転職に役立つ自己分析のやり方とフレームワークを解説【自己分析シートあり】 

ノートパソコンを操作する人

転職活動を始める際に取り組んでおきたいのが「自己分析」です。転職の目的や自身の強み・長所を明確にすることで、転職先選びの軸が決まり、転職活動をスムーズに進めることができます。そこで、転職活動における「自己分析」の効果的なやり方や注意点について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。自己分析シートのテンプレートを活用するやり方や、そのほかのおすすめの自己分析の方法などを参考にしてみてください。

転職活動で自己分析を行う理由

まずは、転職活動で自己分析を行うことがなぜ大切なのか、その理由を解説します。

企業選びの軸を明確にできる

自己分析を行い、「転職で実現したいこと」「転職先に望むこと」などを洗い出すことで、企業選びの軸を明確にすることができます。自身の価値観や志向性などを把握し、転職先に希望する条件を明確にすることで、マッチする企業や求人を探しやすくなるでしょう。 

また、転職先に希望する条件にあらかじめ優先順位をつけておけば、内定を得た企業の比較検討がしやすくなり、内定承諾をするかどうかの判断に役立てることができます。

転職活動でアピールできる強みを洗い出せる

自己分析を行うことで、転職活動に欠かせない「自身の強み」を見極めることができます。社会人経験が長くなると、経験・スキルも増えていくため、アピールできることも多くなります。しかし、過去の経験・スキルをやみくもにアピールしても、採用担当者は人物像を掴みにくくなり、「自社で発揮できる強みが何なのかわかりにくい」「キャリアに一貫性が感じられない」などの判断につながる可能性もあります。 

転職活動における自己分析は、これまで経験してきた業務の中で、評価を受けたことや得意としていることを洗い出す作業です。自己分析をあらかじめ行っておくことで、フォーカスすべき強みが明らかになり、応募企業に対してアピールできる強みも整理しやすくなるので、転職活動をスムーズに進めることができるでしょう。 

今後のキャリアの方向性が掴みやすくなる

自己分析は、今後のキャリア形成を考える際にも有効です。これまで積み上げてきた経験・スキルを棚卸しした上で、「自分にはどのような仕事が向いているのか」「転職を通じてどのような経験・スキルを伸ばしていくべきなのか」を改めて考える良いきっかけになるでしょう。 

これからのキャリアを思い描いた通りに築いていくために、自己分析で自身を冷静に見つめ直してみることが重要です。 

自己分析のやり方|3ステップのフレームワーク【自己分析シートあり】

自己分析の具体的なやり方として、自己分析シートのテンプレートを使う3ステップのフレームワークを解説します。

ステップ1:過去の経験・スキルを棚卸しする

最初のステップでは、過去の自分を振り返りながら、キャリアの棚卸しをします。これまでどのような業務を経験し、どのようなスキルを獲得してきたのか、すべて書き出しましょう。自己分析シートの項目に沿って、5W1Hを基本にしながら具体的な内容まで振り返ることがポイントです。 

なお、社会人経験が長いと、時系列で正確に思い出すには時間がかかることもあります。まず、思いつく限り過去の経験を書き出してから、時系列で整理してもいいでしょう。履歴書や職務経歴書を作成することも意識し、周囲から評価を受けたことや具体的なエピソードなども含めて洗い出しておきます。 

ステップ2:強みや得意分野を明らかにする

次のステップでは、書き出した経験・スキルから共通点を探り、自身の「強み」や「得意分野」を洗い出していきます。棚卸しした経験の中から、自身が夢中になって取り組んだり、成果を出して評価されたりした仕事や領域、そこに共通する点などをピックアップします。複数の企業や、異なる業界・職種でキャリアを積み上げた場合は、過去の経験の中で共通して発揮してきた強みを探して書き出していきましょう。 

「強み」については、例えば「○○における調整力」「○○に役立つ協調性」など、端的な表現を意識することがポイントです。自己PRや志望動機でアピールする「入社後に貢献できること」につなげやすくなります。 

また、仕事における「こだわり・価値観」なども書き出し、自身の仕事に対するスタンスや考え方を明確にしておくことで、応募企業との共通点も見つかりやすくなります。 

ステップ3:転職の方向性を決める

最後に、これまでの自己分析の結果を踏まえ、何を軸にして転職活動を進めるのかを決定します。 
「退職理由=現職で改善したいこと・不足していること」を書き出し、それを言い換える形で「転職理由=転職によって実現したいこと」を書き出しましょう。これをもとに、仕事内容、環境、待遇などの条件面から転職先に求めることを洗い出します。 

さらに、「重視する希望条件=Must条件」と「譲歩可能な希望条件=Want条件」を考え、それぞれ優先順位をつけて書き出します。自身が求める転職の方向性を整理し、「転職の軸」を定めましょう。転職の軸は、応募企業を探す際に役立つ上、今後のキャリアプランやキャリアビジョンにもつなげることができます。 

自己分析シートのテンプレート

フレームワークに使う自己分析シートのテンプレートは、下記URLからダウンロードすることができます。各欄に赤字で記載されている例を書き方の参考にしてみましょう。 

おすすめの自己分析手法【3選】

先に紹介したほかにも、自己分析に役立つさまざまな手法があります。ここでは3つのやり方を紹介するので、今後の転職活動に役立ててみてください。

モチベーショングラフ

モチベーショングラフは、過去の出来事や経験を振り返り、自身のモチベーションが大きく動いた事柄を洗い出してグラフ化する手法です。「自分自身のモチベーションが上がるのはどのようなこと、どのような瞬間なのか」を分析することに役立ちます。 

以下の書き方例と具体的なやり方を参考にしてみましょう。 

モチベーショングラフの記載例

<具体的なやり方>

1:グラフの横軸を「時間軸」、縦軸を「心の充実度」とします。

2:過去の自身の経験の中から、意欲的に取り組んだことや心が大きく揺れ動いた瞬間、印象深い出来事など振り返り、年表のように書き込んだ上で、それぞれにおける心の充実度をグラフ化します。

3:黄色部分の例を参考に、書き込んだ出来事に対して、何がやりがいやモチベーションになっていたのかなどを自分自身に問いかけてみましょう。

モチベーショングラフを作成して過去の経験を振り返る中で、自分自身にとって「どのようなことにやりがいや喜びを感じたのか」「どのようなことがつらかったのか」を洗い出すことができます。 

今後の「仕事に求めることの軸」が明確になり、希望条件の整理や応募企業の選定などに役立てることができるでしょう。 

マインドマップ

マインドマップは、キーワードをもとに連想する言葉やイメージを書き出して、自身の思考をマップのように具現化していく手法です。直感的に思い浮かんだことを書き出してつないでいくことで、頭の中にある考えを整理しながら形にできます。 

マインドマップの書き方例

<具体的なやり方>

1:掘り下げるテーマを書く
最初に「自分」と書き、そこから線を引いて「職務経験」「自己PR」「志望動機」「転職で実現したいこと」などの項目をテーマとして書き出します。紙に書くやり方以外にも、PC上などでマインドマップを作成できるツールを活用することもできます。

2:頭に思い浮かんだ言葉をどんどん書き出す
各テーマに対し、直感的に思い浮かんだことをその周辺に書き出して、線を引いてつなげ、そこからさらに思いついたことをどんどん書き足して発想を広げていきましょう。また、「なぜそう思ったのか」も書き添えることで、より思考を明確化できます。きちんとした文章を書こうとせず、思いついたことを箇条書きでどんどん書くことがポイントです。

3:結論として「自分が大事にしたいこと」を書く
すべてのテーマを掘り下げ終えたら、マインドマップ全体を眺め、大事だと思うことに赤線などを引き、「自分が大事にしたいこと」を整理します。最後に、各テーマに対する結論を書き込むことで、自分の考えや価値観を明確にできます。

マインドマップで書き出した要素は、応募書類に書く内容や、面接での回答を整理するために役立ちます。 

「Will」「Can」「Must」のフレームワーク

「Will」「Can」「Must」のフレームワークは、仕事や今後のキャリアに対し、「やりたいこと」「できること」「やるべきこと」を整理し、適職の発見などに役立てる手法です。 

「Will」「Can」「Must」のフレームワーク

<具体的なやり方>

1:中央が重なるように3つの円を書き、それぞれを「Will」「Can」「Must」とします。
2:以下を参考に、それぞれの円の中に思いついたことを書き込んでいきましょう。

【Will (やりたいこと)】転職先で自分がやりたいことや、達成したいと思っていること、直近の目標と中長期的な目標
【Can (できること)】転職先で活かせる自分のスキル・経験・知識・専門性など
【Must (やるべきこと)】転職によって実現しなくてはならないこと、譲れないこと

3つが重なる部分を導き出すことで、自身にマッチする仕事や転職先を発見しやすくなります。

自己分析を行う際の注意点

ここでは、自己分析を行う際の注意点を解説します。

抽象的な言葉は避け、自分の言葉で具体的に表現する

転職活動における自己分析は、自身の強みや得意分野、大事にしていることを明らかにして、転職活動の軸を決めていく作業です。そのため自己分析を行う際は、抽象的な表現をしないように注意することがポイントです。具体性を欠いた分析では方向性がブレてしまうこともあり、転職の軸を見誤る可能性があります。 

夢中になって取り組んだり、成果につながったりした自身のエピソードをベースに分析し、自分自身の言葉で表現することで、目指すべきキャリアの方向性が明確になってきます。 

マイナスな要素はプラスの表現に言い換える

自己分析では、自身の強みだけでなく、ネガティブな部分も浮き彫りになることがあり、自己嫌悪に陥ってしまう方もいるかもしれません。「不得意なこと」など、マイナスに感じてしまう要素は、「今後、伸ばしていきたいこと」「改善に向けて努力していること」など、プラスの表現に言い換えてみることが大事です。弱みがあっても改善すれば成長につながるものですし、改善に向かう姿勢を保つこともプラスに働くでしょう。 

自己分析した内容にこだわりすぎない

自己分析を行っても、「自分のことを完璧に理解できるわけではない」と認識しておきましょう。あとになって「自分では気がついていない強み・弱み、特性が見つかった」というケースも少なくはありません。 

そのため、自己分析した内容にこだわりすぎず、第三者からの客観的な視点を取り入れることも大切です。前職・現職の上司や同僚、社内外の研修やツール、取引先からの評価などを参考にしてみてもいいでしょう。また、働く上で大事にしている価値観や方向性も、こだわりすぎると選択肢を狭めることにつながる可能性もあるので、「常に変化していくもの」と考えることも必要です。 

自己分析でよくあるQ&A

自己分析を行う具体的なメリットとは?

自己分析を行うことで、自身の強みを活かせるような求人を見つけやすくなるでしょう。また、過去の経験を振り返ることは、履歴書・職務経歴書の作成や面接での回答にも役立ちます。特に、複数の企業で多様なキャリアを積んできた場合は、職務経歴が書き切れないほどの分量になるケースもあります。自己分析で自身のキャリアを整理しておくことで、アピールしたい強みを中心に経歴をまとめやすくなるでしょう。

多忙のため自己分析ができない。どうすればいい?

在職中の転職活動など、忙しくて自己分析をしている時間がない場合は、転職エージェントを活用するのも一案です。キャリアアドバイザーとの面談の中で、キャリアの棚卸しや転職先に求めることなどの自己分析を行うことも可能でしょう。転職エージェントは無料で利用できるため、活用もしやすいと言えます。

転職はしたいが、やりたいことがない。おすすめのフレームワークは?

「何をしたいかわからない」という場合は、モチベーショングラフで自身のこれまでのキャリアの歩みを振り返ることで、全体像を俯瞰できます。時系列でおおまかな歩みを振り返り、「どういったことにやりがいを持ったのか」「どのようなことをしている時や、どういった状況の中で充実感を覚えていたのか」、反対に「モチベーションが下がった出来事・状況はどのようなものだったか」などを整理することから始めましょう。自身にとって印象深い出来事や思い出深い転機・ポイントに焦点を当てれば、やりたいことにつながる糸口を発見できるかもしれません。

キャリアに行き詰まりを感じる場合、どのように自己分析をするのがいい?

多様な視点で自分を捉え直すために、他者から見た自分の印象や評価を知る「他己分析」で第三者の視点やアドバイスを得ることもおすすめです。社会人経験が長くなるほど、周囲に相談することを敬遠したり、固定概念や常識などにとらわれたりしてしまいがちなので、上司・同僚、転職エージェント、キャリアコーチングサービス、社内のキャリアコンサルタントなどに相談することで解決できるかもしれません。

また、経験してきた事柄や身につけたスキル、実績などの定量的なことや外形的なことのみにとらわれないことも重要です。「自分が大事にしてきたこと、これから大事にしていきたいものは何か」といった自身の価値観に目を向けることでも、キャリアの方向性を再認識できるでしょう。

転職エージェント・スカウトサービスを他己分析に役立てる方法もある

自己分析がなかなか進まない場合や、自身のことを客観的に判断できているのかわからないと感じた場合は、自己分析に転職エージェントを活用するのも一案です。

転職エージェントを活用することで、転職市場における自身の経験・スキルの評価を確認したり、キャリアの方向性について相談できたりするので、キャリアを見つめ直すパートナーに適しています。転職エージェントから自己分析のサポートや転職活動のアドバイスを受けることで、希望を叶える転職を実現できる可能性が高まるでしょう。

また、スカウトサービスでは、自身の経験・スキルに興味を示す企業からスカウトを受けられるため、自分自身の市場価値を把握しやすくなります。

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アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。