今すぐ人材を採用しないと、工場の存続が危ぶまれる企業。市場にターゲット人材がほとんどいない中、スピーディーな社内連携で数日内に求職者とのマッチングを実現した。急に舞い込んだ緊急案件に、どのように対応しマッチングにつなげたのか。「GOOD AGENT AWARD 2022」ミドルシニア部門・特別賞を受賞した事例をご紹介したい。
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「電気主任技術者を1カ月以内に採用」という高難易度の求人に対応
2022年1月、建設・プラント領域を担当する時吉佑輔氏のもとに、建材メーカーA社から緊急の相談が舞い込んだ。千葉県にある工場の、第二種電気主任技術者が、健康上の理由で急きょ2月末に退職することになり、代わりとなる人材を早急に採用したいという要望だった。
工場運営には、選任の電気主任技術者を1名配置する必要がある。欠員補充をしないことには、3月以降の工場の操業が危ぶまれる状況にあった。
「このような専門職の募集の場合、半年以上の猶予を持ってじっくり探すことが多いのですが、A社の場合はわずか1カ月しか猶予がありません。先方様は、長期雇用を見据えて『50歳までの資格保有者で、千葉の工場に通える近隣の人』を求めていましたが、そもそも電気主任技術者の資格保有者は、転職マーケットにごくわずかしかいない状態。正直、相当難易度が高いと思いました」(時吉氏)
緊急度と難易度の高さを受け、時吉氏はすぐに行動。その日の夕方には自社の求人メディアに求人情報を掲載し、社内に「緊急案件」として求人内容を共有して情報を募った。
即日の社内共有→数日内には有資格者との面接をセッティング
それに即反応したのが、化学領域を担当する渥美幸大氏だった。渥美氏は当時、50代後半のBさんの転職サポートを行っていた。
「ある再生可能エネルギー関連の発電設備で電気主任技術者として働いていましたが、その案件自体がなくなることが決定。Bさんはその案件での採用だったため、雇用契約終了を余儀なくされ、1月末の退職日が迫っている状態にありました」(渥美氏)
Bさんは第二種電気主任技術者の資格を保有しており、現場での経験も豊富。しかし、電気主任技術者は1工場1人必ず必要ではあるものの、「1人いればいい」ことから欠員補充がほとんど。なかなかぴったりの求人が見つからずにいた。
そして、Bさんの現年収は約850万円。その年収を確保しながら、60歳以降のキャリアを維持したいとの要望にも応えられず、悩んでいたという。
「そんなときにA社の求人を知り、ビビっときましたね。年齢の条件には合いませんが、企業の緊急度とBさんのドンピシャのキャリアを考えれば、可能性は大いにあると感じました。Bさん側のネックは、勤務地。Bさんは神奈川県西部在住で、千葉への通勤は現実的ではありません。そして、奥様との余暇の時間を大切にしたいとの思いも持っておられました。ただ、もしも平日は千葉で働き、週末に自宅に戻るという働き方が叶うのであれば、検討の余地はあるのではないか?と判断。Bさんにも応募の了承を得ることができました」(渥美氏)
その日中に渥美氏から連絡を受け、時吉氏は「道が開けた!」と感じたという。マーケットに求職者がほとんど存在しない中、資格を持つBさんのキャリアは貴重。50代後半であっても提案すべきだと考え、即企業に一報を入れた。
A社も、当初は年齢に不安を感じていたものの、Bさんの経験そのものは高く評価。「まずは会ってみたい」と、数日後にはWeb面接が実現した。
コンサルタントの働きかけで年収&各種手当の上乗せに成功
急きょ行われた面接は、極めてスムーズに進んだという。時吉氏は面接時をこう振り返る。
「A社はもともと、Bさんの資格や経験を高く評価していましたが、『面接の場でBさんが自身の経験をどう活かせるのか、当社でどう活躍できると考えているのかを伝えてくれたことで一気に採用したいとの思いが高まった』とのこと。Bさんに入社してもらえるよう力を貸してほしい、とまで言っていただけました」(時吉氏)
そしてBさん側も面接を通して、A社で働く魅力を存分に感じたという。
「面接の場で、現状の組織課題ややってほしいことなど、さまざまな要望を受けたそうです。『予算が限られる中、コストを抑えながら工場を運営していく必要がある』との現状共有も受けたと言いますが、Bさんはどの課題にも実際に臨んだ経験があり、自分ならできると確信したとのこと。自分が活かせる場があることにやりがいを覚え、ぜひここで働きたいと言ってくださいました」(渥美氏)
懸念された年収については、当初予定していた額から上乗せして提示。加えて、時吉氏がA社に掛け合い、特例として単身赴任手当の付与と、工場近くの借り上げ社宅を提供。結果的に、現職とほぼ同水準の収入を実現した。
当時を振り返り、渥美氏はこう話す。
「実はBさんには、A社と並行してある再生エネルギー会社の求人もご紹介し、内定直前まで進んでいました。現職とほぼ同じ領域・仕事内容であり、経験をフルに活かせる環境でしたが、A社の経営課題に触れ、『自分に期待してくれている同社に対し、自分の手で課題を解決し、会社と事業の発展に貢献したい』との思いが強まり、A社を選んでくださいました」(渥美氏)
企業と求職者、そして社会課題改善の「三方良し」を実現できた
Bさんは2月下旬にA社に入社。2月末までに前任から引き継ぎも受け、電気主任技術者として力を発揮している。
千葉工場の選任の電気主任技術者としての採用だったが、Bさんの活躍ぶりが評価され、他エリアにある2工場も含め、全3工場の設備投資計画にも関わることになったとのこと。A社からは「70歳まで勤めてほしい」との要望も受けており、腰を据えて課題解決に取り組めることに喜びを感じているという。
「今回の事例を通して、スピード感の大切さを学びました。緊急度の高さを受けて即行動し、社内共有できたことで、難易度の高いマッチングを一気に進めることができました。市場感の共有を徹底したことも、功を奏したと思います。電気主任技術者が転職市場に極めて少ないことに加え、過去に同業他社が対象年齢、エリアを広げて採用に成功した事例を共有したことで、年齢やエリアに関する企業側の考えを変えることができ、今回のマッチングにつながったと思います」(時吉氏)
「転職エージェントの介在価値の大きさに、改めて気づかされた事例でした。われわれは常に企業の事業運営、求職者のキャリアの双方良しを考え、行動していますが、今回はシニアのキャリア実現という社会課題の改善を加えた『三方良し』が実現できました。難易度の高い案件でも決してあきらめず、エージェントとしてどう価値を生み出すかを考え、行動し続ける姿勢が大事だと再認識できました」(渥美氏)
転職者・企業へのメッセージ
【転職者の方へ】
当社の理念は「関わった人全てをハッピーに」。コンサルタント全員が求職者一人ひとりの未来まで考え、その人にとってどういう選択肢が最良なのかを考え抜いています。転職活動は孤独で大変ですが、一人で抱え込まず、ぜひわれわれのような転職エージェントに頼ってほしいと願っています。
【企業様へ】
当社は領域ごとに専門のサポートチームを用意しており、その中で企業・求職者双方を担当しています。担当領域の市場動向や求職者の思いを知り尽くしているからこそ、企業の課題解決に精度高く、スピーディーに対応できるのが強み。もちろん、他のチームとの情報共有や連携も行っているので、さまざまなニーズに対応することが可能です。
渥美幸大氏
株式会社クイック
化学業界専門チーム・マネージャー。大学卒業後、大手電機メーカー代理店での営業を経験した後、人材紹介業界(株式会社クイック・東証プライム)へ転身。製造業、インフラ業界、自動車業界、医療業界、建設・プラント業界などを約13年間担当。コンサルタントとして転職実現累計800名超の転職をサポート。現在は、株式会社クイックの化学業界専門チームにおけるマネージャーとして、大手化学メーカー様を中心とした「企業採用支援」と、ミドル層からエグゼクティブ層の方の「求職者支援」の両面を担当。
時吉佑輔氏
株式会社クイック
建設・プラントチーム・リクルーティングアドバイザー。大学卒業後、現職(株式会社クイック・東証プライム)に入社。入社から現在まで約3年間、建設・プラント・不動産・エネルギー・インフラ業界の専門コンサルタントとして従事。「企業採用支援」「求職者支援」両面のご転職サポートを行うかたわら、述べ30~40程度の企業様の事業・採用課題改善を担当。年間で常時50~60名程度の支援実績を誇る。顧客深耕に強みがあり、お付き合いの色濃い企業様では年間5~10名ほどの人材支援に寄与。「一瞬の顧客満足」だけではなく、中長期的に満足頂けるようなキャリアサポートを心掛け日々邁進中。