大手メーカーの子会社であり、製品の要素技術から製造・開発・試験までのものづくりを担う開発部隊S社。開発子会社のためネームバリューは低いが、世界最先端技術を持ち、求めるエンジニアスペックは非常に高い。S社の採用支援とともに、S社への内定を勝ち取ったエンジニアO氏の転職活動に寄り添い、両者をマッチングさせたメイテックネクストの平澤岳彦氏と中村有希氏。「GOOD AGENT AWARD 2022 特別賞」を受賞したその取り組みと成果を紹介する。
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大手メーカー子会社のブランディング施策で、エンジニアの応募意欲を喚起
大手メーカーの子会社と聞くと、世間一般的には「親会社の下請け製造の仕事しかなさそう」「給与・待遇は親会社より低そう」「親会社の言いなりなんじゃないか」といったイメージがあるかもしれない。
だが、S社はグループ企業の最先端製品のものづくりを担う開発・生産部隊だ。海外拠点を持ち、グローバル市場にも多彩に製品開発や量産を展開している。給与や待遇なども親会社と変わらない。
「親会社と同様、もしくはそれ以上の技術力や即戦力となる経験、ものづくりに対する高い意欲が求められます。しかしネームバリューの低さから、優秀なエンジニアの確保には苦戦していました」(平澤氏)
そう語るのは、メイテックネクストで求人企業を担当する平澤岳彦だ。S社は2019年から担当しており、エンジニアの採用戦略についても提案・コンサルティングを行っている。
「採用ブランディングの一貫として、親会社の製品開発にどのように携わっているのか、開発現場のカルチャーはどうなのかなど、各部門にヒアリングを行いました。これまでS社が出していなかった明確で具体的な情報を引き出し、開示できる情報をもとに、求人記載事項の校正を実施、公式HPでも展開。また企業説明会においても、企業よりお伝えすべきポイントの整理についてアドバイス、協業させていただきました」(平澤氏)
その結果、S社のブランディングと知名度は上り、全エージェントから紹介される候補者の数も2倍以上となった。
S社の仕事や風土に魅かれて応募し、入社を決めたエンジニアが今回紹介するO氏である。O氏は製品の製品設計や要素技術開発、CAE解析などのキャリアを持つ30代前半のエンジニアで、S社が求める経験・スキルを兼ね備えていた。
30代前半エンジニアの転職目標をサポートし、信頼関係を構築
O氏の転職活動をサポートしていたのが、メイテックネクストのキャリアアドバイザー中村有希氏である。中村氏は、当時のことをこう振り返る。
「前職では年功序列や上司の印象による評価が根強く、エンジニアとしての実力や成果は評価されないと、強い不満をお持ちでした。入社後、複数の部署を経験し、都度新たな技術を学び、経験を重ねてきたものの、一貫して同じ上司のもとで仕事をしている人と比較すると評価に繋がりにくいと感じていたそうです」(中村氏)
中村氏は、自分の能力や創意工夫が評価されていないことを悔しがるO氏のフラストレーションを一旦受け止め、慮った。その心情を理解した上で、前向きに転職活動を進められるように促すこととしたのだ。
「怒りや憤りなどのネガティブな感情が、転職活動のモチベーションになっている状況でした。怒りを転職の原動力にするのではなく、何に憤りを感じているのか、なぜ今の環境にギャップを感じているのか。自分で考えてもらえるように質問を投げ、ご本人が自分自身で整理できるように心がけました」(中村氏)
中村氏のサポートによって、どのように働きたいのか、どんな社風・制度がある会社が自分にとって最適なのか、ゴール地点に求めることが明確にできたO氏。転職先の目標設定を中村氏とともに進めていった。
「技術が好き、新しい技術を学びたい、家庭も大切にしたいという希望から、『ハイレベルでものづくりが好きな技術者が集まる組織』『実力次第で若手も大きな仕事を任され、待遇に反映される組織』『ワークライフバランスが良い』という転職先の目標を設定しました」(中村氏)
さらに中村氏は、「10年、20年後を見据えた場合、今後どのような技術を習得すると、市場価値の高い人材になれるか」を目標に加えることをアドバイス。信頼性を構築した上で、中村氏はO氏が希望する社風やキャリア形成の観点から、候補企業を紹介していった。
平澤氏からS社の社風や求める人材像、キャリア支援制度などを聞いていた中村氏は、O氏にS社を推薦する。
「S社の好奇心高くチャレンジする社風やものづくりに対する姿勢、高い技術力を持つエンジニアが多く、今後も学び続けられる環境があることに興味を示していただき、企業側にご紹介する運びとなりました」(中村氏)
5年後、10年後までを考えた提案とサポートを実現
S社との面接は順調に進み、転職が現実味を帯びてきた。だが、O氏は首都圏への転職に懸念を示すようになる。
「第一子が生まれ、奥様は初めての子育てに奮闘する中、安心できる地元を離れたくないというお気持ちがあったようです。O氏は奥様が不安を抱えたまま転職することに懸念を示されるようになりました」(中村氏)
そこで、O氏夫婦の不安を払拭すべく、同僚の子育て経験豊富なアドバイザーに「首都圏での子育て環境や奥様の安心する接し方」を伝授してもらった。さらにS社の人事担当者とO氏夫婦との3社面談も設定した。
「たまたまS社の人事の方がO氏の奥様と同郷だったので、子育て・住環境、就業環境をフォローいただきました。育児サポートのためにフルリモート勤務できることも安心材料となり、最終的にご夫婦共に納得してもらい、入社が決定しました。年収も前職よりかなりアップすることができました」(中村氏)
S社からは、「採用PRだけではなく、入社者のキャリア形成に合わせた育成プランや転居、ワークライフバランスなどのアフターフォローなども、よい経験と気づきをもらえた」と感謝の意を述べてもらったという。
「S社は30代前半の世代が少ないため、5年後には次期マネジメント不足に陥るリスクが高い状況です。社風や技術力に加えて、フルリモート勤務を含めたD&Iの取り組みは、育児世代に向けた働き方改革の起点となる好事例であり、波及効果も期待されます」(平澤氏)
O氏も中村氏に対して、5年10年後を見据えたキャリア形成を考えるきっかけをくれたことを感謝している。
「SDGs目標の達成に向けて、ESG経営への取り組みなど、製造業を取り巻く環境は変化しています。そんな中で技術者に要求される役割や技術も変化していくので、今後もトレンドを押さえながら、5年10年後を考えたサポートをしていきたいと思います」(中村氏)
転職者・企業へのメッセージ
【転職者の方へ】
キャリアアドバイザーのほとんどは元技術者のため、業界の市場動向や採用どうこうについては詳しくご説明やアドバイスができます。今後どのようなキャリア形成をしていきたのか、親身になって相談に乗ってくれるアドバイザーばかりですので、ぜひお気軽にお声がけください。
【企業様へ】
例えば3年後の経営課題や事業課題のフェーズなど、ぜひご相談いただきたい。我々はお客様が持っている技術的な強みを理解したコンサルティングを得意としているので、採用の検討フェーズ、課題発生フェーズでもお気軽にご相談いただきたいと思います。
平澤岳彦氏
株式会社メイテックネクスト 名古屋支社 営業グループ マネジャー
2011年、JTBに入社。法人営業、医療機関、宗教法人への新規営業を中心とした法人旅行の企画提案から添乗まで幅広い領域で活躍。経営インパクトのある人材、中でもエンジニアに特化している人材事業に携わりたいと考え、2015年、メイテックネクストに入社。現在は名古屋支社のマネージャーを務めながら、自動車・化学・エレクトロニクス・総合家電など、幅広い業界・企業の採用コンサルティングを行っている。
中村有希氏
株式会社メイテックネクスト ケミカルグループ キャリアアドバイザー
学生時代は無機化学を専攻。卒業後は食品メーカーでの分析業務を経て、2017年にメイテックネクストへ入社。化学系をメインに、研究から開発まで幅広い領域の技術者を担当。企業側と求職者が相互にWinWinになるような関係の転職をサポートしている。