CFOが語る、仕事のやりがいと、CFOになるためのステップ | CAREER CARVER(キャリアカーバー)

CFOとは、Chief Financial Officer、つまり「最高財務責任者」を指します。経理、財務データをもとに財務戦略を練ったり、キャッシュフローの管理、ファイナンスの実施、M&Aなどの投資戦略の立案など、企業経営を財務面から牽引する立場といえます。
起業件数の増加に伴い、CFOの求人ニーズも拡大中にあり、将来のキャリアとしてCFOを目指す若手ビジネスパーソンも増えつつあるようです。そこで今回は、企業財務のプロフェッショナルを養成する「日本CFO協会」の会員であり、CFOとして第一線で活躍している新村和大氏に、CFOの仕事の魅力ややりがい、そしてCFOになるための条件などを伺いました。

CFOとは、Chief Financial Officer、つまり「最高財務責任者」を指します。経理、財務データをもとに財務戦略を練ったり、キャッシュフローの管理、ファイナンスの実施、M&Aなどの投資戦略の立案など、企業経営を財務面から牽引する立場といえます。起業件数の増加に伴い、CFOの求人ニーズも拡大中にあり、将来のキャリアとしてCFOを目指す若手ビジネスパーソンも増えつつあるようです。そこで今回は、企業財務のプロフェッショナルを養成する「日本CFO協会」の会員であり、CFOとして第一線で活躍している新村和大氏に、CFOの仕事の魅力ややりがい、そしてCFOになるための条件などを伺いました。

ベンチャー数社で経営企画や増資業務などを経験し、CFOに

新村さんは、販促プラットフォームを企画開発・運営している株式会社SocketにおいてCFOを経験され、現在はボストン発の起業家育成プログラムである「Startup leadership Program」の東京代表を務めながら、複数のスタートアップ企業でCFOや経営コンサルティングの業務に従事されているとのこと。着実にCFOとしてのキャリアを積んでおられますが、いつ頃からCFOを目指すようになったのでしょう?

実は、決してCFOを目指してキャリアを積んできたわけではありません。さまざまな仕事に就き、経験を積んできた過程で、徐々に財務がキャリアの軸になった形です。

大学卒業後、入社したのは製鉄メーカー。工場の生産管理を任されましたが、希望の部署ではなく、「大手に入ると自分で自分のキャリアを選べない」ことを痛感しました。汎用性のあるスキルが身につかないとも感じ、半年で退職。その後、進学塾の海外校での講師、ITベンチャーで経営企画、コンサルティング会社の投資事業担当などを経験しました。

そして、慶應義塾大学ビジネス・スクールでMBAを取得後、同スクールで経営企画を担当。オンライン英会話を手掛けるベンチャーのCSO(最高戦略責任者)を経て、2013年にSocketのCFOに就任しました。

新村和大さん

初めてCFOに近しい業務を経験したのは、コンサルティング会社時代。投資事業の一環で、海外企業の増資を担当しました。増資に関する知識は全くなく、たとえば「EBITDA」など財務用語が解らず、苦労しました。わからないことにぶつかったらその都度自分で調べて乗り越え、少しずつ知識をつけていったのです。

大きな会社で経理を経験したわけでもなく、簿記はビジネス・スクールで初めて学びました。知識としては、簿記2級程度でしょうか。でもこれで十分、ベンチャーのCFOは務まります。

仕訳をすることは目的ではなく、会計や財務の情報からビジネスの大局を判断することがむしろ重要。そうした能力は、ビジネス・スクールで繰り返し財務諸表を分析することで鍛えられました。設立間もないアーリーベンチャーの場合、CFOは財務に限らず、総務や人事、法務など、関連するさまざまな部門も見ながら財務戦略を練る必要があります。つまり、「浅くても広い知識」が何より求められる立場。だからこそ、私の経歴でもCFOの役目を果たせたのだと思っています。

実際に就いて感じた、CFOの仕事の魅力ややりがいを教えてください。

会社の構造は、ざっくりいうと「2階建て」。商品やサービスを開発して生産し、それを売る「1階」部分と、経営企画や財務、人事といったバックオフィスである「2階」部分に分かれています。

八百屋さんに例えると分かりやすいかと思います。1階には野菜や果物が並んでいて、お客さんが訪れ商品を買っていく。2階には事務所があり、売上金や帳簿などが置かれているというイメージです。

ベンチャー企業は当初、どうしても1階ばかりを重視しがちです。商品やサービスを開発し、作って売るという商売の基本が確立できないと、売り上げは上がらないし、会社が存続しないからです。

ただ、ベンチャーが成長し続けるためには、2階部分の整備が重要です。商品やサービスを売るのが1階ならば、2階は会社そのものを「売り物」として磨く場所。会社そのものが魅力的でないと、資金調達もできず、成長が見込めません。

この2階部分の基礎固めと魅力向上を担うのが、CFOです。バックオフィス業務を広い視野で見ながら財務戦略を練り、会社の魅力向上→成長につなげる役割という、非常に責任ある立場。それだけやりがいも大きいといえます。

そして、CFOの経験・スキルは、どの業界であっても活かせるのが特徴です。八百屋のたとえを使うと、1階は八百屋とケーキ屋では全く景色が異なりますが、バックオフィスである2階は似たような景色のはず。八百屋の2階の仕事(=CFO)が担えれば、ケーキ屋の2階の仕事だって担えるのです。培った知見も、ほぼ活用できるのが特徴であり、活躍の範囲を自ら広げることが可能です。

起業のほか、アーリーベンチャーを手伝うなどして必要な経験を積む方法も

新村さんは、さまざまな仕事を経て、CFOとして必要な経験を積んでいったということですが、若手ビジネスパーソンが「将来CFOを目指したい」と思った場合、どんなスキルを身につけ、どんな経験を積めばいいのでしょうか?

大手企業でCFOを目指すのはあまりに狭き門ですから、求人ニーズが高い「ベンチャー企業のCFO」を前提としてお話します。

社員として1社に所属して、決められた役割をこなしている限りは、CFOになるための経験やスキルは積みにくいと感じています。特に中規模~大規模企業であれば、社員1人の業務範囲はある程度決められているケースが多いはず。企業によっては、若手のうちは月次決算の一部だけしか任されない、というところもあるとか。

新村和大さんと八尋弓枝さん

加えて、ジョブローテーションなどにより自分で自分のキャリアを決めにくいケースもあるようです。せっかく経理業務に就いたのに、次は全然違う部署…ということも大いにあり得るでしょう。経理・財務に関する専門知識はもちろん、アーリーベンチャーのCFOに必要な「浅くても広い知識」を得るのも難しいのではないかと思います。

いきなり会社を飛び出し、仲間とともに会社を立ち上げ、CFOの仕事に就くという方法もありますが、どうしてもリスクが伴います。

そこで私がお勧めしたいのは、会社に所属しながらアーリーベンチャーを手伝うこと。自身の経理・財務に関する相談に乗ったり、実際の業務を手伝うなどして、少しずつ経験を積むといいでしょう。「ハイブリッド・アントレプレナーシップ(会社勤めをしながら、副業として起業すること)」を目指すのも一つの方法です。

会社を辞めて起業した場合と、会社勤めを続けながら起業した場合と、どちらが成功率が高いかという研究があり、後者のほうが成功率が高いという結果が出ているそうです。勤務先を辞めずに仲間と起業し、CFO的な役割を担いながら少しずつ副業の比率を増やしていけば、CFOとしての知見や経験・スキルが着実に身につけられると思います。

そもそも、商品やサービス、事業のサイクルが短命化している今、「1社に長期雇用してもらえる時代」ではなくなりつつあります。すべての労働時間を1社だけに割くのは、私から見ればリスクでしかない。1週間の労働時間のうち、ほんの数時間でも別の会社に割いていれば、勤務先が倒産したり、大量リストラの波に飲み込まれたとしても、何らかの対策が打てるはずです。

独学でも財務会計の学習は可能ですし、副業でCFOになるためのトレーニングを積めば、基礎知識は十分身につきます。そのうえで、CFO未経験者にも門戸を開いているアーリーベンチャーに飛び込み、経験を積みましょう。アーリーベンチャーはまだ組織が確立していないので、多少粗削りであっても大づかみであっても、一つひとつ目の前の仕事に臨めば業務は回っていきますし、CFOとしての力もつきます。

本気でCFOを目指すならば、目標に近づくためにも、リスク分散の一環としても、今いる環境からまずは一歩踏み出してみてほしいですね。

対談者

新村和大氏

京都大学経済学部経営学科卒業後、大手製鉄メーカーに入社。その後、ITスタートアップの経営企画、経営コンサルティング会社での投資事業等を経験。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)後、慶應義塾大学ビジネス・スクールにて経営企画を担当。オンライン英会話のLANGRICH HOLDINGS PTE.LTD.での執行役員を経て、2013年から株式会社Socketの取締役最高財務責任者(CFO)に就任。2016年2月に同社を退任。

2014年1月~12月には、文部科学省官民協働海外留学創出プロジェクトチーム・プロジェクトオフィサーを兼任する。現在はCEOを育成する教育プログラム「Startup leadership Program」の東京代表を務める傍ら、複数のスタートアップ企業でCFOや経営コンサルティングの役割を担う。

また、新村氏は日本CFO協会個人会員でもある。日本CFO協会は経営財務(コーポレートファイナンス)の国際資格認定機関であり、CFO、経営財務部門のネットワーク構築や各種セミナーや研修の開催、資格・検定試験の実施など、企業財務のプロを養成する教育事業を展開。経営・財務に関する高い技術と倫理観を持ったCFOの育成に努めるとともに、CFO機能強化のための支援活動に注力している。

株式会社リクルートキャリア コンサルタント 八尋弓枝

1994年株式会社リクルート入社。新卒および中途採用、従業員教育の分野で小規模企業から大手企業までを担当。事業部内でのトップセールス半年間連続など、アワード受賞多数。その後、株式会社リクルートエグゼクティブエージェントにて、役員等マネジメントクラスのキャリアサポートおよびリクルーティング(コンサルタント)を経て、2009年より経理財務領域を担当している。

CFOは年々重要性が増しているがCFOとして活躍するためには、経営企画・財務・経理の知識を横断で知っていることが必要となる。しかしながら、全ての領域を理解している人は少ないのが現状だ。CFOを目指す人にとっては今後のキャリア形成が重要となる。経営企画・経理財務のキャリアを考えている方はぜひ相談してほしい。

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