「向上心」を自己PRで伝える場合のポイント
向上心とは「現状に満足せず、より高いものを目指して努力するスタンス」のことを意味します。成長意欲の高さや、自ら目標を設定し、達成に向かう努力ができる姿勢などを表現する際にも使われる言葉です。個人としての目標だけでなく、組織全体に貢献して高みを目指すスタンスを示すことで、企業から評価されやすいでしょう。
ただし、向上心について、姿勢や意欲のみを示すだけでは説得力に欠けるため、評価につながりにくいと言えます。エピソードを通じて、具体的な行動と成果・実績を伝えることがポイントです。また、自己成長のみを目的としていたり、個人のミッション達成のみに注力していたりする様子が全面に出ている場合は、組織全体とのバランスが取れなくなることを懸念される可能性もあるので注意しましょう。
さらに、企業に対してアピールする際には「向上心」を自分の言葉に言い換えることが大事です。曖昧・抽象的な表現のみでは、具体的な強みやほかの応募者と差別化できるポイントが伝わらないため、評価されにくいと言えます。例えば「成功体験に満足せずに新たな取り組みを続ける向上心」「既存の手法に頼らず、新しい戦略を企画・実行していく力」など、自身の経験や実績に基づいて「自分らしさ」が伝わるように表現しましょう。
「向上心」の自己PR例文
「向上心」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。
事業企画・管理職の自己PR例文
企業のさらなる成長を目指し、新規事業の企画・実行に自ら挑戦していく「向上心」を強みとしております。
現職のコンサルティング会社では、新規事業の事業企画マネジャーを担当しております。既存事業が社会環境や景気の変化に影響を受けるリスクを見据え、新規事業として顧客の業務改善に役立つITツールの自社開発を起案。自ら事業責任者として実行・実現しました。
ITプロダクト開発は未経験ながら、コンサルティング業務での知見を活かして事業計画策定や新設部署のチームビルディングを手掛け、約1年で自社サブスクリプション・サービスとしてローンチしました。
顧客からの評価も良く、社内から「提案時に他社との差別化を図ることができ、効果が出ている」という報告を受けており、来期以降は売上〇○○万円を目指す方針となりました。
企業の成長のために未経験分野に自ら挑戦する向上心を活かし、貴社の新規事業の企画運営に貢献できればと考えております。
プリセールス・リーダー職の自己PR例文
顧客ロイヤルティ向上のために、未経験の取り組みでも学びながら成果を出していく「向上心」を強みとしております。
前職のIT企業ではプリセールス・リーダーを務め、顧客ロイヤルティの向上や見込み客開拓を目指し、顧客向けのコミュニティづくりやセミナー運営などを手掛けました。
他社との差別化を図るため、技術側面から顧客ロイヤルティを高める取り組みを検討し、技術やノウハウの意見交換・情報共有ができる会員制コミュニティをつくることになりました。他社事例に学び、コミュニティサイトの企画・運営を推進する一方、先進事例ノウハウ共有のセミナー、体験会、交流会も展開し、会員企業の交流促進に貢献。
現在の参加企業は約○社でロイヤルティ調査の満足度も高く、運営1年後の解約率は〇%低減、顧客単価は〇%向上しました。
自社事業の成長に必要な事柄を考え、新たに学びながら形にしていく向上心を貴社の事業でも活かしていきたいと考えております。
人事・管理職の自己PR例文
1つの成功体験に満足せず、組織にとって必要な取り組みを常に推進する「向上心」を強みとしております。
現職ではIT広告代理店の人事部門にてマネジャーを務めております。組織拡大により若年層の人員が増加し、中間管理職層の強化が課題となったため、中間管理職向けのコーチングサービスの導入、メンバー層の心身のコンディションを日次で把握するツールの導入を行い、早期解決を図る仕組みづくりを推進しました。
さらに、全社員のサーベイ結果や人事評価データを活用し、適切な人材マッチングを可視化・検討できる独自のタレントマネジメントシステムも開発しました。
これらの施策により、従業員満足度は○%まで改善。中間管理職からも「メンバーの状態が可視化されて対応しやすい」など好評を受けております。
人事サイドの視点から組織により貢献できることを常に考え、施策を立案・実行する向上心を、貴社の組織づくりに活かしていければと考えております。
自己PRで採用担当者が確認していること
採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。
- 職務経歴だけでは掴めない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
- その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか
向上心の自己PRについては「自己主張や競争心が強く、組織とのバランスが取れないのではないか」などの懸念をされる可能性もあります。そのため「個人的な活躍」だけでなく「組織への貢献性」についても確認し、組織の中でバランス良く能力を発揮できるかどうかを判断しているケースもあります。
一方、向上心で「学ぶ姿勢」を伝えることは、若手だけでなく、キャリアの長いベテラン層においても評価される可能性があります。自身の仕事のスタイルに固執せず、新しい知識や手法などを柔軟に取り入れて挑戦しようとする姿勢を評価することもあれば、DX活用などの観点から「最先端の知識を学んで仕事に活かすことができる人物」として評価することもあるでしょう。
しかし、「専門知識の勉強をした」「業務に関連する資格を取得した」などで学ぶ向上心をアピールする場合は、仕事に関連する具体的な成果や今後どのように仕事に活かしていくのかという点につなげることが大事です。個人的な学びへの意欲のみで終わっている場合は、評価されにくいので「チーム全体に学んだことを共有する勉強会を開催し、知識の底上げに貢献した」「資格取得によって得た知識を顧客提案に活かし、新規開拓につなげた」などの成果まで語ることがポイントです。
自己PR文を作成する際には、これらのポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。
自己PR文の作り方のコツ
履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。
【1】書き出し
書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「向上心」を入れておくとわかりやすいでしょう。
【2】【1】を裏付けるエピソード
最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くと要点が掴みにくくなります。200~400文字程度にまとめてください。
【3】成果
【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。
数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。
【4】締め
応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。
自己PR文を作成する際の注意点
自己PR文を作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
自己PR文の作成にあたり、以下のポイントに注意してください。
企業が求める人物像にマッチしていない
自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかを掴みましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールすると良いでしょう。
具体性に欠け、人柄がイメージしにくい
曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。
要点が絞られていない
アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。
専門用語が多く、分かりやすさに欠ける
異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意しましょう。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用せず、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。
【アドバイザー】
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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