仕事を辞めると決意したら?退職を切り出すタイミングや理由の伝え方、必要な準備を解説

仕事 辞める

「仕事を辞める」と決めたら、その後は退職までに何をすればいいのでしょう。転職活動のタイミングや退職意思の伝え方、円満退職のポイントなどについて、社会保険労務士の岡佳伸氏監修のもと、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

まずは「仕事を辞める理由」を整理する

「仕事を辞める」と決意したら、行動に移す前に、まずは辞める理由を整理してみましょう。

「辞めたい」という感情に支配されると、どうしても冷静さを失いがちです。一時の感情で退職を選ぶのではなく、まずは「なぜ仕事を辞めたいのか」という理由を整理したうえで上司と話し合ったり、人事担当部署に相談したりしてみましょう。もしかしたら担当業務を変えたり、他部署に異動したりするなど、辞めずに解決できる方法を見つけられるかもしれません。

また、なぜ辞めるのかを冷静に見つめ直すことで、転職の目的が明確になり、転職活動でもぶれずに前に進めやすくなるという効果もあります。収入なのかやりがいなのか、さらなる成長なのか…などを中長期視点で考え、目的を実現するには転職がベストであると納得できたら、退職に向けて行動を始めましょう。

仕事はいつ辞める?退職時期の決め方

退職時期の目安を決めるにあたっては、まず会社の就業規則を確認しましょう。退職希望日の何日前までに退職を申し出る必要があるか、また、有給休暇や賞与の支給要件などについても調べたうえで検討すると良いでしょう。

また、一般的に、退職の手続きや後任への引き継ぎなどには2週間~1カ月程度かかります。営業職などの場合は、取引先への挨拶回りなどにも時間を要するでしょう。管理職など責任ある立場の場合は、退職することで人事異動や組織変更が生じたり、同等の経験やスキルを持った人材を外部から採用したりするケースもあり、引き継ぎにさらに時間がかかる可能性もあります。引き継ぎにはある程度の時間がかかることを想定して、退職までの期間を考えるようにしましょう。

なお、退職時期は繁忙期をできるだけ避けることをおすすめします。繁忙期は退職交渉が進みづらいうえに、「職場のメンバーに負担をかけてしまう」と感じるなど、心情的にも交渉を進めづらくなるかもしれません。同様に自分がメインで動いているプロジェクトがあるときも、それがひと段落したタイミングを見計らったほうが良いでしょう。

転職活動は「在職中」「退職後」のどちらが良いか

「仕事を辞めて転職する」と決めたら、在職中に転職活動するか、退職後に転職活動するかを選択しましょう。それぞれの場合のメリット・デメリットをご紹介します。

在職中に転職活動をするメリット・デメリット

メリット

  • 【収入】第一に、収入面の不安がない点が挙げられます。仕事をしながら転職活動に臨めば、給与を得ながら転職活動に取り組むことができるでしょう。
  • 【ブランク】ブランクなしで次の仕事に就けるのもメリットです。ブランクが長引けば、応募先の企業に「仕事への勘やスキルが鈍っているのではないか」と懸念される可能性もありますが、在職中であればそのような心配はありません。
  • 【選択肢】転職活動を始めても、希望に合った転職先が見つからないケースや、転職活動を通して「今の勤務先のほうが自分に合っている」と気づかされるケースもあるため、現職にとどまるという選択肢がある点も在職中ならではのメリットです。

デメリット

  • 【時間的・体力的な負担】仕事を続けながら転職活動に取り組む場合、自己分析や業界研究、エントリーシート作成などを夜間や休日に行わなければならないことも多く、時間的にも体力的にも負担が伴います。
  • 【スケジュール】現在の業務が忙しいと、なかなか転職活動に時間が割けない、面接日程の調整が難しくなる、などの理由で転職活動期間が長引いてしまうかもしれません。
  • 【入社日の調整】希望する転職先が見つかったとしても、退職時期と入社時期の折り合いがつかないことも考えられます。特に、現職で責任ある立場にある人ほど、強い引き止めに遭ったり、引き継ぎに時間がかかってしまったりする可能性があります。

退職後に転職活動をするメリット・デメリット

メリット

  • 【時間的・体力的な負担】「転職活動に集中できる」点がメリットです。仕事と並行して行う必要がないため、自己分析や企業研究にじっくり取り組むことができ、時間的にも体力的にも余裕を持って転職活動に臨むことに期待できるでしょう
  • 【スケジュール】面接日程のスケジュール調整がしやすいのも退職後ならでは。中途採用では、募集人数そのものが少なく、選考を進めた順に採用枠が埋まるケースもあるため、平日昼間の面接にも即座に対応しやすいのはメリットと言えるでしょう。
  • 【入社日の調整】内定後に入社日の調整がしやすく、企業の要望に応じて、すぐに入社することができる可能性があります。

デメリット

  • 【収入】退職後は一時的に収入が途絶える場合が多いでしょう。希望に合う転職先が見つからず、転職活動が長引いてしまった場合、生活への不安などから焦りが生じ、希望に合わない企業を選んでしまう可能性が考えられます。
  • 【ブランク】ブランクが長引くほど「その期間に何をしていたのか」「仕事への意欲が低いのではないか」などと応募企業に疑問や懸念を抱かせる可能性があります。また「仕事勘やスキルが鈍ってしまっているのではないか」と不安に思われるケースもあります。

退職するまでの全体的な流れとスケジュール

退職を決めてから実際に退職するまでの流れの一例をご紹介します。以下のステップを参考に退職までのスケジュールを考えてみると良いでしょう。

<退職希望日の1~2カ月前>
直属の上司へ退職の意思表示をする

<退職約1カ月前>
・退職願・退職届を提出する
・業務の引き継ぎを進める

<退職10日前くらいまでに>
・お世話になった方への挨拶を済ませる

<退職当日までに>
・身の回りの整理をする
・会社から必要書類を受け取る
・会社からの貸与品などを返却する

退職意思の伝え方と退職交渉のポイント

退職の意思を伝える際には、以下のポイントに留意しましょう。

退職する意思を伝えるタイミング

会社の就業規則に、「退職する際にはいつまでに退職を申し出なければならないのか」が明記されていることが多いので、まずは就業規則を確認し、それに従いましょう。

退職の申し出は「退職希望日の1~2カ月前まで」と規定している会社が多く見られるようです。その後、会社の規定に従い、退職1カ月前くらいに正式な「退職願・退職届」を提出することになります。時間の猶予がなくやむを得ない場合でも、退職日の2週間前ぐらいまでには提出するようにしましょう。

最初に退職する意思を伝える相手

退職する意思を最初に伝える相手は「直属の上司」です。その上の部門長や人事担当者、同僚などに先に伝えるのは避けたほうが良いでしょう。上司の立場や感情を損ねることにもなりかねず、トラブルにつながることも考えられますので気をつけましょう。

直属の上司に退職意思を伝える際には、口頭またはメールで「ご相談がありますので、お時間をいただけますでしょうか」などとお願いし、退職の意思を丁寧に伝えましょう。テレワーク中心の場合は、オンライン会議や電話などで上司に時間を取ってもらうと良いでしょう。

納得してもらうための退職理由の伝え方

退職意思を伝える際に、詳しい退職の理由を聞かれることがありますが、その場合は相手に納得してもらえる理由を伝えることが大切です。現状に対する不満から退職する場合もあると思いますが、それを率直に伝えてしまうと、「不満な点を解消するので思いとどまってほしい」と引き止めの理由にされる可能性もあります。退職理由は、「転職によって自身が実現したいこと」など、不満の裏にある前向きな思いを説明することをおすすめします。「今の職場ではその思いが叶えられない」という事実を伝えることで、理解を仰ぎましょう

退職までのスケジュールを話し合う際のポイント

退職までの具体的なスケジュールを話し合う際には、自分の意思だけでなく、現職への配慮も必要です。職場の負担を考えてタイミングを決める、引き継ぎの時間を十分設ける、周囲の状況を見計らって有給休暇の時期を調整する、などといった心遣いも一案です。

退職しても、思わぬところで今の会社や同僚たちとかかわる可能性はあります。自分の都合ばかりを通して無理に退職すると、社内の評判を落とし、将来的な仕事に影響するケースもあり得るので、「立つ鳥跡を濁さず」の姿勢を大切にしましょう。

退職日が決まってから退職までの流れ

退職が決まってからやるべきことや、手続きなどは、基本的に会社とすり合わせながら指示に従って進めましょう。ここでは、退職までの流れの一例をご紹介します。

退職届の提出

現職の企業に退職の意思を伝えて受理された後、期日までに退職届を提出します。退職届の書式は企業によって異なるので、上司や人事などに確認しましょう。

業務の引き継ぎ・関係者への挨拶

一般的には退職1カ月前くらいから残務整理や引き継ぎを進めます。後任者が決まっていなくても、マニュアル作成や資料の整理などを進めておきましょう。
社内外の関係者に退職の挨拶をする時期は、上司と相談して決めます。人事が公表する前に、周囲の人に退職する旨を告げるのはルール違反となることもあるので注意が必要です。お世話になった人には直接会うか、メールで退職日と感謝の気持ちを伝えましょう。

現職の企業に返却するものの確認

現職の企業に返却する書類や備品には、次のようなものがあります。

  • 健康保険被保険者証(2024年12月2日から新規発行停止)
  • 社員証・入館証
  • 名刺
  • 仕事で使用した書類・データ
  • パソコン・携帯電話・タブレットなど

現職の企業から受け取るものの確認

現職の企業からは次のものを受け取ります。

  • 離職票
  • 源泉徴収票
  • 雇用保険被保険者証(会社に預けている場合)
  • 年金手帳(会社に預けている場合)
  • 退職証明書(必要に応じて)

有給休暇の消化

有給休暇が残っている場合は、引き継ぎの進捗状況を踏まえて消化を検討します。ただし、転職先と入社日がすでに決まっていれば、残った有給休暇を消化しきれないかもしれません。どうしても有給休暇を消化したい場合は、転職先に相談して入社日の調整をしてもらうことも一案ですが、転職先の状況によっては、入社日の変更が難しいケースもあることを知っておきましょう。

退職後に必要な手続き

退職準備と並行して、退職後に必要になる手続きの準備も進めましょう。「すでに転職先が決まっている場合」と、「転職先が未定の場合」でご紹介します。

すでに転職先が決まっている場合

転職先への入社にあたって、必要な手続きは大きく2つです。1つは健康保険や年金などの公的な手続き、もう1つは卒業証明書や免許・資格の証明書など、企業によって提出を求められる書類の手続きです。

例えば以下のようなものがありますので、転職先の指示に従って早めに準備をしましょう。

公的な手続きに必要な書類

  • マイナンバー(個人番号)
  • 健康保険被扶養者(異動)届(被扶養者がいる場合)
  • 雇用保険被保険者証(被保険者番号がわかるだけでも良い場合がある)
  • 年金手帳(提示を求められた場合)
  • 源泉徴収票 (その年に前職から収入があった場合、年末調整までに提出する)
  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 給与振込先届出書
  • 健康診断書

企業によって提出を求められる書類

  • 退職証明書
  • 入社承諾書・入社誓約書
  • 身元保証書
  • 免許や資格の証明書
  • 住民税の異動届(住民税の特別徴収を継続したい場合)
  • 卒業証明書

転職先が未定の場合

次の転職先が決まっていない場合には、自身で各種公的手続きを行うことが必要です。

  • 健康保険…任意継続被保険者制度を利用するか、国民健康保険に加入。家族の健康保険に被扶養者として加入することもできる。
  • 雇用保険(失業保険)…ハローワークに離職票などを持参し、受給申請をする。
  • 公的年金…国民年金の加入(種別変更)手続きをする。
  • そのほか…住民税の納付、年末調整、確定申告などについて確認する。

転職エージェントの活用で退職や転職もスムーズに

転職エージェントでは、転職先の紹介だけでなく、転職活動を進める中で段階ごとにやるべきことをサポートします。退職交渉においては、退職の申し出時期や退職理由の伝え方といった転職活動の進め方のアドバイス、転職先企業とのやりとりの仲介、会社の引き止めにあった場合などの相談や、心理面のサポートなども受けられるケースがあります。また、スカウトサービス経由で転職エージェントを利用した場合も、同様のサービスが受けられる可能性があるでしょう。
転職活動や退職手続きをスムーズに進めるためにも、ぜひ転職エージェントやスカウトサービスを活用しましょう。

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監修

岡 佳伸(おか よしのぶ)氏

大手人材派遣会社にて1万人規模の派遣社員給与計算及び社会保険手続きに携わる。自動車部品メーカーなどで総務人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険適用、給付の窓口業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として複数の顧問先の給与計算及び社会保険手続きの事務を担当。各種実務講演会講師および社会保険・労務関連記事執筆・監修、TV出演、新聞記事取材などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。