転職活動にかかる期間はどれくらい?長引かせないためのポイントを解説

握手を交わすビジネスパーソン

転職活動にかかる期間は、人によってさまざまと言えますが「長引かせないためのポイントが知りたい」と考えている方は少なくないでしょう。転職活動にかかる期間の目安やおおまかなスケジュール、長期化を防ぐためのポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職活動の期間の目安は「3カ月程度

転職活動に要する期間は、経験・スキルや希望する条件によってさまざまですが、一般的に「3カ月程度」とされています。転職活動の基本的な流れと活動段階ごとにかかる期間の目安は次のとおりです。

情報収集、応募書類の作成:約1~2週間

転職活動はまず「情報収集」から始まります。どのような転職を望んでいるのかを自己分析し、自身が希望する業界・職種・企業などについて調べます。そして、応募企業に合わせて履歴書や職務経歴書などの応募に必要となる書類を作成します。

応募・面接:約1カ月

応募書類を作成した後は、志望する企業に応募します。書類選考を通過したら、次は面接に臨みます。このとき、管理職や専門職などの場合は、求人数が多くないため「応募したい求人が見つかるまでに時間がかかる」「採用要件のハードルが高いため、書類選考に時間がかかる」などで、面接に至るまでの期間が長引く可能性があります。

また、在職中に転職活動を進める場合は、並行して現職の業務を行わなければならず、面接の日程調整に苦慮するケースも少なくはありません。ただし、最近ではオンライン面接を実施する企業もあるため、比較的、面接の日程調整がしやすくなっている状況も見られます。

内定・退職交渉:約1カ月

応募企業からの内定を承諾すると決めた後は、入社日を調整・決定の上、現職の会社との退職交渉に臨みます。この段階でよくあるのは、退職交渉に予想以上に時間がかかってしまうケースです。特に管理職や専門職の場合、強い引き止めがあったり、後任の選定がスムーズに進まなかったりして、退職交渉が難航する可能性があります。転職先と合意の上で決定した入社日を守るためには、退職の意志が固いことをしっかりと伝えることが重要です。

転職活動を長引かせないためのポイント

では、転職活動を長引かせないためには、どのようなことに留意して活動するとよいでしょうか。主なポイントとして、次の4つが挙げられます。

希望条件に優先順位をつけておく

仕事内容、年収、ポスト、キャリア形成、ワークライフバランス、企業風土・社風、福利厚生、会社の安定性など、働く上で考慮したい条件として、何をどれだけ求めるのか、また、どの条件を優先するのか、優先順位をつけておきましょう。求める条件よってはすべての希望を満たす企業が非常に少ない可能性も考えられるため、優先順位をつけることで、応募の際や内定承諾前の検討の際に自身の希望にマッチする応募企業を判断しやすくなります。

転職活動の期限を決めておく

「いつまでに転職したいのか」という具体的な期限を設定し、逆算して行動計画を立てましょう。計画通りに進むとは限りませんが、期限を決めることで、判断や行動を先延ばしにして活動が滞ったり、長引いたりすることを防ぐことができます。

経験・スキルにマッチする企業に応募する

キャリアの棚卸しを行い、自身が発揮できる強みを客観的に整理した上で、これまでの経験・スキルを活かせる企業に応募しましょう。自身の経験・スキルを整理できないままマッチしない企業に応募することは、転職活動が長引く要因の一つになり得ます。また、選考時の反応などに応じて、応募書類や面接でアピールする内容をブラッシュアップしていくことも、よりマッチした企業に出会い、選考を通過するために必要な工夫です。

応募企業を絞り過ぎない

1社のみに絞っても選考を通過できるとは限らないため、自身の対応し得る範囲で複数の企業の選考を並行して受けられるよう応募することも一案です。希望条件に優先順をつけて「譲れないもの」と「譲歩できるもの」を整理し、自身が納得できる範囲を定めることで応募企業の幅を広げることができます。

また、複数の企業の選考を並行して受けることで、よりマッチする企業を比較検討しやすくなるメリットもあります。また、選考時の反応に応じて、書類の内容や面接対応をブラッシュアップしていけば、その後の選考の通過率を高めることもできるでしょう。

情報収集・応募のチャネルを複数持つ

転職活動の方法は、一つに絞る必要はありません。例えば、転職エージェントからの紹介を受けながら、自分でも転職情報サイトで求人を検索したり、スカウトサービスを利用したり、ハローワークを活用したりするなど、さまざまな方法を併用しましょう。友人・知人に相談してみることで、社員の紹介・推薦を受けて実施される「リファラル採用」を受けられるケースもあります。また、ビジネス系SNSなどを積極的に活用して採用選考のチャンスを探してみるのも有効な手立ての一つです。

退職交渉をスムーズに進めるための準備をする

内定を得ることができても、現職の会社との退職交渉がスムーズにいかず、転職を見送るケースがあります。現職の会社からの引き止めや、年収やポストについての魅力的な条件の提示などに揺らがず、退職・転職するには、退職する強い意志を持ち、退職したい時期についてしっかりと交渉することが大事です。そのために、転職先で実現したいことを明確にした上で、現職に残った場合と、転職した場合の将来を比較検討して決意を固くしておくことも重要です。

4つの事例で見る転職活動期間とその要因

転職活動が短期間で終わるケースと、長期間かかるケースには、どのような違いや要因があるのでしょうか。筆者がご支援した、転職活動にかかった期間が異なる4つの事例をもとに紹介します。

事例1:2カ月で転職(30代 コンサルタント→事業会社・事業企画職)

将来の起業を目指して事業企画の経験を積むため、数年以内に転職することを視野に入れ、まずは情報収集のために複数の転職エージェントやスカウトサービスに登録。声をかけられれば転職エージェントや企業とカジュアル面談を行い、どのような経験・スキルをアピールできそうか、転職先の候補になる企業群の募集状況、年収の相場、面接対策の必要度合いなどについて、長期にわたり緩やかに情報収集してキャリアの可能性を模索していた。

その後、現職の業務が落ち着いたタイミングでスカウトサービス、転職エージェント、自己応募、リファラル採用などをフルに活用して応募・選考を進め、応募開始から2カ月で事業会社の事業企画職への転職を実現した。

<解説>

情報収集も転職活動のプロセスの一つではありますが、このケースでは、本人は転職活動モードで情報収集をしていたわけではなく、先々転職するための日常的な行為として情報収集を行っていました。

「将来起業するために、まずは事業企画の経験を積むべく転職する」「数年以内を目安に」などの明確なキャリアの方向性と活動期限を定めた上で、それに基づき転職活動に本腰を入れた際に一気に動けるよう情報収集していたことが、応募から入社までの期間を短くできた要因と言えるでしょう。

事例2:4カ月で転職(40代 金融・マネジャー→コンサルティング会社・シニアマネジャー)

現職の業務が多忙、かつ、業務外では家事・育児を行うため、転職活動に使える時間に制約があったが、活動期間中は、各種調整を行った上で転職活動に集中。

具体的には、担当プロジェクトの状況が比較的落ち着いたタイミングで活動を開始し、活動中は業務量を増やさないよう可能な範囲でコントロール。終業後の付き合いはやめ、不自然な印象を持たれない程度に有休利用や定時退勤を行って時間を捻出。家族に対しては、転職活動を最優先にしたい時期を事前に伝えて協力を仰ぎ、休日に応募書類作成や面接のための外出の時間を確保した。

活動中は、転職エージェントをフル活用し、求人や企業に関する情報収集、選考の日程調整、応募書類の添削など受けられるサポートは遠慮なく依頼。自身の時間や労力は面接準備や転職先の比較検討などに回した。結果、多くはない応募数、かつ、希望以上の年収額で内定を得た。

<解説>

公私ともに多忙である状況をふまえて、転職活動期間中だけ転職活動の優先順位を上げられるよう、仕事量の調整や家族との交渉を行って時間を捻出したこと、加えて、転職エージェントに頼れることは頼って自身がやるべきことに注力したことが、一般的な期間で条件に見合う企業への転職を実現できた要因と言えるでしょう。

事例3:6カ月で転職(40代 金融・経営企画課長→コンサルティング会社・マネジャー)

「企業経営に近づく経験・スキルを得たい」「年収をぐっと上げたい」という希望から、活動初期は、知名度が上がってきているスタートアップ企業の経営企画部門の部長以上のポストのみを希望。
しかし、金融業1社で培ってきた経験・スキルや人物タイプと、成長スピードの速いスタートアップが求める経験・スキルや人物タイプがマッチせず、選考は進まず。外資コンサルティングファームでコンサルタントとしての経験・スキルを得た上で、改めてスタートアップの経営層への転職の道を探る方針に切り替え、外資コンサルティングファームの内定を得て、転職活動開始から半年後に入社。

<解説>

本人の人物タイプや培ってきた経験・スキルに合わない企業を応募先に選んでいたこと、また、希望する年収や役職が高すぎたことなどが、当初の希望から方向転換することになり、2回転職活動を行ったような形になったことが要因と言えます。

事例4:1年活動したが転職できず(30代 インターネット関連業・人事)

転職経験が複数回あり、毎回異なる職種に従事。次のキャリアには過去経験があった企画職を希望していたが、これまでのキャリアの歩みや培ってきた経験・スキル、次のキャリアで実現したいことなどについて、説得力のある説明ができず、選考が進まなかった。転職エージェントからの助言や選考後の企業からのフィードバックの共有などを受けるが、応募書類や面接での回答を改善しないまま、業種・職種を広げて応募。状況は改善せず、本人のモチベーションも維持されず活動が停滞した。

<解説>

これまでのキャリアや次のキャリアで実現したいことについて、応募書類や面接で納得感持って表現できなかったこと、また、転職エージェントの助言や企業からのフィードバックを改善に活用しなかったことなどが、活動を長期化させ、また、転職に至らなかった要因と言えます。場合によっては、「キャリアを再構築する」という強い危機意識を持って、現職か次の企業で「この仕事をやり遂げた」と納得して言える実績を出すまでやりきる・我慢することも必要だったかもしれません。

在職中と退職後の転職活動の違い

転職活動を見通す上でもう一つ考慮したいのが、在職したまま転職するか、退職して転職するかという点です。次に紹介するそれぞれのメリット・デメリットをふまえて、自分にはどちらが適しているか判断しましょう。

在職中に転職活動をするメリット・デメリット

在職中に転職活動を行うメリット・デメリットには、主に次のような点が挙げられます。

<メリット>

・一定の収入を確保した状態で活動できる
・離職期間なく次の仕事に就ける
・現職にとどまる選択肢がある

<デメリット>

・現職の業務と並行するため、活動時間が限られる
・退職時期と入社時期の折り合いがつかない場合がある

定期収入を確保しながら納得がいくまでじっくりと転職活動に取り組むことができる一方、常に転職活動に充てる時間に制約があることが、在職しながら転職活動をする際の特徴と言えます。

退職後に転職活動をするメリット・デメリット

退職後に転職活動を行うメリット・デメリットには、次の点が挙げられます。

<メリット>

・転職活動に集中して取り組める
・面接の日程を調整しやすい
・内定後、入社日を調整しやすい

<デメリット>

・安定した収入が得られない
・離職期間が長期化した場合、企業から業務にあたっての影響がないか確認される場合がある

時間や体力の面で余裕があり、転職活動に集中して取り組むことができる一方で、安定した収入が得られないために、生活への不安や焦りが生じる可能性があるのが、退職してから転職活動を行う場合の特徴と言えます。

在職して転職活動をする場合も、退職して転職活動をする場合も、それぞれの特徴に留意して、長引かないよう必要な準備・工夫をしましょう。

企業や転職エージェントからの「スカウトを待つ」という方法もある

転職活動を進める際は、転職サービスやビジネス系のSNSなどに職務経歴を登録しておき、企業や転職エージェントからの「スカウトを待つ」という方法もあります。

いずれにしても、働きながらの転職活動であれば金銭面の不安を抱えることもなく、焦らずじっくりと転職先を決められるため、後悔のない転職を実現することができるでしょう。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。