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転職をお手伝いした方から、数年後に求人案件をご紹介いただく例がいくつもある
エグゼクティブサーチ(経営幹部人材紹介)を数多く手掛けていると、転職のお手伝いをした方が取締役などに昇格され、求人案件をご発注いただけることが珍しくありません。例えば、あるとき、「どうしても手掛けたい事業がある。この事業アイデアを企業に売り込む形での転職を手伝っていただけないか」と、有名企業の役員だった方にご相談いただいたことがあります。いくつかの会社を一緒に回った結果、ある会社とご縁になったのですが、その後、最終的には独立され、心機一転起業されました。私は現在、その企業の採用を支援しております。
また、リーマンショックの頃、ある上場企業のリストラに伴う再就職をお手伝いしたことがあります。何人かの幹部社員の転職を個別に支援し終わって、人事部長の方が「では最後に、僕の転職をお願いします」とおっしゃったときには、最後まで逃げない姿勢に感銘を受けました。いま、その方はある企業の役員を務めており、やはり採用のお手伝いをしております。
求人案件をご発注いただける関係になることがベストというわけではなく、転職後にご活躍いただくことが最も嬉しいのですが、このような形で転職後も長くお付き合いできることはコンサルタント冥利に尽きます。
「渡辺さんに紹介されたのだから、会おう」とクライアントに思っていただけるかどうかが勝負
私たちのエグゼクティブサーチの対象となる方は、基本的には30代後半から50代前半のマネージャーから社長まで。ボリュームゾーンは部長クラスです。もっと若手であれば大雑把なマッチングで決まる案件も数多くありますが、エグゼクティブサーチではスペックマッチングの精度が問われますから、細かなヒアリングが欠かせません。同じ人事でも、採用に強い人事と労務の得意な人事ではほぼ違う職種といってもよいくらいですし、営業マネジャーも、営業スタイルや社風などでマネジメント手法にはかなりの差があります。業務内容を具体的に知らなくては話にならないのです。
カウンセリングの際に肝となるのは、「次の転職で何を獲りに行くのか」ということ。今回の転職によって年収を上げたいのか、ポジションを上げたいのか、ミッションを変えたいのか、働く仲間を変えたいのか。その目的を明確にし、優先順位を付けていくのです。このレベルまで候補者の方のことを深く知るためには、50:50の関係にならなければ難しい。腹を割って、お互いに何でもお話しできる仲になりたいと、いつも願っています。そのために、私は自分の転職失敗談くらいなら、簡単にお話しできます。
エグゼクティブサーチで特徴的なのは、「相性がものを言う」ことです。確かにスキル・経験などのスペックは厳しく求められますが、結局は、相性の良し悪しが転職とその後の活躍を大きく左右します。経験やスキルが完全に条件を満たしていても、社風と合わなければ決して採用されませんし、採用要件から多少外れているのにもかかわらず、面接してみたら社長とウマが合って、トントン拍子で採用が決まったというケースはこれまでに何度となくありました。
相性というのは、私も直接お会いしてみないことには見当がつきません。何度か対話を重ねれば、どのような仕事人生を歩んでこられたのか、私には大方の想像がつきます。その想像をもとに、スペックと相性を兼ね合わせて考慮して、クライアントに候補者をご紹介するのです。そこで「渡辺さんに紹介されたのだから、経験は少し足りていないけれど会ってみよう」と、クライアントの方々に思っていただけるかどうかが勝負。これまでのマッチングの積み重ねが、私の信頼につながるというわけです。私が経験・スキル合致の精度、相性合致の精度の両方を重視する所以です。
一方、クライアントに対しては、求める人物がマーケットに存在するかどうかを明確に伝えることが私の重要な役割です。クライアントの方々は往々にして、ほとんど存在しないようなハイスキル人材を求めがちです。クライアントの方々は全体の転職マーケットの状況をご存じありませんから、それは致し方ないこと。代わりに私が判断し、ハイスキルすぎると感じたら、いくつかの条件を譲っていただくのです。例えば、「英語力やコミュニケーション力などはどうしても必要だが、育てる自信があるから経験や専門スキルは譲る」といった具合です。また、「どのようなタイプの方が活躍されているか」をクライアントに必ず確認します。活躍する人材イメージが具体的になるほど、相性合致の精度が高まるからです。
しっかりと腹を決め、縁やタイミングを大事にすると、転職はうまくいきやすい
最近、特に採用が盛んな職種がいくつかあります。その一つが人事です。景気が良いため、採用や人材の定着に苦労しているクライアントが多く、採用、人事配置、教育研修などを一手に見ることができる人事マネジャーの需要が高まっています。また、企業のグローバル展開が盛んになる一方ですから、海外ビジネス経験者やM&A経験者は引く手あまたの状態が続いています。ITエンジニアは常に人手不足ですし、介護ビジネスなども伸びており、介護施設マネジャーや事業開発マネジャーなどへ異業界から転職するケースが増えています。私たちはさまざまな業種・業界の求人案件をご紹介しており、こういった異業界同職種転職のチャンスも数多くご提案できます。
最後にお伝えしたいのは、好景気だからといって、フワフワとした転職活動はお勧めしないということです。最近、いろいろと活動した結果、最終的に転職しないという方が増えているのです。私がお会いしたなかには、何カ月も転職活動を続け、内定をいくつも断った方もいらっしゃいました。40代以上の転職では、転職者側にもクライアント側にもリスクがあります。少なくともクライアントはリスクを承知で本気の採用活動を行っていますから、中途半端な気持ちで転職を成就するのは難しいですし、第一、クライアントに失礼です。私が知る限り、しっかりと腹を決めて、縁やタイミングを大事にしながら行動した方のほうが決まりやすいですし、その後の飛躍の可能性も高い。ぜひ多くの方に、地に足のついた転職活動をしていただけたらと願っています。
インターウォーズ株式会社 取締役 人材紹介事業部 エグゼクティブコンサルタント
渡辺 浩さん
大手情報サービス企業にて事業部長などを歴任。その後、携帯コンテンツプロバイダーの事業部長、インターネット系ベンチャー企業の経営者を経て、2008年にインターウォーズ入社。以来、エグゼクティブコンサルタントを務めている。特にインターネット業界、サービス業界、広告業界に明るい。経営者と幹部候補者人材の相性や企業風土の一致を重視した紹介をモットーとしており、黒子として決して前面に出ないコンサルティングを心がけている。国家資格2級キャリアコンサルティング技能士。GCDF資格取得。なお、インターウォーズはインキュベーション事業も手掛けているため、ベンチャー企業のクライアントが多いのが特徴の一つだが、業界を問わず上場企業のクライアントも豊富である。