【2023年度上半期】教育業界の転職市場は今後どうなる?

教育業界の2023年度上半期の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2023年度上半期の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひ参考にしてください。

教育業界の2023年度上半期の転職市場の展望を一言でいうと

教室長の採用は堅調。マーケティング・Web・映像関連の人材ニーズも増加傾向。
異業界出身者は「教育理念」で企業を選択。ただし「働き方」への懸念は根強い。

1.【教育業界】業界・企業側の動き

教育業界の求人数は昨年と比較して大きな増減はなく、横ばいの状態です。個別指導スタイルの塾チェーンでは教室数を増やしていく方針で、年間数十人規模の教室長採用を継続する企業もあります。

教室長採用のメインターゲットとなっているのは、飲食・小売・アパレルなどの店舗マネジメント経験者です。数値管理とスタッフマネジメントの両軸を手がけてきた人を求めています。一部ではマネジメント経験を持つ営業経験者も対象としています。

最近の傾向としては、教室長だけでなく本社業務の求人案件が増えています。プログラミング学習や英語学習にも注力しており、その認知度アップ戦略を担うブランドマーケティングのポジションを募集しています。

また、保護者向けサービスやサブスクリプション型サービスなど、既存のWebサービスの拡充・コンバージョンアップを図るため、企画・推進するWebディレクターの求人も少しずつ増えています。

映像授業の拡充にあたり、映像クリエイターのニーズもあります。最近では、大手総合教育企業がテレビのキー局の連結子会社となったニュースが注目されています。この提携が象徴するように、教育業界では映像コンテンツの活用も広がっていくでしょう。

少子化が進む中、教育業界のマーケットには広がりが少ないと捉える人もいるようです。しかし、子ども一人あたりにかける教育費は増加傾向にあります。従来型の学習塾や受験対策校にとどまらず、先に挙げたプログラミングや英語など、学習テーマは拡大。さらに、学習にとどまらず、幅広い教育の機会提供に取り組む企業は、今後も成長が期待できるでしょう。また、「リスキリング」というワードが注目を集める中、社会人向け教育のニーズも高まることが予測されます。こうした市場拡大に伴い、新たな採用ポジションが生まれてくる可能性があります。

2.【教育業界】求職者側の動き

学習内容・対象年齢層・教育手法など、希望に合うブランドに携わることを求め、同業他社から転職する人も一定数見られます。しかし、多くは教育業界未経験者が採用されています。「子育てをするようになって、本質的な教育を広めることの重要性に気付いた」と、異業種から教育業界へ転職する人も見られます。このような求職者は「教育理念」を重視して企業を選ぶため、企業としては、自社の理念をしっかりと発信することが人材獲得の有効策と言えそうです。

教室長の求人に興味を抱きつつも決断に迷う求職者は、多くの場合、「土日休みではない」「勤務が夜間に及ぶ」といった働き方の面を懸念しています。とはいえ、午後からの勤務が中心であるため、「子どもを保育園に送り、その後に家事を済ませられる」など、午前の時間を自由に使えることにメリットを感じる人もいます。

勤務時間や休日を懸念する人も、「教室長を経験後、本社スタッフに異動するキャリアパスもある」と聞くと、入社の決断に至ることもあります。本社スタッフであれば、週何日かのリモートワークも可能です。企業は、入社後のキャリアの可能性を伝えることで、働き方への懸念の払拭につなげると良いでしょう。

教育業界への転職者数の推移

2023年度上半期のそのほかの業界の動向について知りたい方は、こちらを参考にしてください。
【2023年度上半期】転職市場の動向|17業界コロナ禍後の中途採用・転職活動の最新状況を解説

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大庭成瑛

新卒で大手食品メーカーに入社。リクルートキャリア(現リクルート)に入社後、建設・不動産専門職のキャリアアドバイザー、大手コンシューマーサービス企業の法人営業を経験。多様なクライアントの採用支援に携わる