「実務経験」とは?企業が求める意図やアピールするコツ、実務経験がない場合の対処法

採用面接の風景

転職活動では「実務経験」を問われることがあります。この場合の実務経験とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか。企業が実務経験を求める意図や実務経験と言える範囲、実務経験を効果的にアピールする方法などを、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職活動における「実務経験」の定義

求人に記載されている実務経験とは何を意味するのでしょうか。その定義について解説します。

求人に記載されている「実務経験」とは

求人に記載されている実務経験とは、実際にその仕事に携わった経験のことを指します。ただし、求人に「実務経験○年以上」と記載があっても、その年数を満たしていないと応募ができないわけではありません。年数はあくまでも目安と考えていいでしょう。実務経験の年数を満たしていなくとも、経験や実績、役割などから採用に至るケースも見られます。

企業が実務経験を求める意図

企業が求人で実務経験を求める意図の一つに、「即戦力の確保」が挙げられます。中途採用の場合、新卒採用のようなゼロからの育成は時間とコストがかかるため、極力避けたいと考える企業は少なくありません。特に管理職や専門職などのハイクラス人材の採用においては、採用後にできるだけ早く事業や組織に貢献してくれる人材を求められることが多く、より実務経験が重視されます。

「実務経験」と言える範囲

募集要項に合致した業務内容であれば、正社員、派遣社員、インターン、業務委託・フリーランスなどの雇用形態を問わず、基本的には実務経験と言えるでしょう。ただし中途採用では、実際に経験してきた内容や質、役割、他の経験との掛け合わせ、組織内でのバランスなども考慮して判断されるため、単純に実務経験の有無や年数だけが判断基準ではないことも理解しておきましょう。

例えば、「組織的の核となるポジションでの募集のため、同規模の企業や同じ事業フェーズでのマネジャー以上の実務経験○年以上に絞りたい」「戦略策定が主業務の募集につき、過去に○○領域の上流・企画部分の実務経験が○年程度か同等と見なせる経験さえあれば、雇用形態は問わない」「採用活動が難航しているため、実務経験○年以上の募集から方針転換し、雇用形態を問わず少しでも実務経験があれば採用後に育成する」など、その求人の募集背景によって、企業が意図する実務経験の意味は異なってきます。

また、その仕事にブランクがある場合でも、募集要項に該当する経験であれば実務経験とみなすケースもあります。その場合、経験内容や経歴とともに、その仕事から離れていた期間や理由なども選考の判断材料になります。

「実務経験」を効果的にアピールするコツ

実務経験をアピールする場合、履歴書や職務経歴書の自己PR欄を使用することが有効です。アピールのコツについて3つご紹介します。

数字やデータを交えて明確に実務内容を伝える

実務経験を伝える場合は、具体的な数字やデータを用いてアピールすることが大切です。
例えば、営業であれば営業実績(売上目標○%アップ達成)や表彰経験(月間MVP○回獲得)など、エンジニアであれば担当したプロジェクトやプロダクトの規模(プロジェクト人数規模、担当役割、担当顧客層、ユーザー数)など、人事であれば担当企画の成果(○○制度の導入でエンゲージメントスコア〇%アップ)など、実務内容を明確に伝えることで説得力が増します。

企業の求める経験とマッチしていることを的確に伝える

求人の募集要項などに使われている「言葉」に注目し、意識して伝えると良いでしょう。例えば、営業の募集要項に「エンタープライズ向け営業経験○年」と記載されている場合は「上場企業を中心に年商○億円以上の大手企業○社を担当」と伝えるなど、募集内容と実務経験がマッチしていることを的確に伝えることができます。

採用担当者が「実務経験」をイメージできるように伝える

自己PRを記載する際は、エピソード、具体例、担当プロジェクトなどを、STAR法(状況→課題→行動→成果)やPREP法(結論の要点→理由→具体例→結論)を意識して伝えるようにしましょう。プロセスや解決策など実務経験の内容をわかりやすく伝えることで、入社後にどのような活躍が期待できるか、採用担当者がイメージしやすくなります。

「実務経験」がない場合の対処法

希望職種の実務経験がない場合や求人に記載されている年数に満たない場合の対処法をご紹介します。

応募企業に適した経験・スキルや資格がないか確認する

自身の経験・スキルの中に、応募企業が求める実務経験との類似性や接点がないか探してみましょう。例えば、「EC業界での実務経験はないが、個人向けの接客や営業経験があるので、カスタマーサポートに活かせる可能性がある」「事業会社での経営企画の実務経験はないが、コンサルタントとしてカウンターパートの経営企画の方々と仕事をしてきた経験はある」「マーケティング関連の実務経験はないが、営業部門長としてマーケティング部門も管掌してきた経験がある」というようなことは、実務経験を補完するアピールポイントになり得ます。また、副業などによる類似経験や、応募企業の業務に適した資格などもあれば追記しても良いでしょう。

求職者側から意欲的な提案をする

実務経験がなかったり、企業が求める年数に足りなかったりする場合は、単に応募するだけでは「募集要件を満たしていない」と判断されるケースも少なくありません。応募企業や事業について詳細に調べていることを伝えたり、入社後の活躍イメージを提案したりするなど、入社意欲や希望職種への熱意が伝わる志望動機書を作成して、実務経験の足りない部分を補うことも一つの選択肢です。

転職エージェントやスカウトサービスの担当者に相談する

求人の応募要件に実務経験○年とあっても、実際はそれより少ない経験年数の応募者も書類選考を通過するなど、企業によって実務経験の年数について重視している度合いは異なるものです。転職エージェントやスカウトサービスを利用している場合は、担当者に相談して、企業が求めている実務経験のレベル感を確認してみることも一案です。

また転職エージェントやスカウトサービスの担当者からは、求職者の経験・スキルを踏まえた職務経歴書の書き方や面接でのアピール方法などのアドバイスをしてもらうことも可能です。まずは一度相談してみてはいかがでしょうか。

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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。