キャリアコンサルタントの資格とは?活躍できるフィールド、取得の難易度を解説

キャリアとは、仕事における実績や経験の積み重ねを意味します。これまでは、終身雇用制度により、主に企業が働く人のキャリア形成を主導してきました。
しかし終身雇用制度が崩れ多様な働き方が可能となった現在では、個人のキャリア形成が一人ひとりの手に委ねられるようになりました。
このような社会環境の変化の中で、国家資格キャリアコンサルタントは、個人のキャリアがより良いものになる助言をするために2016年に創設された比較的新しい国家資格です。
今回は国家資格キャリアコンサルタントがどのような資格なのかをご紹介し、活躍できるフィールドや資格試験の難易度についてご紹介していきます。

国家資格キャリアコンサルタントとは

国家資格キャリアコンサルタント(以下、キャリアコンサルタント)は、人々のキャリア形成を支援するための資格です。まずはキャリアコンサルタントの概要をご紹介していきます。

キャリアコンサルタントは職業選択や能力開発を支援する専門職資格

キャリアコンサルタントは、国の職業能力開発促進法によって創設された国家資格です。職業能力開発促進法は、時代が変化する兆しのあった1985年に「産業構造の変化、技術の進歩その他の経済的環境の変化による業務の内容の変化に対する労働者の適応性を増大させ、及び転職に当たっての円滑な再就職に資するよう、労働者の職業生活設計に配慮しつつ、その職業生活の全期間を通じて段階的かつ体系的に行われることを基本理念とする」ということを目的に職業訓練法から改定された法律です。

厚生労働省が実施した転職者実態調査によると、従業員数1,000名以上の事業所のうち86.8%に転職者がおり、300人〜999人の事業所のうち77.5%に転職経験者が在籍していることから、転職によって新たなキャリアを形成する事は一般的になっていると言えます。

このように転職してキャリアアップすることが一般的になったことから、円滑な職業選択を支援する専門家が求められるようになり、キャリアコンサルタントが創設されました。

職業能力開発促進法ではキャリアコンサルタントについて、「労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力の開発および向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うための専門家」と定義されています。

また、転職だけでなく異動や転勤といった従来型の社内キャリアの課題だけでなく、産休・育休の取得、時短勤務や親の介護、定年後の再雇用など、働き方が多様化した分、キャリアに関する課題も増えてきました。
キャリアコンサルタントはこれらの課題に対する相談に乗り、個人と組織に対して適切なアドバイスをすることが求められます。

個人のキャリア形成支援だけでなく、組織のキャリア開発にも携わる

キャリアコンサルタントは、個人のキャリア形成を支援するだけでなく、組織のキャリア開発にも関わります。ダイバーシティの推進により多様な人材が活躍する企業が増える一方で、そういった人たちが活躍できる組織に変化するためのアドバイスを必要とする声が増えてきました。

特にハイクラス転職の対象となる優良企業では、ダイバーシティや働き方改革の推進により、性別・年齢・人種などのバックグラウンドに拘らず個人の能力を最大限発揮できる環境構築が模索されています。

キャリアコンサルタントは、キャリア形成の専門家としてこうした企業を対象とした組織づくりや制度設計のアドバイスを行うこともあります。

また、価値観の変化によりハラスメントが法令化され、コンプライアンスの観点から働きやすい職場づくりを推進する企業も増えています。人材が多様化したことで従業員からのニーズも増えてきたことから、働きやすい職場づくりの支援もキャリアコンサルタントが担うようになりました。

このように、個人だけでなく組織のキャリア開発にも携わるのがキャリアコンサルタントの役割です。

働き方の多様化にともない、ニーズが増えている資格

日本の労働力人口は2012年から右肩上がりで増加しています。これは、主に女性と高齢者の労働者の割合が増加したことが理由です。
女性の労働人口は2009年の2,782万人から2019年には3,058万人と1割増加。高齢者についても、労働人口に対する高齢者の割合は2009年の8.7%から2016年には11.8%と増加しています。このように様々な人が働くようになった結果、働き方も多様化するようになりました。

キャリアコンサルタントは多様な人材の能力開発を支援する役割も期待されていることから、ニーズが増えている資格です。最近では部下の働き方に対するニーズも多様化していることから、人事などキャリア開発に関わる部門の人だけでなく、事業部でマネジメントに従事する管理職もキャリアコンサルタント資格を取得することがあります。

ハイクラス転職の対象となる優良企業では、管理職がキャリアコンサルタントを保有している場合もあります。キャリアコンサルタントがいない企業であれば中途採用によって資格保有者を採用することも期待できるため、ハイクラス転職によってマネジメント業務に従事したいと考える場合にはプラスになる資格です。

国家資格キャリアコンサルタントが活用できるフィールド

キャリアコンサルタントはどのようなフィールドで活躍しているのでしょうか。この章では資格を活用できるフィールドについてご紹介していきます。

マネジメント層として、社員のキャリア形成を支援

第一のフィールドは企業での人材マネジメントです。
管理職に就任すると部下がつき、組織をマネジメントすることが求められます。市場環境だけでなく部下のニーズも多様化し、2020年6月に大手企業を対象に施行された労働政策推進法(いわゆるパワハラ防止法)によってパワーハラスメント(パワハラ)が規制されるなどマネジメント層の役割も変化しています。

このような環境下でキャリアコンサルタントを保有していると、業務上の指導だけでなく、一人ひとりの事情に応じた適切なマネジメントを行うことが可能です。マネジメントだけでなく、社員のキャリア形成や組織開発に貢献できる人材は限られることから、資格保有者が活躍できるフィールドは広大であるといえるでしょう。

人事として、社員のキャリア形成や能力開発を支援

社員の採用や人材配置、能力開発などを業務とする人事もキャリアコンサルタント資格を活用しやすい職種の1つです。

後ほどご紹介するキャリアコンサルタントの受験資格には「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する方」という項目がありますが、人事で3年以上の業務を経験していると一定以上の経験と能力があると認められ、未経験者に課される講習の受講が免除されます。

資格を取得すると、人事に寄せられるキャリアに関する様々な悩みに対して専門家としてアドバイスができるようになるため、ハイクラス転職の対象となる優良企業などの人事担当者がキャリアアップを狙うことができます。

学校や就職支援会社・雇用調整機関で就職や転職などのキャリア開発を支援

就職や転職に関わる機会の多い学校の就職担当者や就職支援会社の社員、ハローワークなどの雇用調整機関の職員も専門性を高めるためにキャリアコンサルタント資格を取得します。

これらの職種に従事する人は職業選択中の人を対象にアドバイスを行うため、キャリアコンサルタントを取得しておくと、このような専門性を求められる職場へ活躍のフィールドを広げることにつながるでしょう。

キャリアコンサルタントの難易度や費用は?

この章では、試験の難易度や、費用、独学での取得可能性など、試験の概要についてご紹介していきます。

キャリアコンサルタント試験は学科試験と実技試験で構成

キャリアコンサルタント試験は、厚生労働大臣の指定を受けた試験機関によって実施されます。試験機関は「日本キャリア開発協会(JCDA)」と「キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)」の2つで、どちらの試験機関で受験するかは自由に選べます。

受験資格は大きく以下の4点で、いずれかを満たせば受験資格を得られます。

  • 厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了する
  • 労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験する
  • 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格する
  • 平成28年3月までに実施されていたキャリア・コンサルタント能力評価試験の受験資格である養成講座を修了する(平成28年4月から5年間有効)

これまでキャリアに関する資格を取得していない場合、基本的には「1」の講習の受講か「2」の人事・採用業務に3年以上従事することが受験資格となります。

講座は試験機関である日本キャリア開発協会(JCDA)やキャリアコンサルティング協議会(CC協議会)だけでなく、各種学校でも実施しています。講座の費用は実施団体により異なりますが、30万円程度の費用がかかるため、独学での資格取得を目指す人もいます。

試験は択一式(選択式)問題の「学科試験」と、ロールプレイと論述試験の2つからなる「実技試験」によって構成されています。どちらかに合格し、もう片方が不合格の場合は、次回試験で不合格となった試験に合格することで資格が取得できます。

まず、学科試験は試験時間100分で問題数は50問です。4択問題の中から正解を1つ選択してマークシートに記入していきます。100点満点で1問あたり2点の配点です。合格基準が70点以上と定められているため、この点数を下回ると学科試験は不合格となります。
問題は「キャリアコンサルタントの意義」や「キャリアカウンセリング理論」「働き方に関する法令」などが出題されます。

一方、ロールプレイは実際のキャリアコンサルティング場面を想定して、面談開始から最初の15分間という設定で実施されます。受験者がキャリアコンサルタント役として相談者との面談を行います。配点は100点満点で、次の論述試験(50点満点)と合わせて90点以上かつ審査項目を全て40%以上の得点を取る必要があります。
ロールプレイで出題されるケース(状況)は「育休明けの配置について」「職場の人間関係について」「転職か起業かを悩んでいる」「定年後の再雇用について」など様々です。
また、終了後に5分間の口頭試問が行われて試験官からの質問への回答も求められます。

論述試験は50分間で問題は2問です。逐語記録という面談の内容が記載された文章を読み、設問に回答します。配点は50点満点で合格基準は40点です。
問題はロールプレイと同じように、様々な職業上の悩み相談に対してのカウンセラーの応答が適切であったかどうかを判断し、その理由を記載するのが主な内容です。

受験費用は学科試験が8,900円(税込)で実技試験が29,900円(税込)です。日本キャリア開発協会(JCDA)とキャリアコンサルティング協議会(CC協議会)のどちらで受験しても同じ費用です。

試験実施団体によって合格率が異なる

キャリアコンサルタント試験は、日本キャリア開発協会(JCDA)とキャリアコンサルティング協議会(CC協議会)のどちらを受験するかによって合格率が異なる点が特徴的です。
下記は、それぞれの団体別の直近3回の合格率です。

第14回キャリアコンサルタント試験
<JCDA>  学科:69.1% 実技:65.3%
<CC協議会>学科:65.1% 実技:66.6%

第13回キャリアコンサルタント試験
<JCDA>  学科:70.4% 実技:65.4%
<CC協議会>学科:71.7% 実技:58.0%

第12回キャリアコンサルタント試験
<JCDA>  学科:75.5% 実技:68.7%
<CC協議会>学科:75.5% 実技:62.4%

全体的に日本キャリア開発協会(JCDA)の方がキャリアコンサルティング協議会(CC協議会)よりも合格率が高い傾向にあります。特に実技試験の合格率に乖離があるため、受験機関を選択する場合には注意が必要です。

両者の違いはロールプレイにあり、日本キャリア開発協会(JCDA)は評価項目を「主訴・問題の把握」「具体的展開」「傾聴」としているのに対し、キャリアコンサルティング協議会は「態度」「展開」「自己評価」を評価項目としています。

合格率は年々下がっており、難易度は上がっています。近年、働き方改革に関する法律改正が頻繁に行われていることから、学科試験の問題が難しくなっていることと、実技試験においてもロールプレイに設定されるケースが増えていることが要因です。

どちらの試験機関で受験すると良いかは、合格率やコンサルティングのスタンスなど様々な観点があります。日本キャリア開発協会(JCDA)は、合格率は高いものの、人事業務経験者の合格率はキャリアコンサルティング協議会(CC協議会)の方が高いなどの特徴があるため、自身のキャリアを考えて最も良いと思われる試験機関を選択すると良いでしょう。

キャリアコンサルタントは独学でも取得が可能か

結論からいうと、キャリアコンサルタント試験は独学でも取得可能です。
キャリアコンサルタント試験は学科試験と実技試験で構成されますが、学科試験と論述問題は公開されている過去問題を繰り返し回答して出題傾向を把握、問題集を解くなどの個人学習で合格基準である70点まで点数を上げることができます。

一方、ロールプレイは実際のキャリアコンサルティング場面を想定して行うため、技能を高めるためには相談役となる相手が必要です。
独学で資格取得を目指す場合には、キャリアコンサルタント合格者が技能維持のために行なっている勉強会に参加することでロールプレイの経験を積むことができます。
また、キャリアコンサルタントの講習を行っている会社が有料で単発開催の試験対策講座やロールプレイ対策講座を提供しているので、必要であればこれらの講座を受講すると良いでしょう。

まとめ
国家資格キャリアコンサルタントは、職業選択のプロとして様々な企業で活用できる資格です。特にハイクラス転職に成功すると多様な人材やニーズがある企業で働く可能性が高くなります。そのためキャリアコンサルタント資格を取得することで、キャリアに関するマネジメントのプロとして活躍することが期待されます。

キャリアコンサルタントはハイクラス転職の成功率を上げるだけでなく、自身のキャリアアップにも繋がる国家資格です。

特に組織・人材開発に関心がある場合や、キャリア開発に熱心な企業へのハイクラス転職を目指している場合には取得しておくのも良いでしょう。

※記載中の法令他情報は2020年5月現在の情報です。

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