外食業界の2023年度上半期の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2023年度上半期の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひ参考にしてください。
外食業界の2023年度上半期の転職市場の展望を一言でいうと
業績回復で、店舗運営人材の採用が活発化。「商品開発」「海外店舗開発」の求人も。
求職者側は、勤務地の選択や短時間勤務など働き方の制度が充実している企業を好む傾向。
1.【外食業界】業界・企業側の動き
外食業界の求人が増加しています。コロナ禍が落ち着き、各社、来店客数が回復。また、コロナ禍でも売り上げが好調だった中食店は、外食店と比較すると体力を蓄えており、新規出店にも意欲的です。昨年比1.5倍の出店計画を打ち出している企業もあります。
各社、攻めに転じる中、店舗運営人材が不足しています。ニーズが高いのは店長・スーパーバイザークラスですが、即戦力の確保は難しいため、スタッフクラスも含めた幅広い層にアプローチしています。これまでは30代前半までの人が採用に至るケースが多く見られましたが、最近では40代後半の接客業経験者が採用された事例もあります。
最近の傾向として、店舗運営以外の職種の求人も増えてきました。業績が回復に向かう中、各社は次の一手を模索しています。方向性は企業によって異なりますが、「リスクを分散させるため複数業態を展開」「海外出店の強化」を図るケースが目立ちます。
攻めの動きに伴って増えてきたのが「商品開発」の求人。新業態の展開に際し、商品開発スペシャリストを求めています。また、従来と同様、他店との差別化を目的とした商品開発求人もありますが、採用条件に変化が表れています。「ホテルシェフ」「日本料理店の料理長」など、数十年の経験を積んで専門スキルを身に付けた人材を求める声が上がっています。通常の商品リニューアルのレベルを超えていこうとする意気込みが見てとれます。
海外事業においては、「店舗開発」の求人が出てきています。味覚の近さや物価を考慮し、ベトナムなどアジア圏をターゲットに出店攻勢をかけています。また、海外事業でも商品開発職のニーズがあります。現地の嗜好・風習に即した開発が必要であるため、例えば「ベトナムでの商品開発経験者」など、国まで指定して募集しているケースもあります。
2.【外食業界】求職者側の動き
もともと未経験者を多く受け入れている業界ですが、このところ採用に至っているのは販売・サービス経験者が中心です。他業界でも「未経験者歓迎」の求人が増えていることから、休日・労働時間の条件面で比較すると採用に苦戦することも増えてきました。
外食業界内での転職を希望する場合、「年収アップ」のほか「勤務地」にこだわる人が増えています。そのニーズに応えるため、従来は全国転勤を前提としていた大手企業も「地域限定社員」の制度を充実させています。
このほかにも、求職者に選ばれている企業は、柔軟な働き方の制度を整えています。一例を挙げると、休日を複数コースから選択できるようにし、定期的に選び直せる制度や時短勤務を導入している企業があります。「育児中は休日を増やし、子どもから手が離れたら通常勤務に戻す」など、ライフスタイルに合わせて働き方が調整できます。このように、企業は常に働き方の工夫・改善を継続していく必要があると言えそうです。また、離職防止のための入社後フォローや研修体制の強化、賃上げなどの取り組みも課題となります。
2023年度上半期のそのほかの業界の動向について知りたい方は、こちらを参考にしてください。
【2023年度上半期】転職市場の動向|17業界コロナ禍後の中途採用・転職活動の最新状況を解説
岡﨑貴絵
新卒で大手食品商社に入社。その後リクルートに入社し、一貫して法人営業に従事。現在は、主に外食業界などを中心に担当。店舗職から本部スタッフ・専門職まで幅広く採用支援を行う。