転職の最終面接(役員面接)で聞かれる質問・逆質問の回答例と事前準備のポイント

採用面接の風景

転職活動では、一次・二次面接を高評価で合格しても、最終面接(役員面接)で不採用となるケースもあります。最終面接でも、油断せず、準備して臨むことが大切です。そこで、最終面接で見られているポイント、よく聞かれる質問への回答例、最終面接に向けて準備しておくことなどを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。

最終面接(役員面接)の位置づけと質問傾向

最終面接(役員面接)は、これまでの一次・二次面接とは異なる視点で選考がなされるケースが少なくありません。最終面接(役員面接)の役割・傾向を知っておきましょう。

一次・二次面接で企業が見ているポイント

一般的に一次・二次面接で選考を行うのは、人事担当者や配属予定部門の責任者などです。ここでは「採用ポジションで求めている経験・スキルがあるか」「一緒に働くメンバーになじめそうか」「社風にマッチするか」などのポイントを重点的に確認しているようです。

最終面接(役員面接)=ほぼ内定とは限らない

最終面接(役員面接)まで進んだ段階で、「ほぼ内定も同然。あとは役員・社長との『顔合わせ』程度だろう」と考える方もいるようです。しかし、一次・二次面接で高い評価を得て、「あなたのご経験・スキルを当社で発揮してもらえたら嬉しい」と言われたとしても、最終面接(役員面接)で採用を見送られるケースはあります。当面の課題を解決するスキルはあっても、中長期視点で「自社が目指す方向性と応募者のビジョンがマッチしない」「根本的な理念・価値観が異なる」などと判断されると、採用には至らないことがあります。

また、上記をすべてクリアしていても、年収・待遇などの条件面の折り合いがつかず、不採用となるケースもあります。

最終面接(役員面接)でよく聞かれる質問と回答例

最終面接(役員面接)でよく聞かれる質問の例と回答例をご紹介します。同じ質問を一次・二次でもされているケースがありますが、前提として、一次・二次面接で語った内容と矛盾が生じないように注意が必要です。最終面接では、応募者の真意をつかむために突っ込んだ質問が提示されることがありますので、より具体的に答えられるように準備しておきましょう。

【1】なぜ当社を志望したのですか?

「自社への興味」「入社意欲の強さ」をはかることを目的とした質問です。志望動機を答える際には、競合他社でも通用するような内容ではなく、その企業の独自性を挙げて語りましょう。また、「転職理由」「自己PR」と矛盾がないよう一貫性を持たせましょう。

なお、この質問の意図は、採用ポジションによって少し異なることがあります。 メンバー~チームリーダークラスの応募者であれば、「入社後の伸びしろ」を見極め、応募者が5年後・10年後に目指すキャリアプランと、自社が「このような人に成長してほしい」と考える育成プランがマッチしているかどうかに注目しているようです。

【回答例】

○○の領域で今後のキャリアを築き、スペシャリストとして成長したいと考えています。御社ではまさに○○領域に力を入れ、シェアNo.1 を目指すとのことですので、私が培ってきた△△のスキルを活かし、その実現に貢献したいと考えています。

一方、マネジャー以上の採用であれば、「あなたなら、当社以外にも多くの選択肢があるでしょう。その中で当社をどう分析し、どの点に魅力を感じて志望されましたか?」という聞き方をされるかもしれません。

この質問では、マーケットと自社の事業・組織に対する「理解度」「分析力」「思考力」を見極めようとしているとも言えます。一次・二次面接よりさらに業界研究・企業研究を深めた上で、自身の考えをまとめておくといいでしょう。

【回答例】

私はこれまで○○業界を対象としたビジネスを手がけてきました。その中で△△という課題の深刻さを実感しています。御社の□□サービスはまさにその課題解決につながると確信しています。そこで私が○○業界へ□□サービスを普及させる役割を担いたいと考えました。

【2】当社で実現したいことは何ですか?

メンバー~チームリーダークラスであれば、「当社でどのようなキャリアを積みたいですか?」「5年後・10年後、どのようなキャリアを描いていますか?」など。マネジャー以上であれば「これまでのご経験を、当社でどのように活かしたいですか?」「当社で働くことは、あなたにとってどのような価値がありますか?」といった表現で聞かれるかもしれません。

いずれの場合も、応募企業の事業の方向性を理解した上で、自身が取り組みたい事業、築きたいキャリアとマッチするポイントを具体的に伝えましょう。ただ「~したい」にとどまらず「なぜこれをやりたいのか」まで伝えることも大切です。「3カ月以内には○○をやる」「1年で○○を達成したい」など、時間軸を明示して目標を伝えるのもいいでしょう。

【回答例】

現職では、○○サービスの企画・運営を手がけています。クライアントの課題解決のためには△△の機能も提供したいのですが、会社はサービス向上のための投資をする計画はないようです。今後、○○サービス領域に力を入れていこうとしている御社であれば、さらに価値が高いサービスを実現できると考えています。企画を任せていただければ、1年以内のローンチを目指します。

【3】仕事において大切にしていることは何ですか?

例えば、「○○職として、どのような姿勢が重要だと考えますか?」「マネジメントにおいて重視していることは何ですか?」など。経営幹部のポジションに近づくほど、その人の「仕事観」「哲学」などが注目されるケースが見られます。自身が仕事をする上で大切にしていることを整理し、言語化しておきましょう。

【回答例】

マネジメントにおいては、自身の方針や考えをメンバーに指示するのではなく、メンバー自身が主体的に考えて行動を起こせるようにしています。それによってメンバーの成長が促進されると考えています。チームワークを活性化させるために、『心理的安全性』についても学んでおり、その手法を組織作りに採り入れたいと考えています。

【4】内定が出たらどうしますか?

「当社は第一志望ですか?」「内定を出したら入社していただけますか?」「いろいろな企業を検討されていると思いますが、感触はいかがですか?」などという表現で聞かれることがあります。

もし入社意思が固まっていないのであれば、「御社に入社したい」などと答えることは避けましょう。企業が他の応募者を断ったり、新規募集を止めたりした後、結果的にあなたが入社しなければ、採用計画を停滞させてしまい迷惑をかけることになります。今後、ビジネス上でつながりができる可能性もありますので、心証を損ねることは避けたいものです。

複数の企業で迷っている場合、入社可能性については明言を避けた上で、応募先企業に対して魅力を感じているポイントを伝えるといいでしょう。

回答例

いくつかの企業を検討していますが、すべての面接を終えていませんので、現時点では判断ができません。詳細な条件も踏まえ、家族の意見も聞いた上でじっくり考えたいと思います。御社には、○○という理念に強く共感しており、△△事業の成長可能性にも魅力を感じています。

最終面接(役員面接)での逆質問のポイントと例文

最終面接(役員面接)では、面接担当者から逆質問を求められるケースがあります。企業によっては社長や経営幹部が面接を担当することもあり、会社の今後の方針などを直接聞くことができる絶好の機会です。逆質問を考える際のポイントと例文をご紹介しましょう。

逆質問を考える際のポイント

逆質問を考えるときは、応募企業の採用情報やIR情報などを見直し、経営方針や事業内容などについて知りたいことを洗い出してみましょう。これまでの面接を振り返り、確認できていない点や新たに疑問を感じた点などをリストアップしてみるのも有効でしょう。事前に、面接をする相手の役職や氏名が分かっているなら、メディアでの発言などを調べて、人物タイプを想定しておくこともおすすめです。

また、なぜそれが知りたいのかという意図を伝えることで、相手も回答しやすくなります。「私は○○と考えていますが…」など、自分なりの仮説や見解を添えて質問できるように準備しておきましょう。

控えた方がいい逆質問

逆質問で避けたいのは、ホームページなどを見ればすぐに分かる質問。「調べていない=志望度が低い」と見なされることがあり、注意が必要です。また、「社長が考える経営とは何でしょうか?」などといった抽象的な質問も答えづらく、相手によってはいい印象を持たれないことがあります。さらに、福利厚生や配属の想定など、人事や現場の社員に聞いた方が適切に答えられる質問を、経営幹部にするのも控えた方がいいでしょう。

最終面接(役員面接)で使える逆質問の例

逆質問は、これまでの選考を通じて生じた疑問や懸念点をクリアにしたり、自己PRや入社意欲を補足したりする機会として活用できます。次に紹介する例を参考に、逆質問の準備をしておきましょう。

事業戦略に関する質問例

○○事業では、今後○○業界以外への展開も進めていかれると二次面接でうかがいました。御社のプロダクトの特性上、私の経験してきた◎◎業界などでもニーズがあると感じており、事業展開の可能性があれば、私もより貢献できるのではないかと考えておりますが、いかがでしょうか?

これまでの面接を通じて応募企業への理解を深め、志望度がより高まったことが伝わる質問です。今後の事業展開に関して、自分なりの見解を述べ、貢献する意欲を見せている点でも好感を与えられるでしょう。 

経営ビジョンに関する質問例

○年後に○億円企業を目指すことを掲げていらっしゃるなど、御社の高い成長性に魅力を感じております。その実現にあたって、3つの既存事業のうち特にどこに注力されるのかを教えていただけますか?

具体的な数字を挙げて質問をすることで、応募企業について調べていることが伝わります。また、今後の方向性について期待や興味関心を持っていることでも、「自社と価値観が一致している」という印象を与えられるでしょう。 

企業風土に関する質問例

御社独自の、成果を公平に評価する人事評価制度に魅力に感じております。導入背景をホームページで拝読しましたが、組織のカルチャーは導入前後でどのように変化したでしょうか?変化の中で、組織としての痛みもあったのではないかと思いますが、どのように乗り越えられたでしょうか?

人事評価制度の導入背景まで調べ、それについて自分なりの仮説を持って質問をしているので、企業側も答えやすく、円滑なコミュニケーションが望めるでしょう。

最終面接(役員面接)に向けた事前準備とポイント

最終面接(役員面接)では「志望動機」「入社後の目標・ビジョン」を確認されることが多く、より具体性を持って語ることで、採用可能性が高まることも考えられます。次のような準備をしておくといいでしょう。

これまでの面接を振り返る

これまでの面接での回答内容は、最終面接(役員面接)の担当者にも引き継がれていることが一般的なため、矛盾している回答をした場合は「一貫性がない」と判断される可能性があります。もし人物像にズレが生じた場合「そもそも自社が求める人材像に合致しているのかどうか」を企業は判断できなくなってしまうでしょう。

また、最終面接(役員面接)では、これまでの回答内容についてより深く掘り下げていくこともよくあります。回答内容を振り返って、より具体的に回答できるように準備することが重要です。前回までの面接でうまく回答できなかった部分についても、きちんと回答することで懸念を払拭することができるでしょう。

「企業研究」をさらに深める

最終面接(役員面接)に臨む際は、応募企業について改めて詳しく調べておくと、会話が深まりやすくなります。企業ホームページの「採用情報」や、転職サイトなどに掲載している求人を読んで「求めている人材像」を把握するほか、「トップメッセージ」「ミッション・ビジョン・バリュー」「クレド」やインタビュー記事などから、経営幹部が発信する理念やビジョンを確認しておきましょう。また、IRページやプレスリリースで、経営状態と今後の事業計画なども調べておきましょう。

志望動機・自己PRをブラッシュアップする

これまでの面接で得られた発見や情報から、志望動機や自己PRの解像度を上げて、しっかりと入社意欲をアピールできるようにすることが大切です。志望動機については、応募企業により魅力を感じるようになったポイントや、入社後に実現したいことを具体的に語れるようにしておきます。さらに、自身の強みを活かして応募企業に貢献できるポイントを明確にしておきましょう。

将来のビジョンを語れるようにしておく

上述したように最終面接(役員面接)では、中長期的な視野に立った質問をされることが多くなります。そのため、「○年後に自分自身がどうなりたいか」という個人のキャリアプランを明確にしておくだけではなく、自身のビジョンと応募企業の方向性に接点を見出すことが大切です。将来を見据えて、組織の中でどのように価値を発揮していけるかを、自身の言葉で語れるようにしておきましょう。

最終面接(役員面接)のよくあるQ&A

転職の最終面接(役員面接)について、求職者からよく聞かれる質問にお答えします。

Q.最終面接後にお礼のメールは送った方がいい?

A.最終面接(役員面接)のお礼メールは、一般的には送っても送らなくても構いません。ただ、その場で十分に伝えきれなかったことや、面接を通じてより志望度が高まったことなど、応募企業に伝えたいことがあるなら送ってもいいでしょう。通常のビジネスメールと同様に、面接当日か、遅くとも翌日までには送信することをおすすめします。

Q.最終面接の合否通知はどのくらいで来る?

A.一般的に、最終面接(役員面接)の合否通知が届くのは3~10日後。企業や募集ポジションによってケースバイケースですが、基本的に他の選考と大きくは変わりません。ただ企業によっては、他の応募者と比較して慎重に検討するケースもあります。もし他社の選考との兼ね合いで、「○日までに結果が知りたい」という希望があれば、事前に応募企業に伝えておくと安心です。

Q.いきなり最終面接(役員面接)をする企業もある?

A.特にハイクラス層の採用では、組織や事業へのインパクトが大きいため、複数回の選考を行って慎重に検討する企業がほとんどでしょう。しかし一部には、人事・現場・経営者が揃って面接をする場合や、事前に面談を行ってマッチ度が高い応募者のみ面接を実施する場合など、一次面接が実質的な最終面接(役員面接)と位置付けられるケースもあります。

Q.一次・二次面接と同じ質問をされたらどう答える?

A.基本的には同じ答えで問題ありません。一次・二次面接で伝えた内容は企業内でも共有されていますが、中には十分伝わっていなかったり、再度確認する意図で質問されたりすることもあるからです。「一度答えたから省略してもいいのでは」などと考えず、よりポイントを整理して、しっかりと伝えればOKです。
 
ただ、自身がこれまでの面接によって、企業や仕事に対する理解を深めたことで、志望動機やアピールしたい内容が変化することもあります。その場合は「選考を通じて御社への理解が深まり…」などと添えて、新たな思いを伝えればいいでしょう。

転職エージェントの情報も活用して最終面接(役員面接)の準備をしよう

転職エージェントを通じて転職活動を行うと、一次・二次面接の振り返りと、それを踏まえて最終面接(役員面接)にどう臨めば良いのかをアドバイスしてもらえるでしょう。応募企業が懸念を抱いているポイント、選考で重視しているポイント、面接で聞かれる質問などについて情報を得ることができます。また、最終面接(役員面接)の相手となる社長や役員のキャラクターなどを事前に聞けることもあります。転職エージェントが持つ情報やアドバイスも、ぜひ活用してはいかがでしょうか。

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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。