【2023年度上半期】医療・医薬・バイオ業界の転職市場は今後どうなる？

医療・医薬・バイオ業界の2023年度上半期の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2023年度上半期の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひ参考にしてください。

1.【医療・医薬・バイオ業界】業界・企業側の動き

医療業界全体の求人はコロナ禍前と比較しても数が多く、MR以外は増加傾向にあります。

また、求人内容には変化が見られます。一つは、MSL（※1）のニーズの増加です。MR減少の理由でもありますが、近年の製薬業界では新薬を開発して拡販する創薬より、既存の薬の活用度を高め、価値を向上させていく育薬方向へシフトしています。その活動を担うMSLが求められています。MSL経験者以外で採用を強化しているのは、研究開発や学術の経験者をはじめ、理系の修士号・博士号を持つCRA（※2）など。疾患領域が異なっていても採用対象とする企業もあります。また、CSO（※3）もコントラクトMSL組織を拡大しており、文系出身者が採用された事例もあります。非常にレアなケースですが、それだけMSLへのニーズがひっ迫している状況をうかがうことができます。

一方、研究職採用においても変化が見られます。創薬はこれまで低分子医薬品が中心でしたが、抗体医薬品が増加。再生医療分野も伸びています。バイオ医薬品や再生医療に関わる経験を持つ人が求められています。

新たなトレンドとして、医療×DXを担う「ヘルステック」企業の動向にも注目です。高齢化に伴う医療・介護費の増大を抑制するため、「予防医療」「健康管理」が重視されています。その実現を目指すヘルステック企業が営業・マーケティングを募集。医療機器の営業経験者が採用に至るケースが出てきています。選考で評価されるのは、「人間関係構築力」や「粘り強さ」などではなく「ロジカルシンキング」です。

2.【医療・医薬・バイオ業界】求職者側の動き

業界内の転職においては、製薬であればパイプラインが豊富な企業を希望する人が多いです。医療機器も同様ですが、治療用アプリなどのデジタル医療機器を手がけるスタートアップ・ベンチャー企業などは「最先端の製品に携わりたい」という志向を持つ求職者に人気です。

MRは将来のキャリアを考え、異業界への転職を図る人が多くみられます。転職先としては、医療機器、医療機関向けの経営・承継コンサルティング、ヘルステック、シンクタンクなどが希望候補に挙がりますが、年収がネックとなり現職にとどまるケースも少なくありません。一方、MRを続けたい人は、プライマリー領域からオンコロジー領域・希少疾患領域への転職を希望するも、ハードルは高い状況です。

MRや医療機器営業は、「転勤」を拒む人も増えています。トップメーカーから内定を得ても、転勤の可能性があれば辞退するケースも見られます。志向の変化を察知してか、大手医療機器メーカーからは「初任地の希望を叶えられる」という求人案件も出てきています。

現職がCRO（※4）の人々は、以前のように製薬メーカーへの転職を目指すのではなく、自身のキャリアを広げるため異業界を目指す人が増えてきました。一方、子育て中の働く個人のCROへの転職は増えています。臨床開発業務がリモートで行えるようになったほか、フレックス制度も充実し、育児との両立がしやすくなりました。パートナーの転勤などで地方に移住しても、東京のCROでフルリモート勤務をすることが可能になっています。

※1 MSL：Medical Science Liaison（メディカル・サイエンス・リエゾン） KOL（※5）に対して、医学・科学的なエビデンスや高度な専門知識を基に、医薬品の情報提供を支援する職種
※2 CRA：Clinical Research Associate（クリニカル・リサーチ・アソシエイト） 臨床開発モニター
※3 CSO：Contract Sales Organization（コントラクト・セールス・オーガナイゼーション） 医薬品販売業務受託機関
※4 CRO：Contract Research Organization（コントラクト・リサーチ・オーガナイゼーション）医薬品開発業務受託機関
※5 KOL：Key Opinion Leader（キー・オピニオン・リーダー） 製薬企業の販売促進に影響力を持つ医師などの専門家

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