20歳、中卒、転職回数3回。
求職者の高い成長意欲と吸収力を見出し、コンサルティング業界への転身に成功
既存のサービス展開による企業成長に限界があるとし、社内に新組織を設立しようと踏み出した世界最大級の経営コンサルティング会社。そこに、中卒20歳の男性が入社した。この出会いを創出したのは、コンサルティング業界に強い株式会社ムービン・ストラテジック・キャリアの近藤義男氏。「成長意欲の強い個人・企業を応援したい」という思いのもと行ったのは、どのような支援だったのか。
経歴的には圧倒的に不利。「転職支援は難しいかもしれない…」
「20歳、中卒、経験社数4社。」そんな求職者Nさんからの転職相談登録が、近藤氏のもとに届いたのが今回の転職支援の始まりだった。
Nさんは、幼い頃から学んできたプログラミング技術を活かし、米国証券取引委員会やNASAの観測衛星データベースなど200以上のシステムに対して脆弱性を報告したり、様々な外部フォーラムで講演したりといった実績を持つ人物。経済的事由により高等工業専門学校を中退後、大手インターネットメディア企業など4社で実務経験を重ねてきた。
かねてより、彼のなかでは、「これまでの経験から得たサイバー空間におけるセキュリティ技術のインテリジェンスをより多くの企業に対して提供したい」という熱い思いがあった。しかし、当時在籍していた企業には実現できる環境がなく、ジレンマを抱えていたという。
そこで、Nさんが希望したのは、コンサルティング業界への転職だった。自身の知見を多くの企業に提供できるのではないか、という期待感からの発想である。ところが、年齢や学歴、経験社数がネックとなり、なかなか話がよい方向に進むことはなかった。そんな経緯があり、同業界に強い近藤氏の所属する転職エージェント会社への登録に辿り着いたのだ。
近藤氏は、最初にNさんの情報を得た際、「年齢や学歴、経験社数から見て、正直なところ転職支援は難しいかもしれない」と感じた。それは、長年にわたる転職エージェント経験、それもコンサルティング業界に特化した転職エージェントとしての、率直な第一印象だった。とはいえ、コンサルティング業界への転職に対するNさんの強い熱意を感じたのもまた事実。近藤氏は、Nさんからの転職相談登録を受け、メールでやり取りをしたその日のうちに複数のコンサルティング会社へ打診し、面談のアポイント調整を始めた。
「成長意欲の高い個人、企業を応援したい」との思いに突き動かされる
そのとき、近藤氏が打診した会社の一つがW社だった。W社は、クライアントの持続的かつ確実な成長を支援するコンサルティングサービスを展開するのはもちろんのこと、社会課題の解決と新産業の創造で社会全体を支援する世界最大級の経営コンサルティング会社だ。
近藤氏は、W社がクライアントの急成長を促す、既成概念に捕われない先端的な提案を行っていくための新組織設立を計画していることを思い出した。また、その新組織では、サイバーセキュリティ領域の強化が必要となるということも。しかし、新組織に関する情報はまだ公になっておらず、明確なジョブディスクリプションや求人票すら存在しない段階であった。では、なぜ近藤氏は、この情報を知っていたのか。
「実は、通常の商談の際に、たまたまチラホラと小耳に挟んでいたんですよ。『最近、こういう話があるんだよね』という程度に。」
近藤氏は、普段からクライアントや求職者と、仕事の枠を越えた付き合いをしている。プライベートで飲みに行ったり、結婚式に呼ばれたりといった密な関係に発展することも少なくない。そのなかで、本来の仕事に関係のない相談事や、雑談もたびたび交わされるようになっていた。といっても、近藤氏があえてこうしたコミュニケーションを心がけているというわけではない。
「人生や仕事を前向きに捉えてがんばっている求職者や、新しいことにチャレンジしようと努力しているクライアントに出会うと、ものすごく応援したくなるんですよ。結果的に、仕事を越えた関係性が自然と築かれていくのです。」
そんな近藤氏だからこそ、W社の新組織設立というチャレンジについて話を聞いた際、「担当者として、ぜひ支援したい」と強く思ったのだ。そうでなければ、Nさんの転職相談登録があった際、打診先候補としてW社が挙がることさえなかったかもしれない。今回の人材紹介が、W社のチャレンジの一助となる可能性に賭けてみよう、という近藤氏の決意から、出会いが創出されたのだ。
近藤氏がW社にNさんの件を打診したところ、「面白そうですね! ぜひ、カジュアルな感じで会ってみましょう」と、W社担当者から回答があった。こうして、NさんとW社とのカジュアル面談実施が決まったのだ。
コンサルティング会社に合う人材に…服装、立ち居振る舞いまで指導
ところが、近藤氏は、カジュアル面談前に初めてNさんと会ったとき、驚くべき光景を目にすることとなる。Nさんは、真っ黒なワイシャツに真っ赤なネクタイという出で立ちで現れたのだ。「このままではコンサルタントらしくはないな…」と感じた近藤氏は、そこから自身の経験をフルに発揮し、コンサルティング会社にふさわしい服装や立ち居振る舞い、想定される質問への対応などをNさんにアドバイスしていった。
最も大変だったのは、Nさんの高い要望への対応だった。Nさんは中卒で、10代の頃から社会人経験があり、とりわけサイバーセキュリティ領域の仕事に関して自負がある。それがゆえ、年収やランクなどに関する主張が強いのだ。しかし、コンサルティング業界はロジックに基づいた考え方が不可欠な世界。近藤氏は、「なるほど、Nさんの気持ちはよくわかります」と共感しつつも、「とはいえ、高い年収を要望するなら、それに適する能力や貢献度をしっかり論理立てて説明できなくてはなりません。現実的に考えましょう」とアドバイスした。また、クライアントに対しても、「評価に合った年収やランクを検討していただけるようお願いします」と伝えておいた。
なぜ、近藤氏はこんなにもNさんに寄り添った支援を行ったのか。その理由は、Nさん自身の行動にあった。
「例えば、服装についてアドバイスすれば、すぐにスーツやネクタイを購入し、面談に必要な情報があれば、すぐに収集してドキュメント化してくる。そういうNさんの熱意ある行動を見て、非常に強い成長意欲や吸収力を感じたのです。大事なのは学歴や年齢ではない、と心底思い知らされました。それで、必ずNさんの転職を成功させなければ、と火がついたのです。」
入社から9カ月、わずか21歳で新組織を率いるマネージャーに
W社の選考は、カジュアル面談から始まり、2度にわたるパートナーとの面談、最終面接と滞りなく行われた。そのなかで、Nさんは近藤氏のアドバイスどおり、「この会社で自分は何ができるか、顧客にどのように貢献ができるか」を論理的かつ積極的に伝えた。そのまっすぐな姿勢がW社に刺さり、見事合格。転職相談登録から1か月弱で採用が決まった。
Nさんは入社後、自身のもつサイバー空間におけるセキュリティ技術のインテリジェンスを発揮し、わずか9か月でマネージャーに昇格。21歳という若さで、異例の躍進を遂げている。その活躍ぶりは、メディアにも取り上げられるほどだ。
「入社後も何度かNさんの様子を伺っていますが、そのたびに、部門内外のパートナーや、社外の取引先などからも彼を大絶賛するコメントを聞いています。『若いが本当にしっかりしている』『唯一無二の知見をもつ存在として引っ張りダコ』といった素晴らしい評価がなされているのです」と近藤氏。Nさん本人からは、「仕事がめちゃくちゃ楽しい。近藤さんのおかげです」という感謝の声が届いているという。
W社は現在、Nさんを中心に新組織のチームを徐々に大きくしており、近藤氏を通じても新たに1名採用。サイバーセキュリティ領域の強化も、着実に進めている。
「今回のマッチングは、企業の人事採用にも新風を吹き込むことができたと思います。実力があれば、年齢や学歴は関係ない。これから新しいチャレンジに伴い、人材を必要とする多くの企業においても、既成概念を大きく揺さぶる事例となったのではないでしょうか。」
近藤義男さん
株式会社ムービン・ストラテジック・キャリア コンサルタント
大学卒業後、大手総合人材サービス企業へ入社。人材紹介サービス部門に配属され、主にコンサルティング・IT・インターネット業界を中心とした転職支援、採用支援を5年ほど経験。その後、管理職としてマネジメントや新規部署立ち上げ、新規事業開発など、現場以外の様々な業務に携わった。そのなかで、「自分は現場の仕事が好きなのだ」ということにあらためて気づき、(株)ムービン・ストラテジック・キャリアに転職。人材エージェント経験は17年目。