転職に迷ったら?転職しない方がいいケースや決断のポイント解説

「転職したい」と思っているが、迷って一歩が踏み出せない。そんなときに、自分自身が納得できる選択をするには、何を判断基準にすればいいのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に、転職をしない方がいいケースや、転職に踏み切るかどうかを見極めるためのポイントについて聞きました。

まず「なぜ転職に迷うのか」を整理しよう

「転職するか、しないか」で迷う方は、今の仕事を辞めて転職することに漠然とした不安を抱えていることが多いものです。そこで、迷いや不安の理由を整理して言語化してみましょう。転職に対する不安として下の4つの例がありますが、それぞれの判断材料となる情報を入手するだけでも、迷いが払拭できるかもしれません。

  • 希望する条件(勤務条件・年収など)で転職できるか不安…求人情報を収集し、勤務条件や年収をチェックしてみましょう
  • 自分の経験やスキルが転職先で通用するか不安…求人情報を収集し、応募要件を読み込んでみましょう
  • 転職先でなじめるか、フィットするか不安…誰でもなじむまでには時間を要します。企業によっては入社前に現場で働く社員と話をさせてもらうこともできます
  • 現職の仕事と転職活動が両立できるか不安…転職活動の進め方について情報を集め、転職経験者に話を聞いても良いでしょう。

迷いや不安は転職を考える年代によっても異なる

また下記のように、年代よっても迷いやすいポイントがあります。これらについても一度整理してみることをお勧めします。

20代の場合

20代では「こんなに早く転職してしまっていいのか」「自分の経験やスキルで転職できるのか」という不安から、転職に迷うケースが多く見られます。20代半ばごろまでは、スタンスやポテンシャルが評価されて採用されることも多いですが、20代後半では一定の即戦力が求められる求人も増えます。社内で評価される成果を出したなど、自分の中で「やり切った」と実感できる経験をした時が、一つの転職のタイミングになるかもしれません。

30代の場合

30代は結婚・出産などライフステージの変化が多い年代であり、転職のタイミングで迷う方も多いでしょう。また、現状に大きな不満はなくても「現職でキャリアアップをかなえられるのか」という焦りから転職を迷うケースもあります。30代後半でのマネジメント経験のありなしは、今後のキャリアの選択肢に大きく影響するため「現職で自分に必要な体験ができるかどうか」も一つの判断基準になるでしょう。

40代の場合

40代は企業の期待値の高さゆえ「活躍できるだろうか」という理由で転職に迷うこともあるようです。ミドルエイジ(30 代後半~40 代)層の転職者に対する調査で「現在の勤務先で勤め始めた時にどのような期待をされていたか」を聞いたところ、「即戦力として期待された」人が40代前半で61.2%、後半で69.8%となり、30代後半(49.5%)から10ポイント以上も高くなっています(※)。企業のニーズと自分の経験・スキルがマッチした転職をすることが非常に重要になるため、長期戦で求人が出るタイミングを待つのも一つの方法でしょう。

※出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成〜転職者アンケート調査結果」

転職をしない方がいい3つのケース

ところで「転職をするか、しないか」を迷う方の中には、転職をしない方がいいケースも見受けられます。今は転職を考え直した方が良い方の特徴についてご紹介しましょう。

転職理由が「不満解消」でしかないケース

現職への不満が先に立ち、とにかく今の状況から逃げたいあまり「転職さえすれば全て問題が解決する」と考えているケース。ポジティブな志望動機がなければ企業の評価は得られにくいため、不満だけを理由に転職活動をしてもうまくいかないことが予想されます。仮に採用されたとしても、新しい職場でまた不満を抱えてしまえば、転職を繰り返すことになるかもしれません。

家族に反対されて気持ちが大きく揺らぐケース

転職に迷っていることを家族や親族に相談した場合、反対されることもあります。30歳〜54歳の自己都合離職者を対象にした調査では、家族・親族に転職の相談をした人の約14%が「反対された経験がある」と答えています(※)。
反対されたことで、逆に転職への意思や熱意に気づいた場合は、自分から家族を説得しようとするでしょう。しかし、反対にあって気持ちが大きく揺らいでしまうのであれば「家族を説得する材料=納得度の高い転職理由」がないと思われます。いったん冷静になり、転職について考え直してみましょう。

※出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成〜転職者アンケート調査結果」

転職に対する期待値が高すぎるケース

「友人が転職して給料が上がった」「有名企業に転職した人の成功談を読んで刺激を受けた」などという理由で、現実味のない希望やキャリプランを思い描いているケース。転職への期待値が高すぎる一方で、自分自身の「転職する目的」を明確に持っていない場合は、今すぐに転職をしない方がいいかもしれません。面接で説得力のある志望動機を語れず、回答全般に一貫性を持たせることも難しいため、企業から評価されにくく、転職活動で苦戦する可能性が高いでしょう。

転職に迷う時にチェックしたい4つのポイント

ここでは、転職に迷った時に確認しておきたい4つのポイントをご紹介しましょう。これらについて自分の中で整理がつかない場合は、後悔するリスクもあるため、早まって転職しないほうがいいかもしれません。一方、下記について考えることで、転職で実現したいことが明確になった方や、環境の変化への覚悟ができた方は、転職を決断してもいいのではないでしょうか。

転職でなければ解決しない理由があるか

転職に迷っている状態の時にありがちなのは、転職すること自体を目的にしてしまうことです。現職への不満から転職を考える方は少なくありませんが、その場合はまず「この問題は転職でしか解決できないのか?」を考えることをお勧めします。
例えば人間関係の不満が原因で転職したとしても、転職先でまた別の人間関係の問題を抱える可能性があります。むしろ現職で会社に異動や配置換えを申し出たり、その人に対する自分の関わり方を変えたりする方が、確実に問題を改善できるケースがあるかもしれません。

どうしても現職では実現できない希望、例えば仕事内容や待遇、働き方、評価制度などを求めているのであれば、それは転職に踏み切る理由となるでしょう。

今あるメリットを捨てても得たいものがあるか

人は誰でも慣れ親しんだ環境にいることを心地よく感じ、そこから抜け出す時にはパワーが必要なものです。したがって、現職で築いてきたポジションや信頼関係、評価、待遇といったメリットを失ってでも転職したいのかが、一つの判断基準になります。

それについては「迷うポイント」を可視化してみると整理しやすくなります。
例えば、検討する条件や項目ごとに「現在の会社」と「転職先候補の会社」それぞれを採点して比較してみましょう。「仕事内容は今の会社:5点・転職先候補:7点…」と点数化して総合してみると、転職するメリット・デメリットのバランスを判断しやすくなるかもしれません。
比較項目の一例として「企業理念」「ビジョン」「事業戦略」「事業の特徴」「仕事内容」「社風」「経営者」「社員」「評価制度」「給与」「設備」「福利厚生」「勤務場所」などがあります。自分が大切に思っている項目を選んで採点してみましょう。

転職後の変化やギャップに対する覚悟はあるか

リクルートが転職体験者を対象に実施したアンケートによると、転職して職場になじめず「辞めたい」と思ったことがある人は、全体の64%にも上りました(※1)。また、リクルートマネジメントソリューションズが、新しい組織へ適応する際に苦労したことを聞いたところ、約4割が「仕事内容」と回答。次いで「職場の雰囲気」「上司との人間関係」という声が多くなっています(※2)。

転職後、新たな職場の仕事の進め方や社風、人間関係などにギャップを感じるのは、多くの方が経験することです。さまざまなことを一から学び直し、適応していく意志や覚悟があることも、転職へ踏み切るひとつの条件になるでしょう。

※1出典:転職して1ヶ月で会社を辞めたくなった場合の対処法
※2出典:中途採用者の適応に関する実態調査報告

転職のタイミングは今しかないのか

今のタイミングで転職をしなかった場合に、後々悔やむことにならないかどうかも考えてみましょう。例えば世の中の景況により、求人の状況も採用のハードルも変化します。今、希望する業界の中途採用が活況だとしても、それがこの先何年も続くとは限りません。

転職市場の動きよりももっと重要なのは、自分自身の勤務状況や生活環境の変化です。「転職をするか、しないか」で迷っているうちに異動や転勤を命じられたり、長期的なプロジェクトや役職を任されたりするケースもあります。また、結婚、出産、介護などにより、生活環境が変化することもあります。こうした可能性がある場合は、自由に動ける時が転職に踏み切るタイミングになるでしょう。

現職でもっと経験を積み、将来的にそれを活かして転職を図ることができるのなら「迷いのある今は転職を見送る」という考え方もあります。しかしキャリアチェンジを目指すのであれば、なるべく早い段階で決断したほうが、希望もかないやすいかもしれません。

転職の迷いが払拭できない時の対処法

「転職をするかどうか」を一人で考えても迷いが払拭できない場合は、次のような行動を起こしてみるのも一つの方法です。

第三者に相談する

誰かに話し相手になってもらい、考えをアウトプットすることで、頭の中が整理されることがあります。転職に迷った時も、信頼できる方に相談する機会を設けてはいかがでしょうか。

家族やパートナー

家族やパートナーは、あなたの性格や志向、価値観などを理解しているため、それを踏まえた意見を聞くことができるでしょう。また、家庭を持つ方が転職によって年収が下がったり、勤務地が変わったりする可能性がある場合、配偶者の同意は不可欠です。家族の理解と後押しが得られれば、転職先の選択肢を広げることもできるでしょう。

ただし、家族の意見は本人の経験や価値観の範囲内のことであるため、あまり影響されるとかえって自分が迷うことになります。個人的な見解は、あくまで参考として受け止めるのが良いでしょう。

会社を辞めた元上司や同僚・友人・知人

今の会社を辞めた「元上司」や「元同僚」であれば、転職を決めた理由や、転職活動の状況、転職して感じたメリット・デメリットなど参考になる話が聞けるかもしれません。また、異業界への転職で迷っている方は、その業界で働いている友人や知人に相談してみるのもお勧めです。ただ、元上司や知人から得られる情報も、あくまで経験に基づいた主観的なものです。「その人が語ることが全てではない」と意識して聞くと良いでしょう。

なお、現職の同僚などに相談をしたい方もいるかもしれませんが、その場合、転職は非常に繊細なテーマとなります。ストレートに転職の話をするのではなく「キャリアの方向性に関する相談」という形にするなど、注意が必要です。

転職エージェント

転職エージェントは、まだ転職への決心が固まらずに悩んでいる状態の相談にも応じています。

転職エージェントでは、面談を通じて「なぜ自分は転職したいのか」という理由を整理しつつ、プロの客観的な視点を借りて経験・実績・スキルの棚卸しが行えます。また、転職市場の状況を詳しく聞くことができ、それに対する自分の市場価値も判断してもらえます。頭の中を整理し、正確で詳細な情報を得ることで迷いが払拭されるケースは多いものです。その意味で「相談相手」として活用する価値は大いにあるでしょう。

転職活動を始めてみる

「転職活動をすること」=「実際に転職すること」ではありません。転職をするかどうか迷う方は、試しに転職活動を始めてしまうのもおすすめの方法です。

求人に応募しなくても、転職サイトや転職エージェント、スカウトサービスに登録して情報を収集したり、自分の経験・スキルを棚卸しして、それを元に履歴書や職務経歴書を書いてみたりするのも転職活動の一環です。その中で転職市場の状況や、自分の現状・立ち位置を理解し「転職するか、しないか」という迷いをより現実的に見据えることができます。キャリアや人生を見つめ直し、新たな可能性を発見できれば、どちらに決めても納得度の高い選択ができることでしょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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