コンサルティング業務の基本は、求職者の想いを深層までヒアリングし、その願いを叶えるポジションを紹介することだ。清水氏はこの基本をとことん忠実に進めていった結果、周囲から無理だと言われた「優秀な30代のNさん×外資系ヘルスケア企業O社の高難易度案件」のマッチングを実現した。いったいどんなやり取りを重ねたのか。GOOD AGENT AWARD 2021特別賞を受賞したマッチングを紹介したい。
「求職者に本音で向き合う」コンサルティングスタイル
清水氏のこだわりは、求職者のプライベートまで踏み込んで、深層の想いをヒアリングすることだ。そのために、まず清水氏のほうから腹を割って話すという。「たとえば、『現職でもっと頑張ってチャンスを得たほうがいいのでは?』『あなたが望むような企業、本当に日本にあると思いますか?』というような率直な本音を、私は求職者の皆さんに遠慮なくズバズバ話します。このくらい腹を割って自分の考えをさらけ出さないと、本当には信頼していただけないと思うからです」。
清水氏は、Nさんにもそのようにして深層ヒアリングを行った。「Nさんは、ヘルスケア業界ならどこにでも転職できるほどの優秀人材でした。30代にして医療業界の高い専門性を備え、マネジメント経験が豊富で英語力も高いのです。Nさんは、本音で話し合うことで少しずつ心を開いてくれました。もっと経営層に近いポジションに就き、早く能力を高めたい。家族のために年収を上げたい。現職に大きな不満があるわけではないが、以上の願いを早期に叶えるのは難しそうだ。能力アップが停滞してしまっていることに不安を感じる。こうしたことをヒアリングできたのです。単に求人案件だけを送ってくるエージェントには、ここまで話さない、とも教えてくれました」。
Nさんが心を開き、ここまで正直に話してくれたからこそ、清水氏は高難度マッチングをできたのだ。
求職者が迷ったとき、原点回帰を促すのが重要な役割の1つ
清水氏がNさんに紹介したのは、外資系ヘルスケア企業O社のダイレクター候補のポストだった。この案件は極めて高難度で、O社が求める人材はなかなか見つからなかった。ある専門領域のプロフェッショナルでなくてはならず、マネジメント経験や英語力も必須の即戦力採用だったからだ。「私たちエリメントHRCは、医療機関・医療業界の人材紹介サービスで、社内には業界を知り尽くしたコンサルタントが揃っています。その仲間たちからも、O社の案件を決めるのは不可能だ、と言われました。そのくらい高難度の案件だったのです」(清水氏)。紆余曲折を経てようやく見つかったのがNさんだった。「Nさんは、ほぼすべての条件を満たしていました。同様の方は、おそらく日本の転職市場にはほぼゼロでしょう」(清水氏)。
ただ、Nさんははじめ、まったく乗り気ではなかったという。「表層的な情報だけだと、Nさんにはあまり魅力的に見えない案件なのです。最初は冷ややかな反応でした。しかし、募集ポジションや募集背景を詳しく説明すると、Nさんの目の輝きがみるみる増していき、その日のうちに応募承諾をいただけました。早期に経営層に近いポジションに就き、大きく年収を高められるチャンスがある。Nさんの願いを叶えられる案件だったからこそ、しっかりと心に届いたのです」。清水氏が深層の想いをヒアリングしていたことが功を奏した紹介である。
O社のほうも、書類の時点では年齢も若く半信半疑だったが、清水氏に対する信頼があったため面談が実現した。初回面談後はポジティブな反応を確認できたという。外資系企業だけあって面談回数は多かったが、日本法人社長と現ダイレクターも採用に前向きで、内定は早い時点で半ば見えていた。しかし、今度はNさんが迷った。「想定内のことでしたが、優秀なNさんは他にも内定を獲得していたのです。入社時の年収だけで言えば、他社のほうが上回っていました」。清水氏はここで改めて原点に立ち返る。「人間は誰しも迷うもの。迷ったとき、原点回帰を促すのがコンサルタントの重要な役割の1つです。経営層に近いポジションに就きたい。家族のために早期に年収を高めたい。私は、Nさんの願いを本当に叶えられるポジションはどれなのかを再度問いました」。
「理想のキャリア像に向かって伴走してくれた清水さんに心から感謝しています」
結果的に、NさんはO社への入社を決断した。社内の仲間たちは、清水氏が不可能を可能にしたのを見て驚いたという。しかし、清水氏は特別なことをしたわけではない。コンサルタントの基本を徹底した結果が、ウルトラCのマッチングにつながったのだ。「私は初回ヒアリング時に、自分が納得できるまで、求職者の皆さんに『なぜ?』と問いつづけます。今回も、そのヒアリングが成果となった事例だと思います」(清水氏)。
入社後、Nさんは早々に手腕を発揮しており、評価もすこぶる高いという。Nさんは入社意思を決めたとき、清水氏にこう伝えてくれたという。「目の前のサラリーよりも、将来的になりたい理想のキャリア像に向かって伴走してくれた清水さんに心から感謝しています。私のキャリアを自分ごとのように考え、導いてくれた清水さんのプロ意識をひしひしと感じました。ありがとうございました」。「この言葉を聞いたときはさすがに涙が出ました。コンサルタント冥利に尽きます」(清水氏)。
転職者・企業へのメッセージ
【転職者の方へ】
医療機関・医療業界専門のコンサルタントとして、詳しく相談に乗ります。転職に関する悩みを抱えている方、ぜひお気軽にお声がけください。結果的に現職を続ける選択をしていただいてもかまいません。
【企業様へ】
医療機関・医療業界の高難度案件をご相談ください。この事例のようにご期待に応えられる可能性があります。
株式会社エリメントHRC
清水潤次氏
取締役 採用コンサルティング事業部統括。大学卒業後、人材業界で15年以上従事。大手人材紹介会社の両面コンサルタントを経て、2012年にエリメントHRC入社し、メディカル専任コンサルタントとして活動。