
仕事をしていると、何かしらの不満を感じることがあるでしょう。不満を抱えたままの状態では、モチベーションを高く保てず、パフォーマンスが低下してしまう可能性があります。不満の要因を分析し、早期に解消を図りたいものです。仕事で生じがちな不満と対処法、そして不満解消のために転職を決意した場合の面接対策や退職交渉のポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
仕事で生じやすい代表的な不満
仕事をするなかで不満が生じる原因は多岐にわたります。よく見られるパターンをご紹介しますので、自身の不満の要素を認識しておきましょう。
給与が安い
一口に「給与が安い」と言っても、状況はさまざまです。「業界の給与水準が低い」「自社の給与水準が低い」と言うケースもあれば「仕事の量・質に対して給与額が見合わない」「成果を挙げても給与に反映されない」「なかなか昇給しない」と言ったケースもあるでしょう。自社で給与アップの見込みが立たないと不満を感じるかもしれません。
評価が低い
成果が不十分であるため低く評価されているのであれば理解できるかもしれませんが、成果を出していると言う自負がありながら見合った評価がされていないと感じると、不満につながりやすくなります。会社の「評価制度」に納得がいかない、あるいは上司との人間関係が評価に影響しているような場合は、不満が生じる可能性が高くなるでしょう。
会社の将来性に不安がある
会社の将来性への不安については、まず「取り扱う商品・サービスの需要が先細りする/市場が縮小していく」「競合他社が強く、シェアを獲得できない」など、事業の内容・環境にまつわる不安があります。一方、「経営陣が時代の変化に応じた戦略策定やチャレンジをしない」など、経営陣の能力や姿勢を見ていて、将来性に不安を抱くこともあるでしょう。
やりがいを感じない
手がけている仕事に対し「何のためにしているのか」「何の役に立っているのか」など、目的や価値を実感できていないと、やりがいを感じられなくなることもあります。あるいは、「そのテーマに関心がない」「自分の能力や強みを活かせていない」と言ったケースもあるでしょう。
スキルが身につかない
「マニュアルに従ってルーティンワークを繰り返す」「仕事の難易度に変化がない」、あるいは、「すでに身につけているスキルを使うだけで、新しいチャレンジの機会がない」と言った状況では、「スキルが身につかない」「自分が成長している手応えを得られない」と言った物足りなさを感じるかもしれません。
アイデアを活かせない
ビジネス環境の変化のスピードが加速している昨今、多くの企業が「変革」の取り組みを行っています。しかし、保守的な組織では、新たな取り組みを提案しても「前例がないことはできない」「問題がなければ現状維持で良い」などと取り合ってもらえないこともあり、不満につながることもあるでしょう。
希望するキャリアを歩めない
会社が用意しているキャリアパスでは、自身が描いているキャリアビジョンを「実現できない」「実現までに長い期間がかかる」「社内にロールモデルがいない」と言った場合、焦りや不安につながりやすくなるでしょう。
裁量権がない
職場が「トップダウン」の風土で、指示に従って動くことを求められたり、何かを決めるときに必ず上長の判断を仰がなければならなかったりすると、もどかしく感じる場合もあるでしょう。自身の考え方で進められないほか、業務をスピーディに展開できないことも不満につながる可能性もあるでしょう。
人間関係が悪い
上司や同僚との折り合いが悪かったり、相性が合わなかったりする職場では、チームワークが機能しづらいほか、居心地が悪くなる可能性があります。「人間関係が悪い」と言うほどでなくても、志向や価値観が合わない人とのコミュニケーションにはストレスを感じてしまうかもしれません。
労働環境が悪い
残業や休日出勤が多いと言った労働環境では、身体的にも精神的にも疲労が溜まりやすくなります。プライベートの時間を充実させられないと、不満を感じる可能性が高くなります。
仕事への不満に対する4つの対処法
仕事の不満への対処法はさまざまですが、ここでは4つのアプローチをご紹介します。自身が置かれている状況を踏まえ、適していそうな対処法を試してみてください。
上司や周囲の人に相談する
不満を1人で抱え込まず、上司や同僚、信頼できる友人・知人、家族などに相談してみましょう。新たな視点やアドバイスを得て不満解消の糸口が見つかるかもしれませんし、具体的なサポートや協力を得られる可能性もあります。問題の解決までは至らなくても、第三者に自身の思いを吐き出せば気持ちが楽になることもあるでしょう。
自分の考え方・行動を変える
現状のマイナス面だけを見るのではなく、プラス面に注目してはいかがでしょうか。例えば「人員不足で自分1人に負荷がかかる」と言う不満を抱いている場合、「自分1人の考えで、マイペースで進められる」「経験値が高まり、スキルを磨ける」と言ったように捉え方を変えれば、前向きに取り組めるかもしれません。
不満があってもじっと耐えている状況であれば、不満を伝えて解消を図る方法もあります。「積極的に交渉して状況の改善を図る」「不満解消につながる提案をして、改善プロジェクトのリーダーに手を挙げる」と言った働きかけをすることで、良い方向へ変えられる可能性もあるでしょう。
担当変更・異動願いを出す
「担当業務の変更」「職種転換」「他部署への異動」「グループ会社への出向」などで不満が解消できることもあるでしょう。社内公募制度があれば活用する、なければ上司や人事担当者に相談するなどして、可能性を探ってみましょう。漠然と「現状を変えたい」と訴えるのではなく、自身が目指すキャリア、パフォーマンスを挙げられる働き方などをしっかりと伝えれば、受け入れられる可能性が高まるでしょう。
転職を検討する
まずは現在の職場にとどまって不満を解消する方法を考え、それが難しいと判断した場合は転職を検討しても良いでしょう。
ただし、転職することで現状の不満は解消できても、転職先で別の不満を抱えることになるケースもあります。現職では「あって当たり前」のものが、転職先企業にはないこともあり、入社後に気付いて後悔することもあるかもしれません。転職するメリット・デメリットを考え、課題を整理したうえで転職を検討しましょう。
会社や仕事に不満がある場合は転職活動をすることも一案
会社や仕事に不満を抱いているなら、試しに転職活動をしてみるのも一つの方法です。転職活動をして内定を得たからと言って、必ず転職しなければならないわけではありません。転職活動を通じてさまざまな企業を見ることで、現職を客観視しやすくなるでしょう。他社を知ることで自社の良さに気付き、現職にとどまる決断をする人は少なくありません。その場合、現職に抱いていた不満がそれほど気にならなくなり、モチベーション高く働けるようになる可能性があります。
現状の不満を解消でき、かつ中長期視点で見てキャリアビジョンの実現に近づける企業が見つかった場合、転職を検討しましょう。いずれにしても、幅広く情報収集を行うことで選択肢が広がる可能性が高くなるでしょう。
「不満」が退職理由の場合の転職面接での伝え方
現職への不満がきっかけで転職活動を行う場合、面接で「今の会社を辞めたい理由」を聞かれたとき、伝え方によって印象や評価が左右されます。質疑応答に備えた準備のポイントをお伝えします。
前向きな転職理由を考える
現職への不満が「退職理由」であったとしても、不満とは切り離して「転職理由」を考えましょう。ここで言う転職理由とは、「転職によって実現したいこと」「転職先企業でやりたいこと」です。
「不満」と言うネガティブな理由で転職を考えたとしても、その裏側には「こうしたい」「こうなりたい」と言うポジティブな意欲があるはずです。例えば「会社や上司の方針や指示に対する不満」を裏返せば、「裁量権を持って主体的に取り組みたい」と言う思いがあると言えるでしょう。不満の裏側にある「こうありたい」と言う前向きな意欲を整理し、言語化しておきましょう。
退職理由+転職理由で伝える
面接で「なぜ今の会社を辞めたいのか」「なぜ転職したいのか」と聞かれたときは、退職理由である「不満」だけを伝えて終わらないようにしましょう。「退職理由」を2割程度、「転職理由=転職で実現したいこと」を8割程度のバランスで構成することをお勧めします。
退職理由である不満はあくまで「きっかけ」と言う程度にとどめ、転職先でやりたいこと・目指すことを中心に話しましょう。不満を感じていたことを、ポジティブな表現に転換して伝えるのも一案です。以下に例をご紹介します。
- 「給与に不満があった」→「仕事の成果が報酬に反映される制度がある企業で働きたい」
- 「残業が多すぎた」→「効率化を工夫し、生産性が高い働き方がしたい」
- 「経営陣を信頼できない」→「理念や目的が明確で、果敢にチャレンジする経営陣のもとで働きたい」
- 「人間関係がギスギスしていた」→「チームワークを活かして成果につながる働き方がしたい」
現職への退職理由の伝え方
不満が原因で転職を決断した場合、所属企業に退職意思を伝える際に、すべてを率直に伝えることは避けた方が良いでしょう。退職の意思・理由の伝え方として、次のポイントを心がけましょう。
最初に直属の上司に伝える
退職の意思は、まず「直属の上司」に伝えましょう。直属の上司に対する不満が原因で辞める場合も、さらに上の上長に先に話すと、直属の上司の立場が悪くなる可能性があり、関係がこじれてしまう可能性があります。
信頼する先輩やチームメンバーなどに先に話したくなることもあるかもしれませんが、その人から直属の上司へ伝わることがないように注意しましょう。
不満ではなく前向きな理由を伝える
退職意思を告げると、「なぜ辞めたいのか」を問われるでしょう。このとき、「これまで我慢してきたが、辞めるのだから言いたいことを言おう」と思うかもしれません。
しかし、、感情的に不満をぶつけることは控えましょう。不満をぶつけられた相手は気分を害し、退職日までぎくしゃくするかもしれません。また、「その不満を改善するので辞めないでほしい」と引き留められ、退職交渉がうまく進まないこともあり得ます。
「○○のスキルを磨きたい」「○○にチャレンジしたい」「○○の分野でキャリアを積みたい」など、今後の目標やキャリアビジョンを前向きに語りましょう。上司も「それはこの会社ではできないことだ」と納得すれば、強く引き留めず、意思を尊重してもらえる可能性があります。
感謝を伝えつつ毅然と臨む
不満を抱いて退職を決意したとしても、感謝の意を伝えましょう。今後のビジネスでつながる機会やアルムナイ採用(カムバック採用)の可能性なども考えると、人間関係を良好に保っておくことが大切です。
とはいえ、毅然とした態度で、「退職する」と言う強い意思を見せましょう。決意の固さが伝われば、強く引き留められることを防げ、退職交渉をスムーズに進めやすくなるでしょう。
スカウトサービスを活用する方法も
「現職に不満を抱いているものの、すぐに転職したいほど切羽詰まっているわけではない」と言う方もいるかもしれません。その場合は、積極的に転職活動をしなくても、転職も視野に入れて情報収集を行い、選択肢を広げておくといいでしょう。
「いい会社や仕事があれば転職したい」と言う方は、スカウトサービスを活用するのも一案です。寄せられるスカウトの内容を確認するうちに、不満の解消につながる求人や想定していなかった魅力的な求人に出会えるかもしれません。転職エージェントからの情報やアドバイスも参考に、キャリアの可能性を広げてみましょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。