北海道の銀行子会社として、コンサル事業と人材事業とM&A事業で顧客企業に伴走する北海道共創パートナーズ。札幌にUターン転職を望む62歳の求職者と、事業拡大に向けて現場が分かるミドルシニア人材を求める企業のマッチングを成功させた。シニア採用に対する企業の懸念と求職者の不安に寄り添い、まさに社外人事部のような立ち位置で伴走する株式会社北海道共創パートナーズのディレクター寺嶋聡二氏の「GOOD AGENT AWARD 2022 ミドルシニア部門賞」を受賞したアシストを紹介する。
コンサル事業部との連携で顧客の経営課題に伴走
北海道共創パートナーズは、親会社である北洋銀行の顧客企業の課題解決に向けて、コンサルティングやM&A事業と連携した人材事業を展開している。北海道で不動産事業を営むS社も北洋銀行の顧客。今回の案件もまさに、コンサル事業部が支援するS社の経営課題に対し、建築の技術者の採用を支援するプロジェクトである。
「コンサル事業部がプロジェクトを推進していたため、事業計画や財務状況、社内の人員体制も共有されており、課題に対する適切な人材の提案が可能でした。経営者や社内幹部とも、スムーズに関係構築を作ることができました」(寺嶋氏)
S社では、M&Aによりグループ入りしたリフォーム事業を拡大するフェーズにあった。しかし同社は、不動産経験者は多いものの、リフォーム領域に知見を有する人材がいなかったため、その推進には苦戦していた。また、事務所登録を前代表が持つ建築士資格で行っていたため、世代交代を考えて建築士の資格保有者を採用したいというニーズからのスタートだった。
だが、転職市場において、建築士はそもそも希少な存在である。そのうえ、業務領域は(建築士が好む)新築ではなくリフォームということで、採用難易度は非常に高かった。
「建築の現場をよく理解し、若手社員と一緒に事業を盛り上げてくれる人材の採用を提案。チームワークを重要視し、顧客満足を追求するS社の社風にマッチする幅広い年代の人材を探すこととなりました」(寺嶋氏)
そこで、寺嶋氏は要件にマッチしそうな人材をサーチし、アプローチを繰り返す。1名面接に進んだものの、社風や仕事の進め方が合わず、辞退されることとなる。
そしてある日、寺嶋氏は求職者データベースから、一級建築士と一級施工管理技士の資格、業界での豊富な経験を持ち、札幌へのUターンを希望しているK氏を見つける。早速面談を申し込み、転職理由や希望を丁寧にヒアリングした。
年齢やスキルだけではない、カルチャーフィットを考えた62歳のマッチング
K氏は大学の建築学科を卒業後、関東の建設会社や住宅設備など数社の転職を経て、60歳で定年退職。退職後はグループ会社で再雇用となったが、メンテナンス業務に物足りなさを感じ、大手メーカーグループの住宅会社に転職。住宅のアフターサポートを行う新規事業に携わり、やりがいを持って取り組んでいた。しかし、北海道に住む親の介護のため、Uターン転職を決めていた。
「K氏は面談で、技術サポートやメンテナンス業務、一級施工管理技士の資格を活かしたゼネコンの現場管理人の仕事には、やりがいを感じないと語っていました。K氏の『お客様に感謝され、現場に近い仕事をしたい』という仕事に対する考え方や真面目な性格が、S社の『お客様に感動を与えて、ファンになってもらいたい』という社風にマッチすると確信しました」(寺嶋氏)
60歳の定年退職時に転職活動で苦労したこともあり、K氏は北海道へのUターン転職に不安を感じていた。
「まずはS社の社風を伝え、リフォーム事業を建築のプロとしてサポートしてほしいとアピールしました」(寺嶋氏)
一方で、K氏の年齢的な部分を心配していたS社に対しても、「貴社の社風にマッチする人材なので、年齢だけを理由に門戸を閉ざさず、ぜひ会ってほしい」と提案する。
「面接でK氏が正直で素直な性格で、そのうえ強い気持ちを持っている人物だと分かり、採用したいと気持ちが固まったようです」(寺嶋氏)
さらに寺嶋氏は選考プロセスにおいても、全面フォローを行う。Uターン転職ということで、面接で北海道を訪れる際は、高額となる交通費の負担を減らすべく企業に交渉し、支給してもらった。面接時も同席してサポートを行っている。
「最終面接後は、事業部の役員とK氏の会食をセッティングし、面接で語られなかった本音や想いなどを引き出し、お互いのフィット感を感じてもらいました」(寺嶋氏)
寺嶋氏の全力サポートにより、K氏はS社に入社し、リフォーム事業の事業推進を務めることとなった。
入社後も応募者の活躍と事業推進支援に向けたフォローアップ
寺嶋氏は、入社後も面談を行い、サポートを続ける。入社2カ月後のフォロー面談では、仕事のボリュームが多く、どう処理していいかわからずパンク状態となっていたK氏を励まし、企業側に対してもフォローを行っている。
「建築の知識があり、真面目で人柄のいいK氏に仕事が集中していたようです。部材の発注や業者手配など、慣れない業務の進め方にも困っていました。不満や不安を伺った上で、慣れてくれば、効率化が図れるようになるから大丈夫とアドバイス。S社に対しては状況を説明し、業務のコントロールとメンタル面でのサポートを依頼しました」(寺嶋氏)
実際、入社4カ月後の面談では、大分慣れてきたというコメントをもらったという。
「今後は事業拡大に向けて、業務の効率化や組織作りなど、経営目線での業務遂行をしていただきたいと伝えました。技術者としての目線で考えていたそうなので、より視座を上げていただくようにアドバイスもしました」(寺嶋氏)
現在K氏は、現場の若手社員ともジェネレーションギャップを感じることなく接しながら、業務改革に取り組んでいる。企業側からも「来期の事業拡大に向けての貢献が期待されている」と、寺嶋氏は嬉しそうに語る。
「リフォーム業務は未経験にもかかわらず、K氏がむしゃらにチャレンジを続ける姿は職場の良い刺激となったようです。加えて、K氏の建築や施工管理の知見を取り入れられたことで、事業拡大の準備が動き出したようです」(寺嶋氏)
その後、S社の信頼を得た寺嶋氏は、求人票が出ていなくても、事業拡大の向けて必要だと思う人材はどんどん積極的に提案している。
「事業拡大に向けては営業系の強化も欠かせないと考え、札幌にUターン転職を望んでいたリフォーム営業の管理職をご提案したところ採用となり、入社が確定しました」(寺嶋氏)
寺嶋氏は今後も、経営課題を解決する人材採用支援に加え、人事制度の整備や人材育成、組織形成など、社外人事部のような立ち位置で伴走したサポートを継続していきたいと語る。
「人材紹介だけでなく、あらゆる人事領域の課題が解決できる『人事部代行』という存在になれるように、これからも成長していきたいと思います」(寺嶋氏)
ちなみに、北海道共創パートナーズを介した転職決定者の60%は50代~60代で平均年齢は51歳なのだという。最後にミドルシニア・シニア世代の転職サポートではどのようなことを行っているのか聞いてみた。ぜひ、参考にしてほしい。
「ミドルシニア・シニア世代の方の中には、ご自分のご経歴を演説してしまうケースもしばしば見受けられますので、面接のアドバイスはしっかり行うようにしています。また『前の会社ではこうだった』などの違和感を口に出してしまう方もいらっしゃいますので、入社後の立ち振る舞いについてもお話しするなどの入社フォローを行います。せっかくご縁を得て入社されたので、互いのボタンの掛け違いで早期離職にならないようにサポートしています」(寺嶋氏)
転職者・企業へのメッセージ
【転職者の方へ】
既存の求人だけでなく、北洋銀行の豊富なネットワークを活用して潜在的なニーズへの売込みも行っています。北海道で幹部として活躍したいとお考えの方のご相談をお待ちしております。
【企業様へ】
人材紹介に限らず、顧客に伴走するという理念のもと、経営課題を解決するために人材事業部、コンサル事業部、M&A事業部のリソースを活用した解決手法を提案します。管理職・役員クラスの採用を検討されている企業様は、ぜひご相談ください。
寺嶋聡二氏
株式会社北海道共創パートナーズ ディレクター 国家資格キャリアコンサルタント
南山大学卒業後、リース会社での営業を経験した後に外資系医療機器メーカーで営業に従事。2004年、リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。リクルーティングアドバイザー(RA)、RAマネージャー、キャリアアドバイザー(CA)を経験。2009年、リクルートキャリアコンサルティングに出向。大手企業の構造改革のサポートと再就職支援事業に従事。グロービス経営大学院でMBAを取得する。2014年、パーソルキャリア入社。東海エリアの両手型エグゼクティブサーチ事業を立ち上げる。2017年、日本人材機構に入社。翌年には子会社の北海道共創パートナーズへ出向となり、人材紹介事業を立ち上げる。2020年に日本人材機構の解散に伴って、北海道共創パートナーズへ転籍。「数字のための強引な仕事は絶対にしない」を信条とする。