「チームワーク」を自己PRで伝える場合のポイント
仕事の場面における「チームワーク」とは、「チーム目標を達成することを最優先し、チームメンバー個々の強みを活かしたり役割分担をしたりすることで、チームの総合力を高めるように働きかけること」と定義できます。類似する言葉に「協調性」がありますが、協調性は、どちらかというと良好な関係性を構築して業務を滞りなく進めることを指し、その結果として目標達成があります。また、チームや組織の目標達成だけではなく、個人の目標達成も目的に含みます。一方、チームワークは、あくまでチーム目標が最優先と捉えるとよいでしょう。
チームワークをアピールする場合のポイントとして、次の2点が挙げられます。
- チームワークがあるというだけではなく、成果につながったことを伝える
- 一般的なチームワークではなく、自身のエピソードに基づいた自分らしい「チームワーク」にする
2については、「チームワークが強みです」と伝えても、抽象的で、目標や課題に対してどのように向き合い、成果につなげていくのかがわかりづらいものです。エピソードに基づき、どのようなチームワークを自分が有しているかを端的に表現できると、自身のチームワークの発揮の仕方がより具体的に伝わるでしょう。
また、チームワークをアピールする際の注意点として、うまく伝えなければ「その人自身の力が必要な仕事をするときにパフォーマンスが出せるのだろうか?」「チームとしては動けても個人としてのスキルは不足しているのでは?」と受け止められる可能性があります。また、チームありきの意識が強すぎると、「個人としての意思や思いが強くないのでは?」「受け身の姿勢が強いのでは?」と受け止められる場合があることにも注意しましょう。
「チームワーク」の自己PR例文
「チームワーク」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。
営業部長の自己PR例文
個々のメンバーの状況に応じたサポートという形でチームワークを発揮し、組織力の向上や組織改善を実現できることが私の強みです。
前職で営業部長として着任した組織は、組織も売上も拡大していた一方で、生産性が低下しつつありました。大きな課題だったのが、成績不振のメンバーの存在です。該当者には中堅ベテラン層が多く、プライドが邪魔をして周囲から助言をもらうことをせず、成績不振からモチベーションも上がらず、再教育プログラムの効果も表れない状況でした。
そこで、まずは対象者の心情を汲み取ることが重要と判断し、一人ひとりと定期的な面談を実施。心情面により沿ったサポートや営業フォローを個別に行いました。そして、再成長へのモチベーションが高まった段階で、スキル教育へ移行しました。その結果、対象者の〇%が業績を向上させました。
こうして組織の底上げに成功した経験は、貴社の営業組織強化への貢献にも活かせると考えています。
スクラムマスターの自己PR例文
コーチングにより組織をつくる形でチームワークを発揮できる点が私の強みです。
前職では、開発スピードを上げるために、アジャイル開発体制の構築に取り組みました。自律・自走できる開発組織を作るべく、スクラム導入にはメンバー同士の対話や振り返りから自組織に合致した方法を模索する方法をとり、私は一歩引いて対話のファシリテートやコーチング的な問いかけを行う立場を保ちました。また、デイリースクラムやスクラムイベント、その他ミーティングに最大限参加し、メンバーの様子を細かく確認。個別の対話・振り返りも定期的に行いました。
スクラム導入から1年半が経過した現在は、開発スピードの向上や品質の安定、開発メンバーによる主体的なビジネスサイドとの連携強化などの成果が見られています。組織の目指すべき将来の姿を見据え、そのプロセスを縁の下の力持ち的に支援するチームワークは、貴社が開発チームを構築する際にも活かせると考えます。
総務部長の自己PR例文
ボトムアップの風土を醸成し、メンバーの成長を支援するチームワークが私の強みです。
前職では総務部長を務めていましたが、メンバーの多くは与えた仕事への対応力は信頼できるけれど主体性に乏しいという組織課題がありました。私が多くの事柄を決定してきた影響を痛感し、メンバーの成長を促すマネジメント方法への変更を決意。メンバーに総務として取り組みたい内容を自由に起案してもらうようにしたところ、固定資産管理の見直しやBCP策定、新しい福利厚生制度の企画など、想定以上のアイデアが生まれました。それらの優先順位づけやチーム分けもメンバーに任せ、私自身は予算管理や経営陣との交渉など、メンバーを後押しする役割に徹しました。
その結果、複数のプロジェクトが形になり、会社への貢献の大きさから全社表彰を受けました。メンバーも自信を得て、意欲的に業務に取り組む風土が醸成されました。この力を貴社での組織づくりでも発揮したいと思います。
自己PRで採用担当者が確認していること
採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。
- 職務経歴だけではつかめない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
- その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか
そして、チームワークをアピールする応募者に対しては、次の観点から、どのようなチームにフィットし、活躍することができるかを見極めようとします。
チームの中でどのような強みを発揮し(調整、モチベート、企画、管理など)、どのようなスタイルのチームワークを発揮して成果に結びつけてきたのか(フォロワー/リーダーなどのタイプ)
会社や組織によって求められる「チームワーク」は異なります。例えば、役割分担を明確にして個々人の裁量を大きくし、それぞれが100%以上頑張った和をチームの総合力とするチームワークもあれば、コミュニケーションを密にとって弱みを補完し合うチームワークや、各々の役職や立場に応じた役割を出過ぎずにしっかりと果たして摩擦を起こさないチームワークもあるでしょう。上記の観点を確認することで、どのタイプのチームで活躍できるかを企業は判断するのです。
自己PR文を作成する際には、このポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。
自己PR文の作り方のコツ
履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。
【1】書き出し
書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「チームワーク」を入れておくとわかりやすいでしょう。
【2】【1】を裏付けるエピソード
最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くのはNG。200~400文字程度にまとめてください。
【3】成果
【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。
数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。
【4】締め
応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。
自己PRを作成する際の注意点
自己PRを作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
以下のポイントに注意してください。
企業が求める人物像にマッチしていない
自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業が求めている人物像から外れている内容をアピールすると、「自社を理解していない」と評価ダウンにつながる可能性があります。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかをつかみましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールするといいでしょう。
具体性に欠け、人柄がイメージしにくい
曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。
要点が絞られていない
アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。
専門用語が多く、分かりやすさに欠ける
異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意してください。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用しないか、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。
【アドバイザー】
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。