【2022年】環境・エネルギー・サステナビリティの転職市場は今後どうなる?

環境・エネルギー(グリーン)/サステナビリティ業界のイメージ画像

環境・エネルギー・サステナビリティの2022年の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2022年の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。

環境・エネルギー・サステナビリティの2022年転職市場の展望を一言でいうと

「水素」商業化フェーズに近づき、求人が増加。大手はカルチャー変革も課題に。
求職者は、本当にやりたいことに取り組めるスタートアップ企業に注目。

1.【環境・エネルギー・サステナビリティ】業界・企業側の動き

政府は、2050年にカーボンニュートラル社会の実現を目指し「グリーン成長戦略」を具体化。エネルギー・産業の構造転換やイノベーション創出の加速を宣言しました。グリーン成長戦略では14分野が挙げられ、うちエネルギー関連は4分野。「次世代再生可能エネルギー」「水素・燃料アンモニア」「次世代熱エネルギー」「原子力」です。エネルギー関連企業やメーカーでは、これらの取り組みを背景とした人材採用が活発化しています。洋上風力発電をはじめとする再生可能エネルギーのプラント全般、省エネ、蓄電池、電動化、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)といった領域の技術者のニーズが引き続き高くなっています。

しかし、カーボンニュートラルの実現には、再生エネルギーだけでは不足と考えられています。次に注目を集めるのが「水素」。実証研究が完了し、商業化のフェーズに移りつつあります。そこで、エネルギー会社、プラントエンジニアリング会社、化学メーカーなどが、水素の開発、量産に向けた人材投資に乗り出しています。求人が出てきている職種は、事業開発・営業・契約事務など。技術系では、輸送しやすい形状を実現するプロセスエンジニアなどが求められています。水素の経験者は複数企業から内定を得ている状況。とはいえ経験者の数は少ないため、水素未経験でも、LNGガス・石油などのプロセスエンジニア経験を持つ方が採用に至っています。

国内ではエネルギーマネジメント案件も増加しています。エネルギーマネジメントに欠かせないのが、ITによる制御。この領域に強みを持つスタートアップ企業からも求人が出てきています。すでにサービスを軌道に乗せたスタートアップでは、さらなる拡大や新規事業立ち上げに向け、事業責任者の採用を強化しています。

このほか、環境安全マネジメント、品質マネジメント、労働衛生マネジメント、EHSの求人も増加傾向。今後は、カーボンプライシング、二国間クレジット制度(JCM)、カーボンクレジット、炭素税といったキーワードでも採用の動きが出てきそうです。

また、大手企業の中には人事制度の見直しやカルチャー変革に乗り出す動きが見られます。ダイバーシティを推進するため多様な人材を受け入れようにも、従来の昇給制度や賃金体系などが障壁となる場合もあります。そこで、新たな雇用形態の導入や、形骸化していた人事制度の活用への動きが出てきています。

採用後の定着においても、カルチャーの変革は重要な課題です。新規事業などを担う彼らは、人脈を駆使して社外との交渉を成功させても、社内の協力・承諾を得られない状況に行き詰まりを感じるケースもあるようです。ダイバーシティ採用のみならず、「インクルージョン(=組織に受け入れられ、認められていると実感できる状態)」までを実現しなければ、人材の定着は望めません。同様の課題を抱える企業では、自社のみでの改革は困難と判断し、外部から風土改革担当者を迎え、裁量権を付与した上で推進を任せています。こういった動きは今後の人材戦略の鍵になるでしょう。

2.【環境・エネルギー・サステナビリティ】求職者側の動き

コロナ禍以降、リモートワークのメリットを実感した方が多く、転職先でもリモートワークを希望する方が増えました。「配属先の部署のリモートワーク比率を教えてください」―応募先候補企業についてそんな質問が投げかけられるようになっています。

年収よりもやりがいや将来性を重視して転職先を選ぶ傾向も強くなっています。年代を問わず「スタートアップ」「新規事業」への興味が高まってきました。ESG・SDGsへの取り組みにおいて特色を持つ企業が増える中、求職者は自身が理想とする世界観の実現を目指すスタートアップに惹きつけられています。中には、年収で400万円の差があっても他社のオファーを断り、やりたいテーマにチャレンジできるスタートアップを選んだ方もいます。また、エネルギー企業から、カーボンニュートラルに取り組むメーカーや流通企業などへの転職志向を持つ人も増えています。

古田 将章

2014年にリクルートキャリア(現リクルート)へ新卒入社。東海エリアでスタートアップから大手企業の採用支援に従事後、関西エリアで大手製造業、電力・ガス会社のハイキャリア領域の採用/転職支援に従事し、2020年より首都圏エリアで電力・ガス・新エネルギー業界のハイキャリア領域の採用/転職支援に従事。

羽田野 直美

製造業のエンジニアを中心としたキャリアアドバイザーを経験後、2010年からは「環境・エネルギー・素材業界」を中心に、リーダーからディレクタークラス、また高度専門職のキャリアコンサルティングに従事。