「細かいところに気がつく力」を自己PRで伝える場合のポイント
仕事上で細かいところに気がつく力とは、「事業や組織の細かな部分に対して、注意が行き届いたり、考えが及んだりする力」を指します。自己PRで細かいところに気がつく力をアピールする際には、単に細かいところに気がつく力があるというだけではなく、それが成果につながったことまでをセットにして伝えるのがポイントです。「気配りができる」といった一般的なことではなく、自身のエピソードに基づいた自分らしい「細かいところに気がつく力」を伝えるといいでしょう。
一方で、細かいところに気がつく力をアピールしたつもりが、伝え方によっては「細かいところを気にしすぎてリスク回避しようとする意識が強く、チャレンジ精神に欠けるのではないか」「重箱の隅をつつき過ぎて、物事を先に進められない“木を見て森を見ず”タイプではないか」「頭の回転が早く発想力は豊かかもしれないが、あれもこれもやりたい・やるべきとなり、実行の部分で散漫になってしまうタイプではないか」ととらえられ、評価につながらない可能性もあります。「細かいところに気がついたエピソード」ではなく、事業や組織の在り方で「改善すべき点」「考慮・配慮すべき点」「取り組むべき点」に「気がついたことで得られた成果」を中心に伝えることを意識するようにしましょう。
「細かいところに気がつく力」の自己PR例文
「細かいところに気がつく力」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。
事務企画・管理職(IT)の自己PR例文
私の強みは、ニーズに対して細やかに気がつき、適切に対応できる力です。
前職では、営業組織の構築をサポートする事務企画部のマネジャーとして、業務生産性と売上・利益の向上を実現しました。事業拡大に伴って業界未経験者も数多く中途入社し、育成は主に現場マネジャー・リーダー陣に委ねられたため、業務負荷が高過ぎる状況に。そこで、現場で成功した育成事例などを収集・整理し、未経験者でも短期間で基本部分をカバーできるような営業ツール集を作成。現場の各種ニーズに対しては、細分化した実践的研修コンテンツを企画運営し、マネジャー・リーダー陣向けのサポート体制も構築しました。その結果、売上・利益は昨対比で〇%の目標達成。若手未経験者の入社後6ヶ月目・1年目の生産性指標の観点では昨対比〇%向上を実現。中途入社者の即戦力化に大きく貢献出来ました。このような「細かいところに気づく力」は、貴社でも活かせると考えております。
QA(品質保証)エンジニア・リーダー職の自己PR例文
SE、PM(プロジェクトマネジャー)としてシステム開発経験があることから、現場目線も併せもち、「細かいところに気がつく力」が私の強みです。
QA部門のリーダーとして異動した際、自社ソフトウェアの機能拡張、他社連携による複雑化、想定外の用途拡大などで潜在的なトラブル発生リスクが高まっていました。まずは、品質保証体制の分析・再定義を実施。テストフローやフィードバックの連携体制も整備しながら、開発部門のQAに対する意識改革、第三者検証体制の整備、新しい品質管理手法の導入なども実施。現場の声を細やかに拾い、開発部門がメリットを感じながら品質保証水準を上げられる体制づくりを目指しました。その結果、プロダクトの開発期間が〇%削減。開発部門自体が品質保証の観点を持つ風土が醸成され、現在では開発とQAの一体化が進んでいます。このような「細かいところに気づく力」は、貴社においても貢献できると考えております。
コンプライアンス室・管理職の自己PR例文
多様な状況・課題に対して、個別に対応策を講じる「細かいところに気がつく力」が、私の強みです。
現職では、飲食チェーン運営企業でコンプライアンス室室長として従事。複数の業態・ブランド、直営とFC(フランチャイズ)が混在し、労務コンプライアンス面で各種の潜在リスクが想定されました。そこで人事部や社外専門家と連携し、労働関係法令の改正、コンプライアンスチェック徹底と課題分析、経営陣へのレポートと啓蒙、現場への教育研修・広報や相談サポートなど、コンプライアンス体制の強化をリードしました。立場ごとに意識や理解度が大きく異なる中、それぞれの状況や課題に応じて細やかに対応した結果、労務環境は改善し、離職率が〇%低下。業界別人気ランキングでもトップ○入りし、ブランド力向上・人材獲得面でも効果が出ています。このような「細かいところに気づく力」は、貴社の業務においても貢献できると考えております。
自己PRで採用担当者が確認していること
採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。
- 職務経歴だけではつかめない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
- その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか
細かいところに気がつく力を強みにしている応募者の場合、「改善志向」や「未来志向」があるかどうかも見ています。例えば、現在の事業や組織の在り方に対して、改善すべきことや考慮・配慮すべきことに気づく力があるかどうかという点。また、未来の事業や組織の在りたい姿に対して、取り組むべきことや考慮・配慮すべきことに気づく力があるかどうかという点もチェックしています。
自己PR文を作成する際には、このポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。
自己PR文の作り方のコツ
履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。
【1】書き出し
書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「細かいところに気がつく力」を入れておくとわかりやすいでしょう。
【2】【1】を裏付けるエピソード
最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くのはNG。200~400文字程度にまとめてください。
【3】成果
【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。
数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。
【4】締め
応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。
自己PRを作成する際の注意点
自己PRを作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
以下のポイントに注意してください。
企業が求める人物像にマッチしていない
自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業が求めている人物像から外れている内容をアピールすると、「自社を理解していない」と評価ダウンにつながる可能性があります。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかをつかみましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールするといいでしょう。
具体性に欠け、人柄がイメージしにくい
曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。
要点が絞られていない
アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。
専門用語が多く、分かりやすさに欠ける
異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意してください。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用しないか、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。
【アドバイザー】
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。