ビジネスシーンで耳にすることがある「イニシアチブ」という言葉は、使われる状況によってさまざまな意味を持ちます。シーン別の意味や使われ方、類義語、例文などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
「イニシアチブ」とは?
辞書における「イニシアチブ」の定義は、「率先して行動し、物事をある方向へ導く力」「主導権」などと説明されています。
「イニシアチブ」は英語でどう書く?
イニシアチブは、いわゆる「カタカナ英語」としても使われる言葉ですが、英語で表記すると「initiative」です。
英語の意味
英語の「initiative」は、名詞では「開始」「先導」「独創力」、形容詞としては「初めの」という意味を持ちます。このことから、英語では課題解決に向けての「構想」「戦略」「計画」といった意味を込めて「initiative」が使われます。
グローバルで使われる言葉の一例として「チェンマイ・イニシアチブ」という言葉が挙げられます。これは2000年、タイのチェンマイで東南アジア諸国連合(ASEAN)+日中韓蔵相会議が開かれ、東アジアにおいて経済危機が発生した場合の自助・支援のための地域金融協力で合意したものです。まさに構想・戦略・計画の意味合いが強いフレーズといえるでしょう。
また、英語では「やる気」「自発性(モチベーション)」を表す使い方もあります。日本では「イニシアチブを持つ」というと「力がある立場」「有利な立場」といったニュアンスを帯びていますが、英語の場合は「何かを良くするための積極的な行動、計画、方針、戦略、態度」というニュアンスが強いようです。
イニシアティブとの違い
「イニシアチブ」は、「イニシアティブ」と表記・発音することもありますが、特に区別されているわけではなく、意味は同じです。
【シーン別】「イニシアチブ」の意味
「イニシアチブ」という言葉は、使われるシーンによって意味が異なります。シーン別に意味を解説します。
ビジネスシーン
ビジネスシーンでは、複数の立場の関係において「主導権を握る」状態や、プロジェクトなどを「率先して推進する」姿勢などを表す際に使われます。
政治シーン
政治においては、「直接民主制」の形式の一つを指します。一定数の国民が立法に関する提案を行う制度「国民発案」を意味しています。
「イニシアチブ」の類語
イニシアチブに近い意味で使われる言葉としては、「リーダーシップ」「主導権」などがあります。それぞれの言葉の意味をご紹介します。
リーダーシップ
リーダーシップとは、組織・チームに対して方向性やビジョンを示し、事業やプロジェクトなどの目標達成に向けて物事を推進することを指します。リーダーシップは、組織・チームを「統率する」という意味合いが強いといえるでしょう。
イニシアチブは、結果として組織・チームを統率するケースもあるかもしれませんが、もともとの意味合いは「率先して行動すること」です。また、立場や力の上下関係を含まないため、役員・管理職など組織内で上位のポジションに位置するかどうか、プロジェクトのリーダーやマネジャーとして任命されているかどうかは関係ありません。
主導権
主導権とは、物事を動かしていく際に優位に立つこと、権限を持つことを指します。他者との相対比較で、上位の立場や有利な状況をつくるものです。
イニシアチブは、「主導権」と同じ意味で使われるケースもありますが、「物事を良い方向に進めるために積極的に行動する、働きかける、提案する」などの意味も持っている点に違いがあります。
「イニシアチブ」の使い方と例文
ビジネスシーンでの会話での「イニシアチブ」の使い方、例文をご紹介します。
イニシアチブを取る
組織・チームの目的・目標達成やプロジェクトのゴールを目指すにあたり、「積極的・率先して行動を取る」という姿勢を表したいときは、「イニシアチブを取る」という表現が適しています。
「今度の○○プロジェクトでは、我がチームがイニシアチブを取って進めていこう」
「◯◯市場の公正な発展のために、当社がイニシアチブを取って業界スタンダードを作っていく」
イニシアチブを持つ
積極性・やる気・実行力・行動力といった、ポジティブな姿勢を表したい場合は、イニシアチブを「持つ」という表現もマッチします。
「イニシアチブを持って、本日の会議を仕切ってほしい」
「○○さんは△△プロジェクトで、イニシアチブを持ち目標達成する力があることを証明した」
イニシアチブを握る
「優位な立場」「主導権」「権力行使」などを表現する場合は、イニシアチブを「握る」という表現があります。
「◯○社との交渉で、うまくイニシアチブを握ることに成功した」
「マネジャーとして、組織管理に対してもっとイニシアチブを握るべきだ」
「イニシアチブ」の発揮方法
ビジネスで「イニシアチブを発揮してほしい」と言われたら、どのような行動をとればよいのでしょうか。「率先して行動する」「積極的な姿勢で取り組む」「主体性を持って進める」といった意味で期待される場合、上司などから指示をされたり、周りの影響を受けたりして動くのではなく、次のような行動を意識してみましょう。
- 自分なりの視点で仕事の課題を発見し、解決策を考案する
- 現状の改善に向けて創意工夫する
- 小さなことでも責任を持って物事を進める
- 周囲に発信して働きかける
一方、「主導権を握る」「優位・有利な立場をとる」ことを求められた場合は、上記のような積極的な行動を起こすとともに、実績・成果を出して周囲からの信頼を獲得すること、物事を円滑に進めるスキルを(プロジェクトマネジメントスキル・プレゼンテーションスキルなど)磨くことが大切です。
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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