「マージン」という言葉は、業界によって意味や使い方が違うため、「それぞれどのような意味を持っているのか。どう使えばいいのか」と疑問を抱いている方もいるでしょう。今回は、マージンの意味や業界別の使い方、言い換え例、関連用語などをご紹介します。ビジネスシーンで使う際の参考にしてみましょう。
「マージン」とは?言葉の意味を解説
マージン(margin)とは、「原価と売価の差額、もうけ、利ざや」を意味する言葉です。ビジネスにおいては、「利益」「手数料」などの意味合いで使われることが多いでしょう。
一方、マージンにはそのほかの意味もあり、「担保物件の市価と貸付金の差額」「取引相場における証拠金」「印刷物のページにおける印刷部分を除いた上下・左右の余白」なども指しています。
同じマージンという言葉でも、業界によって意味合いが違う用語として使われるので注意しましょう。
業界別の「マージン」の意味と使い方の例
それぞれの業界における意味と使い方の例をご紹介します。
商社・小売業界
商社業界では、販売価格から仕入れ価格を差し引いた金額=「売上総利益(粗利益)」をマージンと呼びます。小売業界の場合も、販売価格から仕入れ価格(もしくは原価)を差し引いた「粗利益」のことをマージンとしています。「粗利益」は、オフィス・店舗の家賃や人件費などの必要な諸経費は差し引かれず含まれたままのため、これらの業界では、マージンを「もうけ」という意味で使うことはないでしょう。
<商社業界での使い方例>
この商品のマージンは30%のため、利益率が高い
<小売業界での使い方例>
マージン20%を乗せて販売価格する
人材・不動産・広告業界
人材・不動産・広告業界などの仲介ビジネスを行う業界では、マージンを「手数料」「紹介料」などの意味で使います。
人材派遣会社の場合には、派遣先の企業が労働者に支払う賃金とは別口で、派遣元の人材派遣会社に「手数料(マージン)」を支払うビジネルモデルが一般的です。
不動産会社の場合は、売主と買主、貸主と借主の仲立ちを行い、契約成立した際には、成功報酬として双方から「仲介手数料(マージン)」を受け取ります。
広告代理店の場合は、広告を出したい企業と、掲載媒体(TV・雑誌・新聞・Webメディア・SNSなど)、さらに広告制作会社との間をつないで制作進行・管理を手掛け、企業から「手数料(マージン)」を受け取ります。
<人材業界の使い方例>
専門性を持つエンジニア人材を派遣してもらう場合は、他の職種よりマージンも高い
<不動産業界の使い方例>
⾃社で物件の買取・販売を行うので、中間業者のマージンを抑えて安価で提供できる
<広告業界の使い方例>
広告掲載料金の20%をマージンとする交渉を進めている
印刷・デザイン業界
印刷業界の場合、マージンという言葉は、印刷物の「余白」「端」の意味で使います。本や雑誌、パンフレット、チラシなどを印刷物の紙を裁断する際に多少のズレが生じることを想定し、印刷範囲の周囲に「余白(マージン)」をもうけます。デザイナーなどが専門用語として使うケースが多いでしょう。
一方、デザイン業界では、ページデザインの際に見出しや文章などの各要素を見やすくレイアウトする際に、「余白(マージン)」を空ける設定をします。そのため、Webデザイナーもマージンという言葉を使うことが一般的でしょう。
また、出版業界でマージンという言葉を使う場合は、印刷業界と同様に、印刷物における「余白」を意味するケースもある一方、本を卸す取次店や仕入れて販売する書店における「粗利益(販売マージン)」を意味するケースもあります。
<印刷業界の使い方例>
ページ四方のマージンを広くとって、高級感を出す
<Webデザイン業界の使い方例>
画像の周囲のマージンを60pxにしてゆとりを持たせたい
投資業界
投資業界には、証拠金を利用して取引を行う商品があり、マージンはこの「証拠金」のことを指しています。例えば、FX(外国為替証拠金取引)の場合、FX商品取引を手掛ける証券会社などの業者に一定の証拠金を預けることで、最大25倍(個人の場合)の金額の取引ができる「証拠金取引」という仕組みがあります。
<投資業界の使い方例>
10万円のマージン(証拠金)で、10倍のレバレッジをかければ100万円の取引ができる
「マージン」の言い換え例を意味別に紹介
「もうけ」「手数料」「余白」「証拠金」を意味するマージンの言い換え例について、それぞれご紹介します。
「もうけ」を意味する言い換え例
- 利益
- 売上総利益・粗利益(売上から原価を引いた後に残る利益)
- 差益(売買や為替の変動などで発生する利益)
- 利ざや(売値と買値、または貸金と借金の差額によって生じる利益)
「手数料」を意味する言い換え例
- 手数料
- 相談料
- 仲介料
- コミッション(販売手数料)
「余白」を意味する言い換え例
- 余白
- 空白
- スペース
- ブランク
- 縁(ふち/へり)
- 端
- 境目
「証拠金」を意味する言い換え例
- 保証金(契約・取引などにおいて、将来発生するかもしれない債務の担保のために特定の関係性のある者の間で授受される金銭)
- 担保金(信用取引・先物取引・オプション取引などの証拠金取引をおこなう際に、証券会社に差し入れる委託保証金)
- デポジット(一時的な預かり金や保証金のこと。海外のホテルなどに宿泊する際などに求められる)
- 手付金(不動産などの売買契約を締結する際に契約の証や契約の解除などの目的のために支払うもので、法的効力を持つ)
- 頭金(住宅や車などを購入する際に、最初に自分の資金から捻出して支払う金銭のこと)
- 内金(商品を売買した際の代金、もしくはサービスの報酬などとして支払われる金銭のうち、一部前払いされる金銭のこと)
マージンの関連用語
ここでは、さまざまなマージンの関連用語について解説します。
マージンミックス
「マージンミックス」とは、商品販売に使われる手段で、粗利益率の高低を組み合わせた販売を意味します。粗利益が高い商品と低い商品を組み合わせて販売することで、安定した粗利益率と顧客単価保持を目指します。
バックマージン
「バックマージン」は、メーカーや卸会社が販売した商品価格をさかのぼって、利益の一部を値引きの形で払い戻すリベートのことを意味します。日本独特の商慣習の1つとされています。
マージン率
「マージン率」は、派遣業界で使われる用語です。派遣会社は、派遣先企業から派遣料金を受け取りますが、派遣スタッフへ支払う賃金部分を除いた額の合計を「マージン」、マージンが派遣料金全体に占める割合のことを「マージン率」と言います。
マージンコール
「証拠金(マージン)」を担保に外国為替の取引を行うFXでは、ポジションを保有し続けるための最低証拠金を割り込んだ場合に、追加の証拠金やポジションの決済が必要となります。
「マージンコール」とは、口座の資金額がポジションを保有し続けるために必要な最低金額を下回っていることを金融機関が投資家に知らせる緊急時の対応のことを指します。マージンコールを受けた投資家は、定められた期日までに入金もしくはポジションの決済をすることが必要であり、期日までに入金がない場合には、ポジションは強制決済されることになります。
セーフマージン
動画編集ソフトにおいて、テキストの挿入や編集の際に表示されるガイド線を「セーフマージン」と呼びます。テレビや放送用モニタなどの画面上に、タイトルなどのテキストをはみ出すことなく正しく表示するためには、セーフマージン内に収めることが必要です。セーフマージンには、タイトルテキストなどを収める「タイトルセーフマージン」 と、その他の重要な項目を表示するための 「アクションセーフマージン」 という 2 種類のマージンがあります。
安全(セーフティ)マージン
「安全(セーフティ)マージン」は、「安全性確保のために持たされているあそび・余裕」を指します。例えば、自動車運転においては、安全を確保するために車間距離に余裕を持たせたり、スピードを制御したりすることを意味します。
また、機械・工学系などの分野では、機械部品などがどのくらいの負荷に耐えられるのかを計算した上で、安全確保のためにさらに強度を上げた設計を行います。10kgの負荷に耐えられる部品に対し、経年劣化なども踏まえた上で15kgの強度を持たせた場合は、差し引いた5キロ分が「安全(セーフティ)マージン」となります。
一方、医療において腫瘍切除を行う際には、周囲に余裕を付けて切除する手術方法があり、この部分を「安全域」「セーフティーマージン」と呼びます。
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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