スキルアップが転職理由の場合の応募企業への伝え方

「現職ではこれ以上のスキルが身につかず、成長が停滞している。新たな経験を積み、スキルアップを図りたい」――そのような理由で転職に踏み切る方もいらっしゃいます。スキルアップを転職理由とする場合、応募企業にどう伝えればよいのか、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏にアドバイスいただきました。

転職理由とは?転職理由の考え方と伝え方

面接で必ず投げかけられる質問の一つに「転職理由」があります。
企業は転職理由を聞くことで、「入社後の活躍の可能性」や「定着性」を探ろうとしています。つまり「この人の転職理由=転職目的は自社でかなえられるか(活躍可能性)」「同じ理由でまた辞めてしまわないか(定着性)」を確認するのです。

それを踏まえ、採用担当者の納得を得るためには、次のような伝え方を心がけてください。

  • 現職(前職)への不満をストレートに語るのではなく、「転職によって、これを実現したい」というポジティブな内容に言い換える。「現職では~ができない」→「~がしたい」と表現する
  • 「転職先でやりたいこと」を語る場合、その企業で実現できる範囲から外れない。例えば、海外事業部門への配属可能性がないことを確認せず、「海外事業を経験したい」と伝えるのは不十分

「スキルアップ」を企業に伝える場合の注意点

「スキルアップ」が転職の目的であっても、それをストレートに伝えるのは得策ではありません。企業側がどのように捉えるかを想定し、伝え方を工夫しましょう。意識したいポイントは次のとおりです。

「現職で学べることはもうない」と言い切らない

「現職で学べることはもうないので、新しいことを学べる環境に移りたい」と語る方がいます。一見ポジティブに見えますが、採用担当者からは「本当にすべて学びきったといえるのか?視野が狭く、会社全体が見えていないのではないか?」「新しいチャレンジをしていないから、新しいことを学べていないだけではないのか?」という懸念を抱かれるかもしれません。

こうした懸念を払しょくするには、自身が経験したい業務を手がけるチャンスが現職企業にはない事実を併せて伝えることが大切です。「異動すれば、新たな経験を積めるのでは?」「自ら提案して新たな取り組みにチャレンジできないのか?」などと突っ込まれた場合も、採用担当者が納得できる答えを準備しておきましょう。

スキルアップだけを目的とせず、応募企業への「貢献」を前提とする

企業側としては、「スキルアップを目指したい」「成長したい」という応募者の意欲は歓迎しますが、それ以前に「自社に貢献してほしい」と考えています。「この会社で経験を積んでスキルアップしたい」という自分個人のメリットだけでなく、「自身の経験・スキルを活かして、この会社にこのような貢献ができる」という企業側のメリットを併せて意識してください。「貢献できる」と「新たなスキルを身につけたい」、この2点をセットで伝えるようにしましょう。

スキルアップの目標レベルと時期を明確にする

目指すスキルアップの内容・レベル・時期の目標が具体化されていないと、「安易にスキルアップという言葉を発している」とマイナスの印象を与えかねません。どのようなスキルをどのレベルまで、いつまでに身につけたいのか、目標を定めておきましょう。また、目標達成のために、どのような取り組みにチャレンジするのか、独自にどのような学習をするのかまで語れるようにしておくと、採用担当者は入社後の活躍イメージを描くことができるでしょう。

スキルアップが転職理由の場合の例文

スキルアップを目的に転職を図る場合、面接でどのように伝えるとプラス評価を得やすくなるのでしょうか。営業職・エンジニア職・人事マネジャーを例にとり、伝え方の一例をお伝えします。

営業職の場合

「現職の顧客は中小企業が中心で、課題の分析・解決よりも人間関係の構築が重視されます。私としては、営業としてより高いレベルのソリューション提案力や、社内外の多様な関係者と連携してプロジェクトを推進する力を磨きたいと考え、転職を決意しました。大手企業をクライアントとする御社であれば、その経験を積めると考えています。相手との距離を縮め、懐に入り込む人間関係構築力は現職で身につけることができたので、そのスキルを活かしながら、営業としてさらにスキルアップしたいと思います」

エンジニア職の場合

「現職では、技術部門への新規投資や人員拡充がなく、少ない人員かつレガシーな開発環境で既存プロダクトの運用を行っています。現職の経営陣の考え方や業績では、今後も状況が変わる見込みはありません。プライベートの時間に最新の技術をキャッチアップするための勉強をしていますが、現職では実践する機会を得られそうにないため、転職を決意しました。御社のようなモダンな環境で技術を身につけ、新しいプロダクト開発に携わることで、エンジニアとしてスキルアップを図りたいと考えています。現職では、バージョン管理やテスト環境などが整備されていない中、コツコツと自力で環境を整備改善してきましたので、これまでに培った課題解決力や自走力は御社でも活かせると思います」

人事マネジャーの場合

「採用・育成・制度設計を幅広く経験し、現在は人事マネジャーを務めています。現職では当面、採用に注力することを求められていますが、私としては制度企画や組織風土醸成の経験を積み、従業員のエンゲージメントを高めるためのノウハウ・スキルを磨きたいと考えています。これまでは人事評価制度の変更・刷新、ミッション・ビジョン・バリューの浸透プロジェクトなどを手がけてきましたので、御社ではその経験を活かしながら新たな取り組みにもチャレンジし、人事としてさらにスキルアップを図りたいと思います」

転職理由が「キャリアアップ」の伝え方・注意点は?

転職理由を尋ねられたとき、「キャリアアップのため」と答える方もいらっしゃいます。しかし、スキルアップ同様に、キャリアアップの概念もさまざまであり、この一言だけで済ませてしまうと、採用担当者に「どのようにキャリアアップしたいのか分からない」「深く考えていない」と思われることもあります。

「専門スキルを極めていく」「仕事の幅を広げる」「タイトルを上げ、より大きな裁量権を持つ」「収入を上げる」など、自身にとってのキャリアアップとは何かを具体的に語れるようにしましょう。そして、先に触れたとおり、「会社に貢献できること」とセットで伝えることが大切です。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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