「マネジメント経験」を自己PRで伝える場合のポイントと自己PR例文

30代以上を対象とした中途採用選考においては、「マネジメント経験」も注目されるポイントの一つです。転職活動の自己PRで「マネジメント経験」を伝える場合、どのような点に注意すればより効果的なアピールにつなげられるのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、マネジメント経験を自己PRで伝える際のポイントや企業が確認していること、注意点などを伺いました。自己PRの例文や作成する際の構成要素なども合わせてご紹介していきます。

「マネジメント経験」を自己PRで伝える場合のポイント

自己PRで「マネジメント経験」を伝えようと考えた場合、前提として、応募企業がどのようなマネジメント経験を求めているかをつかみましょう。企業の成長フェーズ、組織体制、組織風土、人事評価への考え方などによって、マネジメント人材に求める要素は異なるものです。
例えば、「数値目標の確実な達成に向け、メンバーの日々の活動状況を細かく管理する」ことを重視する企業もあれば、「メンバーに裁量権を持たせ、自律的行動を促進する」ことを求める企業もあります。

また、「正社員のみの組織/派遣や業務委託など多様な雇用形態が混在する組織」「若手中心の組織/ベテラン中心の組織」「ゼネラリストの組織/スペシャリストの組織」――など、組織構成によってもマネジメントで注意すべきポイントは異なるはずです。
応募企業のマネジメント方針・マネジメント手法を理解した上で、自身の経験がそれにマッチしていると判断したなら、自己PR材料として活用しましょう。

なお、これまでにマネジャーの役職に就いたことがない場合でも、「プロジェクトのマネジメント」で成果を挙げた経験があれば、アピールして構いません。

マネジメント経験をアピールするためには、次の要素を盛り込んでください。

  • マネジメント対象人数
  • マネジメント対象層
  • 数字(取り扱った目標予算など)
  • 自分自身のマネジメント方針・スタイル
  • メンバーの育成やモチベーションアップのために工夫したこと
  • マネジメントをしている組織で挙げた成果

「マネジメント経験」の自己PR例文

「マネジメント経験」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。

営業・管理職(人材)の自己PR例文

新人・若手メンバーを中心とする営業組織のマネジメントを手がけてきました。
経験が浅いメンバーは、頑張っていても成果が出なかったり、ちょっとした失敗で「営業に向いていない」と落ち込んだりします。そこで、一人ひとりの課題を明確にするために、相談しやすい場を増やしました。気軽にメッセージを送れるチャットツールの導入や、1on1ミーティング、朝会の実施などです。自分のやり方で進めたいメンバーには自由に活動させ、不安感が強いメンバーには、毎日状況を共有して、営業同行も行いました。こうして個々の特性に合わせた育成を行うことで、着任当初は92%だった目標達成率は半年後に112%まで伸び、メンバーとの信頼関係も深まりました。
これまで培ったマネジメント経験を活かし、貴社の営業組織の強化に貢献したいと考えています。

経理・管理職の自己PR例文

経理部門において、ミスを防ぎ、モチベーションを高めるマネジメントを行ってきました。
スタッフに任せる書類チェックとデータ入力業務は、ミスが発生すると指導しなければなりませんが、伝え方によってはモチベーション低下につながり、新たなミスを招くこともあります。また、ミスを恐れるあまり時間がかかり過ぎたり、前向きな改善案が浮かばなくなったりします。そこで、作業スピードが早く正確なスタッフのやり方をメンバーに共有し、効果が出た方法はマニュアル化して、全体のミスの削減、業務効率アップにつなげました。また、イレギュラーへの対応や改善策の提案など、チームに貢献してくれたスタッフには全員の前で感謝を伝えて称賛する習慣を定着させ、モチベーションの向上に努めました。その結果、職場の雰囲気が良くなったと自負しています。
これらの経験を活かし、貴社の経理組織の体制整備に貢献したいと考えています。

サービスエンジニア・プロジェクトマネジャー職の自己PR例文

新サービス開発プロジェクトにおいて、プロジェクトマネジャーを務めました。営業部門、カスタマーサポート部門、商品企画部門、システム部門、広報部門などからメンバーを集めてチームを組成するところから始めたのですが、最初に個別で相談した際、一つのテーマに対し担当者によって捉え方や気にかけているポイントが異なることに気付きました。
そこで、一人ひとりのメンバーが大切にしたいこだわりを聞いた上で、皆に共通する部分を洗い出し、目指す方向性をとりまとめました。推進にあたっては、個々の強みを活かせるように役割を分担。最初に方向性を決めたことで、目標からブレることなく、モチベーションを維持したままプロジェクトを進めることができました。こうして約半年で新サービスを立ち上げ、既存顧客のリピート率50%アップという成果を挙げました。
このマネジメントスタイルを活かし、新規事業の推進に貢献したいと考えています。

自己PRで採用担当者が確認していること

採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。

  • 職務経歴だけではつかめない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
  • その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか

そして「マネジメント経験」に対しては、「チームビルディングの手法」や「人に対する向き合い方」などに注目されます。近年は、マネジャーが方針を決めてメンバーを引っ張っていくような「トップダウン型」のマネジメントよりも、メンバー一人ひとりの価値観を尊重し、個の強みを引き出しながら成長を支援するスタイルのマネジメントを重視する傾向が見られます。
「サーバント型」「フォロワーシップ型」「コーチング型」などのマネジメントスタイルを導入する企業も増えています。

自己PR文を作成する際には、これらのポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。

自己PR文の作り方のコツ

履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。

【1】書き出し
書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「マネジメント経験」を入れておくとわかりやすいでしょう。

【2】【1】を裏付けるエピソード
最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くのはNG。200~400文字程度にまとめてください。

【3】成果
【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。

【4】締め
応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。

自己PR文を作成する際の注意点

自己PR文を作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。自己PR文の作成にあたり、以下のポイントに注意してください。

企業が求める人物像にマッチしていない

自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかを掴みましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールすると良いでしょう。

具体性に欠け、人柄がイメージしにくい

曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。

要点が絞られていない

アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。

専門用語が多く、分かりやすさに欠ける

異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意しましょう。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用せず、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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