動き出した金融転職市場
私は2006年に人材紹介業界に参入して以来、一貫して、ファイナンステクノロジー(金融機関のIT領域)や保険などの金融分野を担当してきました。私のキャリアにおける大事件といえば、やはりリーマン・ショックです。それ以前は売り手市場で、企業の採用競争の結果、転職者の年収が跳ね上がるといった事態も頻繁に起きておりましたが、2008年の秋以降は企業も転職者も完全に考え方が変わり、多くの外資系企業ではいまだにその影響が残っているところも少なくありません。最近は、外資系金融機関を中心に、オフショア開発やアウトソーシングが進展していることもあり、海外からの採用依頼も目立っております。また日系金融機関においてはグローバル化などの影響も伴い、昨今の採用状況は国内・海外ともに、徐々にアクティブになってきていることも確かです。また、転職市場の状況にかかわらず、優秀な方は常に引く手あまたで、数社の争奪戦になることも珍しくありません。転職市場も二極化が進んでいるといってよいでしょう。
そのような状況のなか、私は培ってきた業界・グローバルネットワーク、転職潜在層に向けたピンポイントで確度の高いサーチと、質に重きを置いたサービス、フレキシブルな対応を心がけてきました。最近はシニア層、ミドル・シニア層だけでなく、30代前半・ジュニア層の転職希望者、また海外からのお問い合わせを多くいただくようになりました。
現状を知っているからこそ、ときには厳しいアドバイスを
クライアント企業にも、転職希望の方々にも、コンサルタントとして向き合い本音で話す。これが私のポリシーです。例えば、転職希望の方のスキル、経験、業務知識、英語力などが不足していればはっきりと伝えますし、転職におけるスタンスや考え方があまりにも現実と乖離していると思えばそのことも指摘することもあります。もちろん、その際にはできるだけその方の長期的なキャリアを一緒に考え、モチベートすることを忘れません。第二新卒などのジュニア層の方々には、「初めての転職活動」について、しっかりとヒアリングし、コンサルティングをさせていただきます。時には「今の会社で、もう少し経験を積んでから転職を考えたほうがよいのでは?」といったアドバイスをすることもあります。30代~40代の方に対しては、今後のキャリアについてじっくりと話を聞かせていただき、ピンポイントの提案をさせていただくことが多く、50代・シニア層の方々には、ポストが減る一方の厳しい転職事情を正直に伝えた上で、できるだけ幅広い選択肢を想定した上で、どのような道がよいかを一緒に考えていきます。
本音のコミュニケーションをなぜ重視するかといえば、多くの方々と長期的な関係を築いていきたいから、そして転職希望の方々もクライアント企業も私たちも満足する「win-win-win」のケースをできるだけ増やしたいからです。短期的に成果を上げるには、無理にでも転職を勧めるほうがよいかもしれませんが、それではその方の利益になりません。現状を見つめ、その方のキャリアを一緒に考え、最善と思える道をお勧めするのが私の役割と考えています。
グローバル化が進む転職市場において、誰に対しても有益な情報を提供できるよう、私は業界動向やIT技術の「最新情報とネットワーク」をいつも欠かさないようにしています。専門家として自信をもって本音を話すためには、新鮮な情報や知識とネットワークが何としても必要です。特に厳しいアドバイスは、現状を十分に把握してはじめてできるものです。たとえ私の専門外でも、それぞれの方が求める情報をできるだけ豊富に揃えることが私の役目だと思っています。
常に影響を与えられる存在でありたい
転職希望の方々だけでなく、もちろんクライアント企業にも日々本音で臨んでいます。「現実的には、そのような採用要件では見つかりにくいでしょう。代わりに、この条件であれば可能性が広がるのでは?」といった提案は日常茶飯事といってよいでしょう。そのような提案をその場ですぐに返せるよう、業務知識や英語力はもとより、専門知識にも磨きをかけ続けています。
また今後は、単に本音で接するだけでなく、クライアント企業への影響力もより強めていきたいと思っています。具体的には、タリスマン主催の各種採用セミナーなどを開催し、クライアント企業や転職希望者への情報提供、あるいはダイバーシティなどのグローバルトレンドの発信と後押しをするのです。このようにして影響力を強めることで、特に現在、業界全体で課題となっている「採用需給ギャップ」を解消する一助になれたらと考えています。
また、タリスマンとしては、今後はファイナンステクノロジーやIT業界だけでなく、保険業界や製薬医療業界向けサービスにも力を入れていきますし、昨年は東京オフィスに加えて、カリフォルニアオフィス、大阪オフィスも立ち上げ、着々と業容を拡大しております。今後もサービスの質を決して落とさず、自身のスタンスを貫いていければと思っております。
タリスマン株式会社 アソシエイトディレクター
亀田 和明さん
2006年、オーストラリアの大学を卒業後、大手外資系人材紹介会社の日本法人に入社。ファイナンステクノロジー領域のコンサルティングはじめ、マネジャーとして活躍した後、保険チームの立ち上げ、サプライチェーンチームのマネジャーを兼任。2012年12月、タリスマン株式会社の立ち上げに参加して以降は、ファイナンステクノロジー・保険領域の専門家として、同社の飛躍を支えている。転職希望者からは、日系・外資系金融機関に詳しい日本人コンサルタントとして重宝されることが多いという。