面接では、冒頭で簡単な自己紹介を求められることがあります。企業が面接で自己紹介を求める意図、自己PRとの違い、自己紹介を求められた時の伝え方のポイントを組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。あわせて質問パターン別に自己紹介の回答例もご紹介します。自己紹介は自身の言葉で伝えることになるため、人前で話すことに苦手意識を持っている人は、事前に練習しておきましょう。
企業が面接で自己紹介を求める4つの意図
企業が面接で自己紹介を求める意図は、主に4つあります。
1.面接への導入
面接をスムーズに始めるためのアイスブレイクとして、自己紹介が求められることがあります。自己紹介で会話のきっかけをつくり、応募者の緊張をほぐすという意図があります。
2.応募者の人物像の把握
採用担当者は、自己紹介の内容から、応募者の経歴、経験スキル、人柄、コミュニケーションスタイルなどを読み取り、応募者の人物像を把握して後の質問に活かす意図もあります。
3.コミュニケーション力の確認
自己紹介に対して質問を投げかけることで、応募者のコミュニケーション能力を確認する意図もあります。採用担当者は、質問内容にふさわしい返答になっているか、返答は簡潔にまとめられているかなどをチェックしています。
4.志望度の確認
自己紹介を話す様子から、熱意を持って面接に臨んでいるか、面接に向けて話す内容をきちんと準備してきているかなど、応募者の志望度がどのくらいのものか確認する意図もあります。
自己紹介と自己PRの違い
面接で求められる「自己紹介」は、「自己PR」と、どのような違いがあるのでしょうか。両者の違いについて解説します。
自己紹介
面接の冒頭で求められる「自己紹介」は、本で例えるなら「目次」にあたるものと考えると理解しやすいでしょう。1分程度で端的に経歴を伝えることで、話す姿勢、表情、口調などから人柄を把握し、その後の面接をスムーズに進めることができます。応募者の緊張をほぐすアイスブレイクとしての役割を果たすと同時に、キャリアを大まかに把握し、採用担当者が掘り下げるポイントを考えるために行われることが多いでしょう。
自己PR
自身の得意分野や強みについてアピールするのが「自己PR」です。志望動機や転職理由などと同様に、面接時に聞かれる可能性が高い質問事項です。これまでの経験・実績や、仕事へのこだわりを伝えることで、採用担当者が具体的に入社後の活躍イメージを抱くことができるでしょう。
自己紹介の内容
自己紹介を求められた時は、どのような内容を話せばいいのでしょうか。基本的な構成とともに、自己紹介の回答例をご紹介します。
1.挨拶(お礼)
自己紹介の冒頭は、採用担当者への挨拶から始めます。「本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます」といった形で、面接の機会を与えてくれたことに対する感謝の言葉を述べるようにしましょう。
2.氏名と略歴
次に話すのは、氏名と略歴です。名前を伝えた後、これまでの職務経歴を「◯◯職を◯年経験してきました」といったように、できる限り簡潔に伝えるようにします。さまざまな経験を積んでいる場合には、長くなりすぎないようにくれぐれも注意しましょう。
3.強みと実績
自己PRにつながる自身の強みや、前職での経験・実績を端的に伝えます。職務経歴書の内容を整理し、応募企業で活かせる部分をピックアップして話すようにしましょう。
4.入社意欲
「強みと実績」の内容を踏まえたうえで、「これまでの経験を活かしてぜひ御社で活躍したいと考えています」といった表現で、応募企業への入社意欲を伝えます。
5.結びの言葉
自己紹介の最後は、「どうぞよろしくお願いいたします」といった簡単な結びの言葉で締めます。
回答例
本日は、貴重なお時間を頂きありがとうございます。(挨拶) ○○(氏名)と申します。私は○○大学を卒業後、2社に在籍し、合計約10年間にわたり、主に法人向けの営業に従事してまいりました。(氏名と略歴) 1社目の株式会社○○では、新規顧客の開拓に注力しまして、目標として掲げた年間の顧客開拓数を達成し、新人賞を頂きました。現職の○○株式会社では、主に既存顧客向けの営業に従事しており、20XX年には目標金額の145%の売上を達成し、3名の成績優秀者のみに与えられる社長賞を獲得しました。直近2年間は、課長職として部下の育成やマネジメントなども行ってきました。(強みと実績) この経験をぜひ御社でも活かしていきたいと考えております。(入社意欲) どうぞよろしくお願いいたします。(結びの言葉)
質問パターン別・自己紹介の回答例
採用担当者から自己紹介を求められる際、単純に「自己紹介をしてください」と言われるとは限りません。そこで、自己紹介のみの場合、自己PRと自己紹介を合わせた場合、志望動機と自己紹介を合わせた場合の3つの質問パターン別に回答例をご紹介します。
【応募者のプロフィール】
30代後半男性。通信業界とIT業界の2社に在籍し、営業職・営業マネジャーを経験。自身の強みは人材育成。応募企業への志望動機は営業組織の立ち上げを経験したいと考えていること。
「簡単に自己紹介してください」への回答例
○○(氏名)と申します。本日は貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございます。 私は20xx年に大学を卒業後、通信業界とIT業界で営業職及び営業管理職としてのキャリアを歩んできております。1社目の○○(通信系企業)では営業として○年間従事し、2社目である現職の○○(IT企業)では営業を○年間経験後、20xx年から部下10名のチームのマネジメントを行っております。○年連続でチームの売上を前年比で20%アップさせてきたマネジメントスキルを今後も活かしていきたいと考えております。 どうぞよろしくお願いいたします。
「自己PRとあわせて自己紹介をしてください」への回答例
○○(氏名)と申します。本日は貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございます。 私は20xx年に大学を卒業後、通信業界とIT業界で営業職及び営業管理職としてのキャリアを歩んできております。1社目の○○(通信系企業)では営業として○年間従事し、2社目である現職の○○(IT企業)では営業を○年間経験後、20xx年から部下10名のチームのマネジメントを行っております。営業人材の育成力が私の強みだと考えており、20代の若手層の育成及び戦力化の実現することで、○年連続でチームの売上を前年比で20%アップさせることができました。 どうぞよろしくお願いいたします。
「志望動機とあわせて自己紹介をしてください」への回答例
○○(氏名)と申します。本日は貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございます。 私は20xx年に大学を卒業後、通信業界とIT業界で営業職及び営業管理職としてのキャリアを歩んできております。1社目の○○(通信系企業)では営業として○年間従事し、2社目である現職の○○(IT企業)では営業を○年間経験後、20xx年から部下10名のチームのマネジメントを行っております。○年連続でチームの売上を前年比で20%アップさせてきており、そのポイントは20代の若手層の育成及び戦力化を実現したことにあると考えております。貴社では営業組織の拡大を計画されていると聞きました。私の若手人材の育成力という強みを活かし、貴社の事業・組織成長に貢献したいと考えております。 どうぞよろしくお願いいたします。
面接で伝える自己紹介のポイント
採用担当者から自己紹介を求められた時には、どんな点に注意して話せばいいのでしょうか。気をつけたいポイントについてまとめました。
1分程度で簡潔に
自己紹介は、とにかく簡潔に伝えることを意識しましょう。目安となる時間は「1分程度」ですが、企業によっては「○分程度で」と、時間を指定されることもあります。冒頭から1人で長々と話すのは、聞き手の採用担当者を飽きさせてしまいます。「職務経歴を整理できていない」「相手のことを考えて話すことができない」といったネガティブな印象にもつながる恐れがあるため、ポイントを押さえて端的に話すことを心掛けましょう。
事前に練習しておく
自己紹介の内容を事前に文章でまとめるだけでなく、きちんと声に出して練習しておきましょう。文章を暗記するだけでは、面接でスムーズに話せるとは限らず、実際に話してみると不自然になることも考えられます。冒頭でうまく話すことができれば面接の緊張もほぐれるため、練習を繰り返してよどみなく話せるように準備しておきましょう。
話し方や表情も意識する
面接の冒頭を飾る自己紹介は、「第一印象を決める」という意味でも重要です。「ハキハキとした話し方ができているか」「自然な笑顔が出ているか」といった点も意識するようにしましょう。最近はオンラインでの面接が増えているため、聞き取りやすいスピードや目線などにも配慮することが大切です。
応募企業や募集内容との共通点を意識する
自己紹介の内容は、単に自身の強み・実績を話すだけでなく、応募企業や募集内容との共通点を意識するようにしましょう。例えば、同じ営業職であっても、既存顧客へのルートセールスが中心である場合と、新規顧客の開拓が中心である場合とでは、営業スタイルも大きく異なります。応募企業の仕事内容や、求める人物像を考慮し、自身の強みや実績と紐づけながら話すことができれば、即戦力のアピールになるでしょう。
粟野友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
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