQ&A
転職エージェントとの面談に関して、抱かれることのある疑問にお答えします。
転職エージェントは転職が成立した際、企業側から成功報酬を受け取るビジネスモデルとなっています。そのため、求職者が転職エージェントのサービスを受ける場合は、面談から求人紹介、職務経歴書添削や面接対策といった転職活動のサポートまで、すべて無料で利用できることが一般的です。
転職エージェントによって異なりますが、土日祝日や平日夜間も面談が可能なケースもあります。登録時に相談してみてください。
対面のコミュニケーションでは、お互いの表情やしぐさなどから相手の気持ちを察することができます。一方、オンラインでは「画面越し」、電話では「お互いの姿が見えず、声のみ」のコミュニケーションとなるので、意図や感情が伝わりづらいこともあります。対面も同様ですが、電話・オンライン面談では伝えたい思いや希望をしっかりと整理し、きちんと伝わるように言語化しておくことが大切です。
基本的にはありません。他の転職エージェントともやりとりをしている、知人に誘われている企業も検討しているといったことは「言いづらい」と思う方もいるかもしれませんが、隠さず伝えた方が転職エージェントから適切な提案を受けやすくなります。
大手・総合型のエージェントは全国に拠点展開をしているため、遠隔地の求人情報も保有していることがほとんどです。UターンやIターンを検討する場合も、さまざまな地域の情報が得られるでしょう。面接をオンラインで受けられる、あるいは最終面接では現地に赴く交通費を支給してもらうなど、転職エージェントを通じて企業に確認や相談してもらうことも可能です。
転職の意思が固まっていない状態でも、転職エージェントとの面談は可能です。面談の結果、転職エージェントから「今は転職しない方が良い」とアドバイスすることもあります。相談することと転職することは必ずしも同じではありません。キャリアについて迷っていることを相談してみましょう。
転職エージェントとの面談でスーツを着用する必要はありません。対面・オンラインともに、カジュアルな服装でもかまいません。
転職活動をすることを決意した場合、希望にマッチする求人の紹介を受け、応募するかどうかを検討します。応募先が決まったら、その企業が求める人材像などについて情報提供を受け、面接対策をサポートしてもらいましょう。面接日程の調整など、応募企業とのやりとりも転職エージェントに任せることができます。
スカウトサービスの利用も有効
「スカウトサービス」とは、求人を掲載している企業や転職エージェントから直接スカウトが届くサービスを指します。自身で求人を探す時間を省くことができるほか、企業や転職エージェントは経験・スキルをもとにスカウトを送っているため、意外な求人やポジションに出会えることもあります。 転職エージェントからスカウトを受けた場合は、選考に進める前に担当者との面談を申し込むこともサービスによっては可能です。ぜひスカウトサービスの活用もご検討ください。
粟野友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
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