役員面接の通過率を高めるには?面接の目的や注意点などを紹介【回答例あり】

転職活動における役員面接は、これまでの面接とどのような違いがあるのでしょうか。「どのような準備をすればいいのか知りたい」という方のために、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に、役員面接の通過率を高めるポイントと、よくある質問例・回答例について伺いました。

【役員面接】選考上の位置づけは?企業は何を見ている?

最初に、役員面接の位置づけや企業が見ているポイントについてご紹介します。

役員面接の位置付け

一次面接や二次面接では、現場の管理職や人事担当者などが参加し、実務で求められる経験・スキルがあるかを確認したり、職場や社風との相性を見極めたりすることが一般的です。一方、役員面接は、採用候補者を絞った上での最終選考とすることが多く、さまざまな側面から「採用することが自社の利益につながるか」を判断していると言えるでしょう。ただし、管理職・専門職などの責任あるポジションの場合は、一次面接などの早い選考段階から役員面接が行われる可能性もあります。経営理念や今後の事業計画なども見据えた上で、求める人材にマッチするかを見極めていると言えるでしょう。

役員面接で企業は何を見ている?

役員面接では、応募者の人となりを最終確認すると同時に、企業のビジョンと応募者が考えるキャリアがマッチしているかを確認することが多いでしょう。経験・スキルなどについては、それまでの面接で確認しているため、役員面接ではより大きな視点で「中長期的に貢献してくれそうか」を見ていると言えます。企業文化やキャリアビジョンがマッチしている人材であれば「早期離職の懸念がなく、長く活躍してくれる」という判断につながります。また、応募者のマネジメント能力や任せられる仕事の幅などの将来性も含めて「この人材を採用することで、企業に利益が生まれるか、採算が取れるか」も見ているでしょう。

人事や現場の管理職が面接をする場合は「現場に不足している人員を補うために、業務に必要な経験・スキルがある人材ならOK」と判断することはよくあります。一方、役員面接では「事業計画に紐づいた採用計画」を重視しています。経営ビジョンや事業計画などを踏まえたより大きな視点で、組織のバランスや今後の事業展開における課題などに対して「役立ってくれそうな人材かどうか」を判断しています。特に、管理職・専門職などのポジションの場合は、こうした面を見られていると考えた方が良いでしょう。

役員面接の通過率を高めるポイント

役員面接の通過率を高めるために、面接までに準備しておきたいことや面接の際に意識したいポイントをご紹介します。

これまでの面接を振り返っておく

これまでの面接での回答内容は、役員面接の担当者にも引き継がれています。役員面接で矛盾している回答をした場合は「一貫性がない」と判断される可能性があります。役員面接で人物像にズレが生じた場合「そもそも自社が求める人材像に合致しているのかどうか」を判断できなくなってしまうでしょう。

また、役員面接では、これまでの面接での回答内容について、より深く掘り下げていくこともよくあります。回答内容を振り返って、より深く具体的に回答できるように準備することが重要です。前回までの面接でうまく回答できなかった部分についても、懸念点として面接担当者に引き継がれている可能性があるので注意が必要です。役員面接で再度聞かれた際、きちんと回答することで懸念を払拭することができるでしょう。

貢献できることを具体的に伝える

「自身の経験・スキル」と「入社後、どのような業務で力を発揮し、どのように活躍・貢献していけるのか」を紐づけて伝えることが大事です。中途採用では即戦力人材を求めているので「企業が何を求めているのか」をピンポイントで伝えるように意識しましょう。特に、管理職・専門職の場合は、より責任や成果が求められるので、漠然としたビジョンではなく、具体的なプランを伝えることが重要です。「どのような役割まで担うことができるのか」「入社後、いつまでにどのような目標を達成したいのか」など、マネジメントや数字達成などの面からどのような活躍・貢献ができるのかを伝えましょう。

働き方がマッチしていることを伝える

企業は一定の定着性が見込めるかどうかも重視するので、中長期的に働き続けられることを伝えましょう。チームワークで貢献したことや、個人で行動を管理しながら成果を挙げた経験など、応募企業の働き方にマッチする具体的な活躍・貢献エピソードを伝えることがポイントです。また、入社後の働き方において、自身の強みを活かしてどのような領域に貢献できるのかを伝えることも意識しましょう。

経営ビジョンと自身の共通点を伝える

企業のミッション、ビジョン、バリュー、クレドなどを調べ、自分の考えと共通する点を探しましょう。企業の経営ビジョンと応募者のキャリアビジョンが合致していると判断されれば評価につながる可能性も高くなります。特に、管理職やリーダーポジションの場合、自社の経営方針を咀嚼した上で、部下の指導や組織運営を行い、事業目標の達成に向かうことが必要となります。企業の理念やビジョンへの理解度が低ければ「そうしたポジションに就いても役割を果たすことができない」と判断されることもあるでしょう。

入社意欲の高さを伝える

志望動機や転職理由などを聞かれた際には、応募企業への入社意欲の高さを伝えるように意識しましょう。自社への熱意や入社意欲が高い人材の方が、内定辞退や早期離職の可能性が低いため「長く活躍してくれる人材」という評価につながりやすいと言えます。

また、同じような経験・スキルを持つ応募者がいた場合、企業は「自社に魅力を感じてくれている人材」を評価する傾向があります。特に、成長ステージにある企業の場合は、同じ経営ビジョンに向かってエンゲージメント高く活躍してくれる人材であることを重視します。募集要件を満たす経験・スキルがない場合でも、熱意や意欲を伝えることで選考の通過率を高めることができるでしょう。

役員面接で注意したいこと

次に、役員面接に臨む際、注意したいことについて解説します。

内定への最終確認だと思い込まず油断しない

役員面接のことを「内定への最終確認の場」と考えて油断してしまう方もいますが、内定が出るまではあくまで選考中であることを忘れないようにしましょう。これまでの面接と同様に真摯な姿勢で臨むことが重要です。

また、「役員面接を受ける段階で、ほぼ内定している」と考え、自ら年収などの条件交渉を始めてしまう方もいますが、選考を受けている立場であることは忘れない方が良いでしょう。条件交渉は役員面接終了後や内定前の面談など、人事担当者との条件すり合わせの場で行うことが多いです。

なお、役員面接の最中に面接担当者から希望条件を聞かれることもありますが、こうした場合はそのまま希望を伝えることに問題はありません。ただし、応募企業の年収幅を大きく上回る希望条件の場合は、交渉そのものが難しいと考えた方が良さそうです。「内定を出しても辞退される可能性がある」「入社後、収入に不満を感じて早期離職するかもしれない」などの判断をされることもあります。自身にとって譲れない条件である場合は、そうした可能性も踏まえた上で伝えましょう。

逆質問を用意しておく

役員面接を担当するのは役員のため、事業の将来的なビジョンなど、相手が経営層だからこそ聞きたい質問を用意しておくと良いでしょう。企業のウェブサイトなどで調べられるような内容を質問すれば「企業研究をしていない。入社意欲が低いのではないか」など、熱意を疑われる可能性があります。

一方で、待遇や福利厚生など人事担当者に質問するような内容は避けた方が良いでしょう。相手の役職や立場に合わせて、適切なコミュニケーションをすることが大事です。役員に直接話を聞けるチャンスを活用しつつ、入社意欲の高さもアピールしましょう。

役員面接の日程調整には柔軟に対応する

役員は多忙なことが多いため、面接日程の時間調整がしにくく、日程が決まりにくいことがあります。勤務時間前の早朝や業務終了後の夜などに設定する場合もありますが、日程調整の連絡が来たら迅速な調整対応をすることをお勧めします。

調整ができない場合は、ほかの応募者の選考を先に進めることになり、早い時点で人材要件にマッチする候補者が見つかれば、そちらを優先する可能性もあるので注意が必要です。現在、コロナ禍の状況に対応し、役員面接をオンラインで実施する企業もありますが、対面の面接よりも融通が利きやすいので、フレキシブルに日程調整できるでしょう。

役員面接でよく聞かれる質問例と回答例

最後に、役員面接でよく聞かれる質問例と回答例文をご紹介します。

「これまでの経験を当社の事業にどのように活かしていきたいと思いますか?」

<回答例>
選考を通じて、御社の強みは◯◯◯◯であると理解いたしましたが、◯◯事業における◯◯◯業務について、より強化していくことができると感じました。現職での◯◯経験を活かして◯◯などの改善や◯◯◯◯の強化に取り組み、御社の強みを加速させていくことができればと考えております。

ポイント解説

企業側が解決したい課題や成長させたい領域などを考えた上で、前職での具体的な経験を当てはめてどのように活躍・貢献できるかを伝えると良いでしょう。

企業内の詳細な情報を把握することは難しいため、実際の課題などとのずれがあっても問題はありません。自身で構想したプランを提案することで「企業の研究をしっかり行っている」「具体的なプランを考えて実行していける能力がある」という評価につなげることができます。

「当社の事業内容や今後の業界について、どのような展望を持っていますか?」

<回答例>
選考を通じて教えていただいた御社の◯◯◯◯事業に興味を持ち、業界誌を調べ、競合分析も行いました。御社は◯◯の領域で大きく数字を伸ばしているため、◯◯を求める顧客層に特化したサービスを展開することに大きな可能性があると感じました。他社にはない◯◯という強みを活かし、◯◯領域のサービスを拡充していくことで、顧客層をさらに広げていけると考えております。

ポイント解説

業界研究をした上で、自身の視点で仮説を立て、根拠を持って伝えることがポイントです。企業の事業戦略などと方向性が多少違っていても「業界研究を行っている」「自分としての見解を導き出している」という点が伝わるので評価につながりやすいでしょう。正確な数字を把握していなくても、固有名詞などが間違っていても、面接のコミュニケーションの中で相手が訂正してくれるので問題ありません。

「入社後、どのようなキャリアをイメージしていますか?」

<回答例>
今回応募いたしました◯◯職の業務において数字を達成しながらミッションを果たし、事業を成長させていくことに貢献したいと考えております。また、チャンスがあれば新しい事業の立ち上げなどに挑戦し、組織を一から作り上げるマネジメントも経験したいと考えております。

ポイント解説

選考を受けているポジションのミッションに対し、どのようにコミットし、成果を出していくのかを示すことが大事です。その上で、組織の中でどのような個人的成長をしていきたいかを伝え、成長意欲の高さを伝えると良いでしょう。面接の段階で、応募したポジションと違う領域に対する個人的な目標を前面に打ち出せば「入社後のポジションと応募者の希望がマッチしていないため、早期離職するかもしれない」と懸念される可能性があります。

「当社以外に応募している会社はありますか?」

<回答例>
経営企画に近いポジションで働きたいと考えているので、それを軸に数社の選考を進めております。その中でも、事業の成長性において、御社に強い魅力を感じております。

ポイント解説

他社の選考状況を聞かれた場合は、隠す必要はありませんが、選考を進めている企業名や選考段階などの詳細まで答える必要もありません。選考を並行している旨を簡単に伝えると同時に、応募企業に対して感じている魅力を伝え、入社意欲が高いことをアピールしましょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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