「地元に戻って働きたい」「魅力的なポジションを見つけたが遠くて通勤ができない」などの理由から、引っ越しを伴う転職をする方も少なくありません。特に最近では、テレワークの増加による働き方の変化により、都市部を離れるケースも増えています。では、転職に伴って引っ越しが発生する場合、どのような点に注意して転職活動を進めればいいのでしょうか。引っ越しを伴う転職の注意点やポイントについて組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職先の内定が決まってから引っ越しをする方が良い?
転職に伴って引っ越しをする場合、可能な限り「転職先に内定後」にすることがおすすめです。まずはその理由について、解説します。
内定前に引っ越しても新居に近い企業で働けるとは限らない
内定先が決まっていないまま引っ越しを進めた場合、住居と離れた企業に転職する可能性があります。内定が出てから、勤務地や雇用条件に合わせて探したほうが、より最適な住居を選ぶことができます。
また、住宅手当や社宅など、住まいに関する制度を考慮して引っ越し先を決められるのも大きなメリット。転職先が引っ越し前の住所からでも通勤できる距離であれば、入社してしばらくは長距離通勤してみて、「周囲の状況を十分に理解したうえで引っ越し先を決める」といった選択をすることも可能です。
勤務先が決まっていないと入居審査に通らない可能性がある
退職後に転職活動を行う場合は、先々の収入が確定していないため、転職後の収入と家賃が見合っていない引っ越し先を選んでしまうケースも考えられます。
さらに転職先が決まっていない状況では、希望物件の入居審査が通らない可能性があります。そのため、できれば現職に在籍しながら転職活動を続け、転職先が決まってから引っ越し先を探した方が安心です。
引っ越しを伴う転職を進める際のポイント
今住んでいる住居から離れた場所にある企業に転職するなど、引っ越しを伴う転職を進める際の注意点、押さえておきたいポイントについて解説します。
家族やパートナーがいる場合は事前に相談・確認しておく
引っ越しを伴う転職は、家族やパートナーのライフスタイルにも大きな変化が生じます。子どもの通学やパートナー・配偶者の仕事などにも影響が出るため、事前に話し合う機会を設け、しっかりと相談することが重要です。場合によっては、「一時的に家族と別居する」「段階的に引っ越す」といった選択肢も出てくるでしょう。
引っ越しを検討していることを応募書類で伝える
引っ越しを想定していることを、応募企業に書類選考の段階で伝えておかないと、通勤負担を懸念されてしまうケースも考えられます。転職に伴う引っ越しを考えている場合は、勤務地の近くに転居する意思があることを、履歴書の備考欄に記載してきちんと伝えるようにしましょう。
入社日までの期間に余裕を持つ
新居探しや引っ越しの手配に思いがけず手間取り、入社日までに引っ越しができない可能性も考えられます。そのため、転職先が決まってから引っ越しをする場合は、入社日までの期間に余裕を持つことが大事です。入社予定日、後任の着任時期、引き継ぎ期間、残りの有給休暇などを確認し、引っ越しのスケジュールを立てておきましょう。
また、時期やスケジュールによっては、入社日までに引っ越しができないことも考えられます。入社日までの引っ越しが難しくなった場合は、転職先の人事担当者に連絡し、一時的にテレワークや長距離通勤、宿泊施設や寮・社宅の利用ができないかを相談し、対応策を検討してもらいましょう。
引っ越しせずに転職活動するコツ
これまでご説明をした通り、住居から遠い地域にある企業への転職を考えている場合も、まずは引っ越しをせずに転職活動をする方がさまざまな理由から好ましいと言えます。応募先企業の通勤圏内に住んでいないと不利だと考えて、引っ越しを急ぐ人もいるかもしれませんが、遠隔地の応募だからという理由だけで不採用になることはほとんどないでしょう。
企業が知りたいのは、なぜこの地域で働きたいのか、そして自社を志望する理由です。応募書類できちんと理由を伝えれば、遠隔地への応募も問題ありません。
続いて、引っ越しをせずに転職活動をするためのコツをご紹介します。
オンライン面接を活用する
コロナ禍の影響でデジタル化が進み、近年はオンラインで面接を行う企業が増えてきました。オフィスを実際に見たい場合、最終面接は対面で行う企業も多いので、最終面接で訪問した際に見学させてもらうといいでしょう。オンライン面接のみで選考が行われる場合は、内定前に「オフィスを見学したい」「社員の話を聞いてみたい」などの要望を伝えて、オフィスを訪問して社風や職場環境を確認しておくと安心です。
引っ越したい地域に強い転職エージェントを相談する
U・I・Jターンの転職に強い大手の転職エージェントであれば、引っ越ししたい地域に合わせた求人の紹介や通勤時間や家賃相場、生活環境、引っ越しなどの相談にのってくれるでしょう。また、引っ越ししたい地域の転職エージェントであれば、地域企業との関係性も強く、より希望に沿った求人情報を紹介してくれる可能性があります。
転職活動と引っ越しのスケジュールイメージとタスク
転職活動のスケジュール目安としては、転職活動の「準備」に2週間、「応募~面接」は1~2カ月、「内定~入社」までは1~3カ月程度かかることが一般的です。活動開始から入社まで3カ月~半年程度かかると想定しておきましょう。
新居探しや引っ越し準備などに思いがけず手間取り、入社日までに引っ越しができない可能性も考えられます。入社予定日、後任との引き継ぎ期間、残りの有給休暇などを確認し、早めに引っ越しのスケジュールを立てておきましょう。
転職に伴う引越し費用を抑えるには
引っ越しに必要な初期費用は、敷金・礼金・前家賃・仲介手数料・火災保険などを合わせ、総額「家賃の4~5カ月分程度」を要します。そのほかにも引越し業者に支払う費用や新居の家具・家電などの購入などでさらに出費がかさむこともあります。ここでは、転職に伴う費用を抑える方法をご紹介します。
家賃補助、社宅や社員寮がないか確認
社宅や住宅手当が利用できれば、転職後の住居費を抑えることができます。また、Uターン・Iターン・Jターンを歓迎している企業の中には、引っ越し費用を補助する制度を設けているケースもあります。転職先の企業にどのような制度があるのかを事前に確認し、最大限活用するようにしましょう。
引っ越しが多い時期に注意する
引っ越しシーズンの3月や9月は、引っ越し業者や不動産屋の繁忙期です。特に3月は学生や新卒入社の社会人、転勤者などの引っ越しが多く、引っ越し料金が高くなるだけではなく、予約することも難しくなることも考えられます。3月の引っ越しとなる場合は、注意しましょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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