「負けず嫌い」を自己PRで伝える場合のポイント
「負けず嫌い」は、辞書によると「他人に負けることを嫌う勝気な性質であること。また、そのさま。まけぎらい」と書かれています。人はお互いに切磋琢磨し、自分自身を磨くことで成長していくと考えれば、「ライバルや自分に勝とうとする意志」や「向上心」を持つことは、職務や年齢に関わらず必要な資質と言っていいでしょう。
しかし、ビジネスシーンにおいては、それだけでは評価されません。勝つという目的を達成するための冷静な分析力や思考力、実行力もセットになって、初めて認められるものです。従って、自己PRで評価される負けず嫌いとは「論理的な思考と強烈なモチベーションをバランスさせ、自他に負けない取り組みを行う性質」と定義することもできるでしょう。
なお、負けず嫌いは、話し言葉としては違和感がありませんが、一定のキャリアを積んだ人が職務経歴書に「負けず嫌い」と書いてしまうと、稚拙な印象を与えるリスクもあります。負けず嫌いをアピールする場合は、「自分が負けず嫌いな性質を発揮するポイントは何か」を分析し、自身のエピソードに基づいた、より具体的な言葉に落とし込むことをお勧めします。
【例】
「逆境でも粘り強く状況を打開して、チャンスに転じる力がある」
「高い目標でも、達成するためにあらゆる努力ができる」
「周囲の評価に安穏とせず、常に上の自分を目指す向上心がある」
また、エピソードを考える時に気をつけたいのは、自分個人の成果ばかりを追求したり、地位欲や名誉欲が強すぎたりする印象を与えないようにすることです。場合によっては、「競争心が強すぎて、組織内のバランスを乱す懸念がある」「良く言えばストイックだが、勝負や特定の事柄に固執しすぎる」「視野が狭い」といったマイナス評価をされてしまう可能性があります。負けず嫌いをアピールする場合は、その性質によって周囲にどのような良い影響を与え、どのように組織全体を成長させたかという視点を大切にしましょう。
負けず嫌いの自己PR例文
「負けず嫌い」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。
インサイドセールス・チームリーダー職の自己PR例文
失敗を糧としてチームを強化した経験が強みです。
社内にインサイドセールスチームが〇個ある中、自チームはこれまで常にトップでしたが、ある時期からKPIをクリアしているにも関わらず、成果で他チームに劣るようになりました。上位チームをヒアリングしたところ、自チームは仕事に対する主体性が弱く、一歩踏み込んだ行動、特に他部門との連携が課題とわかり、自身のマネジメントミスを痛感しました。
リーダーとして結果にこだわり、メンバーにもやりがいや成果に応じた報酬を得てほしいという思いから、半年後には自チームを社内トップに戻すと決意。他部門との連携強化やメンバーへの方針共有を行い、仕事の意義や成長実感を持って取り組める環境作りをしました。結果、半年後に社内トップに返り咲き、セールスチームの年間MVGも獲得しました。失敗・反省を糧に課題分析をし、的確な打ち手で常勝チームをつくった経験は、貴社でも活かせると考えています。
ECサイト運営・リーダー職の自己PR例文
強みは、信念を持って異分野での課題を乗り越える力です。
アパレルの自社ECの運営責任者を経験した後、オフィスインテリアメーカーにEC事業リーダーとして転職。早く成果を出そうと、前職で成功したSNSマーケティング等の手法を展開し、予算を獲得しましたが、結果は失敗に終わりました。過去の成功体験に囚われ、業界のトレンドや商習慣、競合他社の動向等の理解・分析が不足していたことが原因でした。
大きな挫折でしたが「絶対的に信頼されるマーケターになる」という信念を貫きたいと考え、課題への対応策を検討し、実行に移しました。展示会や営業同行等を通じて現場の声を理解し、現場と連携したSEO、メルマガ配信などの強化に注力した結果、直販EC経由の売上目標達成率〇％を達成することができました。
仕事への信念をぶらさず、自身の課題に向き合い、異分野での成果につなげられる強みは、貴社の新たなEC事業の成長にも寄与できると考えています。
経理財務・管理職の自己PR例文
私の強みは、組織のために困難なミッションと向き合えることです。
経理財務を10年経験した後、大学の同期がIPO関連で活躍する姿に刺激され、IPOを目指す企業へマネジャーとして転職しました。しかし、開示資料の作成、監査法人への対応等、力不足で職責を果たせず、IPO準備のメイン担当からサブ担当に降格。落胆しましたが、「プライドは脇に置き、会社のIPO達成を後押ししたい」と考えました。
そこで、人事や総務、経営企画等、部署を横断してIPOへのプロセスを進めるサポート役に徹しました。また、監査法人などの専門家から、IPO準備に関する知見を学びました。10カ月後、日常の業務成果やスタンスが認められ、再びメイン担当に任命されました。組織全体の目標に貢献できることを分析・行動し、信頼を勝ち得たことは大きな自信となっています。経理財務として目標とする姿に近づくことで、貴社でも組織・事業を前に進めることに貢献できると考えています。
自己PRで採用担当者が確認していること
採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。
- 職務経歴だけではつかめない、その人の強み（スキル・実績・取り組み姿勢）など
- その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか
求職者の自己PRが「負けず嫌い」の場合、企業は特に次の2点について注目し、評価しようとするでしょう。
1）モチベーションの源泉について
「なぜ強烈に負けたくなかったのか」「なぜ克服する行動を取れたのか」といった、モチベーションの源泉を知りたいと企業は考えます。成長意欲や向上心、過去の成功・失敗体験、ロールモデルの存在など、負けず嫌いの背景を知ることで「何を大切にするか」という応募者の価値観を読み取り、自社とのマッチングを測ろうとするでしょう。
2）論理的思考力について
目的を達成するために、自他の強みや弱み、状況・環境・リソースなどを冷静に分析できているか。さらに何を目標とし、指標とするのか、どこまでやれば勝てるのかという目標設定・計画性から、応募者の論理的思考力を判断するでしょう。
自己PR文を作成する際には、このポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。
自己PR文の作り方のコツ
履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。
【1】書き出し
書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「負けず嫌い」を具体的な言葉に落とし込んだキャッチフレーズを入れましょう。
【2】【1】を裏付けるエピソード
最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くのはNG。200～400文字程度にまとめてください。
【3】成果
【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。
数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。
【4】締め
応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。
自己PRを作成する際の注意点
自己PRを作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
以下のポイントに注意してください。
企業が求める人物像にマッチしていない
自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業が求めている人物像から外れている内容をアピールすると、「自社を理解していない」と評価ダウンにつながる可能性があります。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかをつかみましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールするといいでしょう。
具体性に欠け、人柄がイメージしにくい
曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。
要点が絞られていない
アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。
専門用語が多く、分かりやすさに欠ける
異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意してください。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用しないか、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。
【アドバイザー】
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹（あわの ともき）氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
