「調整力」を自己PRで伝える場合のポイントと自己PR例文

転職活動の自己PRで「調整力」を伝える場合、どのような点に注意すればより効果的なアピールにつなげられるのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、調整力を自己PRで伝える際のポイントや企業が確認していること、注意点などを伺いました。自己PRの例文や作成する際の構成要素なども合わせてご紹介していきます。

「調整力」を自己PRで伝える場合のポイント

企業が求める「調整力」とは、どのようなものでしょうか。
業種や業態、職種、ポジションなどによって異なりますが、多くの場合、次のような期待が持たれます。

「さまざまな立場の人々をとりまとめ、協力体制を築くことで成果を最大化する」
「関係者それぞれの利害をすり合わせ、目的・目標の達成へ導く」

なお、「周囲の状況に応じてうまく立ち回れる」ことを「調整力」と捉える人も見られますが、周囲に合わせるのではなく、周囲を動かせてこそ、「調整力がある」といえます。
伝え方を誤ると、「自己主張ができないだけなのでは?」と疑念を抱かれる可能性がありますので、注意しましょう。

上記を踏まえ、下記の要素を組み込んで「調整力」の自己PR文を作成しましょう。

<調整力を伝える構成要素>

  • 強みの概要
  • 課題・状況
  • 調整の相手・対象範囲
  • 具体的な行動
  • 成果

「調整力」の自己PR例文

「調整力」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。

Webディレクター(EC)の自己PR例文

問題解決のための「調整力」に自信があります。
自社ECサイトのリニューアルプロジェクトのリーダーを務めた際、リアル店舗の運営部門、カスタマーサービス部門、コーポレートサイトを運用する広報部門、情報システム部門、ネットショップ出店先のECモール運営会社など、社内外との調整を行いました。各所からの要望をすべて受け入れると仕様が複雑になり、運用効率が落ちることが見込まれたため、ニーズに最大限応えつつも、ある程度の妥協点を見出して提案。全部門から合意を得ることができ、当初のスケジュール通りにプロジェクトを完遂しました。リニューアル後は、ECサイトの売上140%を達成しています。
こうした経験から培った調整力を貴社のWebマーケティング戦略で活かし、売上アップに貢献したいと考えています。

経理・管理職(商社)の自己PR例文

私の強みは、部門間の「調整力」です。
各部門から提出される経費関連の書類に不備が多く、経理スタッフの確認作業のため、月末月初には残業が発生していました。そこで、各部門の現場に負荷をかけず、不備が生じない仕組みを整備するため、各部門のマネジャーと経理部門で協議。それまでは各部署の庶務担当者が独自に行っていた処理フローやミスの防止策などをヒアリングし、各部署の優れた部分を組み合わせる形でフローを統一しました。従来のやり方を変えることに対する反発もありましたが、得られる効果を丁寧に説明し、合意に至りました。新たな申請書と仕組みの導入により、経理スタッフ一人当たり7時間/月の残業削減を実現しました。
こうした経験から培った調整力を活かし、貴社の組織拡大プロセスにおける仕組みの整備に貢献したいと考えています。

プロジェクトマネジャー職(IT)の自己PR例文

「現状・課題・目的」を整理し、根本的な課題解決に向けてプロジェクトをとりまとめる「調整力」があります。
顧客と多数のパートナー企業がかかわる大規模な開発プロジェクトを担当した際、顧客からの変更要望が多く発生したことでスケジュールが遅延し、自社メンバーとパートナー各社から不満が噴出したことがありました。その際、目先の問題に対処するよりも、根本的な課題を整理することが必要だと判断。顧客側に対しては、開発目的の整理をはじめ、細部まで目線合わせをするように働きかけました。一方、開発側に対しては、主要パートナーとの定例会議を設定し、進捗状況や問題点などの情報を共有。全体像を把握できるようにしたことで本質的な課題をつかむことができました。新たなプロジェクト管理ツールを導入して円滑化を図り、プロジェクトを完遂することができました。
こうして培った調整力を活かし、より大規模なプロジェクトにチャレンジしたいと考えています。

自己PRで採用担当者が確認していること

採用担当者が、職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。

  • 職務経歴だけではつかめない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
  • その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか

そして、自己PRとして「調整力」が挙げられていた場合、そのエピソードから次のような力を備えているかどうかに注目するでしょう。

  • それぞれの意見に耳を傾けつつも影響を受けすぎず、目的をブレさせずに目標達成に向かう力
  • それぞれの人の背景にある利害関係や状況・事情などを理解し、潜在的なニーズをつかみとる力
  • 社内の他部署や他職種などに人脈を築き、幅広く情報を入手する力
  • 関係者全員から納得を得られる落としどころを提案し、相互理解を深めて合意を形成する力

自己PR文を作成する際には、このポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。

自己PR文の作り方のコツ

職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。

【1】書き出し
書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「調整力」を入れておくとわかりやすいでしょう。

【2】【1】を裏付けるエピソード
最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くのはNG。200~400文字程度にまとめてください。

【3】成果
【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。

【4】締め
応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。

自己PR文を作成する際の注意点

自己PR文を作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
自己PR文の作成にあたり、以下のポイントに注意してください。

企業が求める人物像にマッチしていない

自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかを掴みましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールすると良いでしょう。

具体性に欠け、人柄がイメージしにくい

曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。

要点が絞られていない

アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。

専門用語が多く、分かりやすさに欠ける

異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意しましょう。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。専門用語はなるべく使用せず、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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