「実行力」を自己PRで伝える場合のポイント
仕事における実行力とは、「目的や目標を達成するための計画を立案し、実現に向けた行動をやり切る力」を指します。自己PRで実行力をアピールする際には、単に実行力があるというだけではなく、それが成果につながったことまでをセットにして伝えるのがポイントです。「アクションを起こす力がある」といった一般的な実行力ではなく、自身のエピソードに基づいた自分らしい「実行力」を伝えるといいでしょう。
一方で、実行力をアピールしたつもりが、伝え方によっては「自分で考え計画したものではなく、上司から指示されたことをただ実行しただけでは?」「淡々とオペレーティブにやったことが、たまたま成果に繋がっただけでは?」などととらえられ、評価につながらない可能性もあります。単に「実行して成果を出したエピソード」ではなく、「主体的に計画立案したこと」を中心におき、「成果を出すまでのアクションとその難易度・状況」も具体的に伝えることを意識するようにしましょう。
「実行力」の自己PR例文
「実行力」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。
営業・管理職の自己PR例文
私の強みは、売上〇億円規模の営業組織構築をゼロから起案し、形にした「実行力」です。
前職ではパートナーセールス部門の立ち上げを担当。社長から「3年後に売上〇億円、パートナーセールス部門で会社売上の○割とする計画」との大枠の指示を受け、目標達成に向けた企画・実行を受任しました。人員計画、パートナー企業の開拓、売上の予実管理など全体を統括し、パートナー企業育成の仕組みづくりにも注力。重要な指標をいくつか設けて〇段階にランク分けし、より成果を挙げられるよう育成するためのロードマップや研修コンテンツなども整備しました。当初の1年間は、困難や試行錯誤の連続でしたが、愚直に行動を継続。その結果、売上目標は1年前倒しで達成。3年目には売上金額が計画比〇%上振れの推移となりました。このように信念を持って行動し続け、成果に結びつける実行力は、貴社の営業組織を強化する上でも貢献できると考えております。
SREエンジニア・リーダー職の自己PR例文
月間〇万ユーザーが利用するEC系WebサービスのSRE(Site Reliability Engineering)化を遂行する「実行力」が私の強みです。
前職では、オンプレミス環境からクラウドへの移行の際、SRE担当になりました。社内に知見がない状態から手探りで情報収集・整理をし、ほぼ一人でシステム運用の最適化計画を立案。大前提として安定稼働と開発スピードの維持、将来はより迅速な開発ができるよう、(1)IaC(Infrastructure as Code)による中長期運用コストや工数の削減、(2)コンテナ化による開発エンジニアの生産性向上、(3)DevSecOpsを目指すなど、段階を追って実施。社内には外部から知見を得て丁寧に説明し、協力体制も構築しながら実行へ。その結果、エラー数の〇%低減、月間デプロイ数〇%向上等の効果がみられました。このような実行力は貴社でも活かせると考えております。
管理部門・採用責任者の自己PR例文
“一人人事”としてスクラム採用体制を企画・運用した「実行力」が、私の強みです。
現職では、外資系メーカーの日本法人立ち上げ期に採用責任者として入社し、事業計画に基づき1年間で多職種〇名の中途採用計画を立案。採用市場での知名度が低いことから、外部専門家を活用した職種別採用チームを編成、数年後の採用も見据えたATS(採用管理システム)選定や採用チャネル設計などの採用戦略も構築。初期段階では、経営層を巻き込んだスクラム採用の実行を重視し、半年間は経営層と日次の採用ミーティングを行い、採用の位置づけを確認。転職エージェント各社への候補者向けセミナー企画・実施(〇社×〇回)、社長や役員陣のインタビュー記事など採用メディア〇社での露出強化なども実行。その結果、年間の採用人数〇名を達成。量だけでなく質の面でもバランスの良い採用に成功しました。このような経験は、貴社の採用力強化にも貢献できると考えております。
自己PRで採用担当者が確認していること
採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。
- 職務経歴だけではつかめない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
- その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか
実行力を強みにしている応募者の場合、「主体的な課題設定・計画立案力」とそれを「やり切る力」があるかどうかも見ています。
例えば、会社や上司が立てた計画や指示で実行するのではなく、主体的に課題設定をし、主体的に計画立案できているかという点です。また、立案した計画に関して、いかなる状況であってもアクションし続ける熱量があるか、最後までやり切る力があるかという点もチェックしています。その中には、状況に応じて組織や周囲を巻き込む力があるか、困難に直面しても創意工夫して解決できるか、情報収集・分析、計画立案に際して論理的思考力はあるかといったチェックポイントも含まれています。
自己PR文を作成する際には、このポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。
自己PR文の作り方のコツ
履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。
【1】書き出し
書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「実行力」を入れておくとわかりやすいでしょう。
【2】【1】を裏付けるエピソード
最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くのはNG。200~400文字程度にまとめてください。
【3】成果
【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。
数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。
【4】締め
応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。
自己PRを作成する際の注意点
自己PRを作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
以下のポイントに注意してください。
企業が求める人物像にマッチしていない
自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業が求めている人物像から外れている内容をアピールすると、「自社を理解していない」と評価ダウンにつながる可能性があります。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかをつかみましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールするといいでしょう。
具体性に欠け、人柄がイメージしにくい
曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。
要点が絞られていない
アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。
専門用語が多く、分かりやすさに欠ける
異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意してください。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用しないか、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。
【アドバイザー】
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。