「分析力」を自己PRで伝える場合のポイントと自己PR例文

転職活動の自己PRで「分析力」を伝える場合、どのような点に注意すればより効果的なアピールにつなげられるのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、分析力を自己PRで伝える際のポイントや企業が確認していること、注意点などを伺いました。自己PRの例文や作成する際の構成要素なども合わせてご紹介していきます。

「分析力」を自己PRで伝える場合のポイント

「分析」とは、辞書によると「物事の内容・性質を明らかにするために、細かい要素に分けていく」ことを意味します。ビジネスでの課題抽出や意志決定も、行き当たりばったりではなく、分析というプロセスを経て行われています。問題意識や目的のもとに仮説を立て、物事を調査して要素を整理したり、掘り下げたりすることは、仕事を進める上で不可欠です。従って、どのような職種でも一定の「分析力」は必要になるでしょう。

ただ、ビジネスで求められる分析力はデータを読むだけでなく、それを誰にでも分かりやすい「情報」に変換し、それによって人やものを動かし、成果につなげることです。従って、自己PRで評価される分析力とは「物事を読み解いて情報化し、事業や組織の進む選択肢を提示する力」と定義することもできるでしょう。

分析力のエピソードを考える時は、どのような背景や課題があって分析することになり、何を得て、何に活かしたのか、具体的な分析手法と成果までしっかりと伝えることが大切です。それらが実感値として伝わらないと、企業は応募者の分析が妥当であるか判断できないため「偏った分析ではないのか」「分析しただけで、本当にビジネス現場に活かされているのだろうか」と疑問を抱かれる可能性もあり、注意が必要です。

なお、分析力は一般的な表現であり、「分析力があります」では抽象的になってしまうため、自身のエピソードに基づいた、より「自分らしい分析力」を伝えることが大切です。「自分が分析力を発揮するポイントは何か」を深掘りし、具体的な言葉に落とし込むと良いでしょう。

【例】
「独自の情報収集を元に課題を単純化し、上層部を納得させる分析力」
「ツールを用いて問題点を洗い出し、プロジェクト管理を最適化する力」
「市場データの分析から新たな商品を企画する力」

分析力の自己PR例文

「分析力」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。

法人営業職(運用会社)の自己PR例文

私の強みは、多角的な観点から業務上の課題に迫る分析力です。
運用会社で地銀数行を担当し、全体の投資信託販売実績は好調でしたが、中には伸び悩む地銀があり、「規模的にまだ実績を伸ばせる」と仮説を立てました。各支店の過去3年間の販売データを分析した結果、低業績な支店は固定化されており、加えて売上が「販売しやすい商品」に偏っていると判明。販売員の商品知識向上、営業力強化、営業ツール等の整備が必要だという結論に達しました。
そこで、地銀の責任者に現状と改善策を示し、テコ入れを行うことで合意形成。個別支店の販売員向けにセミナーを実施し、新たな販売支援ツールの作成にも取り組みました。1年後には、低業績支店の業績が〇%上がり、販売商品の偏りも解消されました。全体データでは可視化されない事象を、複数の角度・観点から細分化して分析することで課題と解決策を見出し、実行に移す力は、貴社でも活かせると考えております。

PMOコンサルタント・管理職の自己PR例文

私の強みは、多種多様な状況を統一化・標準化して分析する力です。
複数のITプロジェクトを横断管理する中、各案件の状況や規模が異なり、適切なリスク管理や支援が難しい状況でした。課題は、各PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)が経験値に基づいた管理をしており、モニタリング項目や基準にばらつきがあったことです。
そこでリスク管理計画書を作成し、各PMOが計画時点で想定するリスクの洗い出し項目を設定。定性・定量分析によってリスクの数値化を行い、投じる人的資源や時間、工程を判断。影響度が高いリスクに関しては定期的にモニタリングするなど、管理プロセスの統一化・標準化を図りました。結果、プロジェクト成功率が〇%向上し、新規・追加案件の獲得にも貢献できました。
多様なプロジェクトが同時に進む中、データの統一化・標準化とその分析によって成功率UPに貢献した経験は、貴社の事業でも活かせると考えております。

人事・リーダー職の自己PR例文

私の強みは人事・評価データから人材開発戦略を策定することです。
以前は全社で年〇回の研修が実施されてきましたが、内容が未整理でした。また、タレントマネジメントシステムを活用できておらず、社員のスキルや評価と連動した研修になっていない点が課題でした。
そこで各部門長と協議し、研修を必要最低限にスリム化(研修時間〇%削減)。さらにタレントマネジメントシステムのデータ分析により、経営戦略の実現には、マネジャー・リーダー層の〇〇力が不足していることが判明。そのギャップを埋めるため、新たにマネジャー・リーダー層向けの選抜型研修を開発・実行しました。
結果、参加者から非常に高い評価が得られ、会社の中核となるマネジャー・リーダー層の強化・育成の明確な方向性を社内に示すことができました。データ分析により、明確な根拠を持って人材開発・研修の戦略を構築した経験は、貴社の事業においても活かせると考えています。

自己PRで採用担当者が確認していること

採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。

  • 職務経歴だけではつかめない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
  • その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか

求職者の自己PRが「分析力」の場合、企業は特に次の2点について注目し、評価しようとするでしょう。

1)情報化する力について
複雑な物事やデータを分解・整理して読み解く力。単なる数字の羅列であるデータを分析し、原因の分析、問題点の抽出、課題の設定といった内容に「情報化」する力を確認しています。

2)伝える力について
データの分析から情報化した内容を用いて、周囲の人に働きかけ、組織やビジネスの進むべきいくつかの選択肢を提示する力(伝える力)を確認し、評価しています。

自己PR文を作成する際には、このポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。

自己PR文の作り方のコツ

履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。

【1】書き出し

書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「分析力」を入れておくとわかりやすいでしょう。

【2】【1】を裏付けるエピソード

最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くのはNG。200~400文字程度にまとめてください。

【3】成果

【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。
数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。

【4】締め

応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。

自己PRを作成する際の注意点

自己PRを作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
以下のポイントに注意してください。

企業が求める人物像にマッチしていない

自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業が求めている人物像から外れている内容をアピールすると、「自社を理解していない」と評価ダウンにつながる可能性があります。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかをつかみましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールするといいでしょう。

具体性に欠け、人柄がイメージしにくい

曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。

要点が絞られていない

アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。

専門用語が多く、分かりやすさに欠ける

異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意してください。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用しないか、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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