転職活動の書類選考とは?選考期間や通過率を高めるためのコツを解説

書類選考

転職活動では、企業に応募すると最初に「書類選考」が行われ、その評価によって面接に進めるかどうかが決まることが一般的です。そこで、書類選考に提出する書類の種類や書類選考にかかる期間の目安、企業が見ているポイント、応募書類をブラッシュアップするコツなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

書類選考とは

転職活動における書類選考とは、一般的に、応募者から提出された履歴書および職務経歴書などをもとに最初に行われる選考です。企業が定めた一定の基準に基づいて評価され、次の選考に進めるかどうかが判断されます。

書類選考に必要な応募書類

書類選考に必要な応募書類は、一般的には「履歴書」と「職務経歴書」です。職種によっては「ポートフォリオ」の提出を求められることもあります。

履歴書

履歴書とは、氏名や連絡先、年齢、学歴、職務経歴など、応募者のプロフィールを記載する書類です。厚生労働省が作成した様式のほか、さまざまな様式があります。「志望動機」「自己PR」などの欄が設けられている様式もあります。

職務経歴書

職務経歴書とは、職務経歴や仕事で活かせるスキルなどを記載する書類です。これまでの在籍企業・所属部門・担当業務などの情報から、企業の採用担当者は自社で活躍できる可能性がある人材かどうかを判断します。職務経歴書は履歴書のようにある程度の様式が決まっているわけではないため、記載項目の自由度が高いのが特徴です。したがって、職務経歴書には「活かせる経験・知識・技術」や「自己PR」などの欄を設け、実績や強みとするスキルのほか、取り組み姿勢などをアピールすることも可能です。

ポートフォリオ

ポートフォリオとは、「作品集」を指します。WebデザイナーやUI/UXデザイナーといったクリエイティブ職の転職活動で提出を求められる場合があります。これまで手がけてきた作品のコンセプトやデザインなど、制作実績をアピールするツールとして提出します。ビジュアルを見せることで、得意とするテイストや作品の幅が伝わるでしょう。

書類選考にかかる期間の目安

応募書類の提出から選考結果の通知を受けるまでの期間は、応募時に企業から目安を示されることもありますが、一般的には1週間程度であることが多いようです。ただし、「応募者数が多い」「複数の部署で選考を行う」といった事情がある場合は、2週間程度かかることもあります。

転職エージェントを通じて応募している場合、書類選考期間の目安を教えてもらえることもあります。また、他社の選考状況との兼ね合いで早く結果を知りたい場合は、転職エージェントに進捗確認の相談をしましょう。

書類選考で企業が見ているポイント

書類選考を通じて企業が判断していることとして、応募者の活躍可能性や定着可能性などが挙げられます。これらを判断するために、企業は、次のような観点で応募書類を確認しています。なお、募集要件や社風にマッチしていたとしても、複数の求職者から応募があった場合は、より活躍が期待できそうな求職者に絞って選考を行うというケースもあります。

経歴や経験・スキルが募集要件に合致しているか

応募者の経歴や経験・スキルが募集要件に合致していることを採用の前提条件とする企業は多いようです。ただし、募集要件をすべて満たしていない場合でも、「募集職種や今回の募集で求める人材要件のなかで優先順位が高いものに合致している」「ポテンシャルを感じる」といった場合は、書類選考を通過するケースもあるようです。

募集職種に見合った経験やスキル、実績があるか

応募者の経歴や保有資格、職務内容の詳細(担当業務の規模や影響範囲、実績、取り組み、創意工夫の内容)などから、応募者の経験やスキル・実績の程度を測り、今回の募集要件や募集職種での仕事の進め方とのマッチ度合いを見ることが多いようです。

自社の社風に合っているか

自己PRや職務内容などから読み取れる仕事の進め方や仕事に対する価値観などが、自社の価値観や考え方と合っているかも確認することが多いようです。

書類選考を通過しない場合の要因例

前述した企業の着目点から、書類選考を通過しない場合の要因としては次のものが挙げられます。

  • 募集要件を満たしていない
  • 募集要件を満たしていても、具体的な経験・スキル・実績などが求める水準に達していない
  • 募集要件を満たしていても、他によりマッチした応募者がいた
  • 募集要件を満たしていても、自社で想定されるキャリアや社風とのミスマッチが大きい
  • 応募書類の内容が不十分(正確性に欠ける、抽象的、曖昧な記載でどこに強みがあるかわからない、信憑性がないなど)

応募書類作成の基本

前述した企業の着目点などをふまえると、応募書類を作成する際の基本的な留意事項としては、次のような点が挙げられます。

誤字・脱字や記載漏れなどの不備をなくす

応募企業で高く評価されるような経験・スキルを持っていたとしても、応募書類に誤字・脱字や記載漏れなどがあると「仕事が雑なのではないか」「入社意欲が低いのではないか」といったマイナス印象を抱かれるかもしれません。隅々まで確認した上で提出しましょう。

読みやすさを意識する

多くの応募書類に目を通している採用担当者の場合、書類を確認する時間が限られているため、読みにくい体裁や内容だと意図やアピールポイントが十分に伝わらない可能性があります。読みやすい文字の大きさや、多すぎない情報量、バランスの良い文字の配置を意識しましょう。

特に、プレゼンテーション書類や報告書などを作成する職種に応募する場合、文書作成スキルや読み手への配慮などを確認されている可能性もあるため、丁寧に作成しましょう。

応募する求人に合わせたアピールをする

職務経歴書には、自分が自信を持っている経験・スキル・実績を強調して記載したくなりますが、「応募企業のニーズ」を意識することが大切です。優れた経験・実績でも、応募企業が求めていなければ評価に結びつかない可能性があります。求人情報の詳細を確認して応募企業が求めている人物像をつかみ、自身の職務経歴のなかで合致する経験・スキルを強調してアピールするといいでしょう。

応募書類の通過率を上げるためのポイント

さらに、書類選考の通過率を上げるためのコツとして、次の点に留意して応募書類を作成するといいでしょう。

履歴書の場合

情報を正確に記載する

誤字・脱字がないことはもちろん、学校名や企業名、資格の名称などを正確に記載する、西暦と和暦を混在させずにどちらかに統一するなど、情報は正しく記載しましょう。

「本人希望記入欄」に必須ではない希望は書かない

「本人希望記入欄」は、一般的には、入社にあたってどうしても譲れない希望がある場合に記入する欄です。採用担当者はその内容を「入社に必須の条件」と理解し必要な配慮を検討することがあるため、記載内容を叶えることが難しいと判断されると、次のステップに進むことが難しくなる可能性があります。必須ではない希望を記載するのは控えた方がいいでしょう。

自己PRや志望動機を丁寧に記載する

自己PRや志望動機は、前述したように、企業が求める経験やスキル・実績、また、社風とのマッチ度合いや、志望度などを判断する際の材料の1つになります。とりわけハイクラス人材の場合、他の応募者も同様に優秀かつ経験豊富で競争が激しいことや、できるだけ活躍・定着可能性が高い人材を即戦力として採用したいという企業の意向が働くことがあります。したがって、履歴書ないし職務経歴書でも、自己PRや志望動機を通じて経験やスキル、実績、社風などのマッチ度の高さや志望度の高さを伝えられると評価を得られる可能性が高まるでしょう。

取得を目指している・見込みである資格も記載する

特にハイクラス人材の転職では、これまでの実績と実務経験が最も重視されます。しかし、業務と密接に関連する難関資格の取得を目指していることは、高い専門性や、常に自己研鑽を怠らない姿勢を示す材料となり得ます。履歴書の「免許・資格欄に「○○資格取得のため勉強中」と記載する際は、それが単なるアピールではなく、担当する職務にどのように活かせるかを明確に説明できるよう準備しておくといいでしょう。

職務経歴書の場合

「成果」「プロセス」も記載する

所属部署・担当業務・担当プロジェクト名だけを羅列するのではなく、「向き合った課題・目標」「課題解決・目標達成のために立てた戦略・施策」「挙げた成果」まで記すといいでしょう。読み手は「自社でも同じように活躍してもらえそうだ」と、活躍のイメージを持ちやすくなります。

具体的な数字を示す

過去の実績を記載する場合、採用担当者が規模や影響範囲などをイメージしやすいよう、なるべく具体的な数値を添えるといいでしょう。例えば、営業・マーケティング職であれば「売上高:○○円」「獲得顧客(ユーザー)数:○件」「顧客満足度○%アップ」などです。管理部門であれば、業務改善などを行った場合、「○○コストを○%削減」「残業時間○時間削減」といった数値の変化を示すといいでしょう。

表や見出しなどを活用する

職務経験が豊富であるほど、時系列ですべての職務経歴を記載するだけだと、採用担当者はその人の職務経歴のポイントをつかみにくくなる可能性があります。担当プロジェクトや成果・実績、活用した技術など、複数の項目を伝えたい場合は箇条書きや表にまとめると見やすくなります。項目を【 】で囲む、冒頭に●をつける、下線を引くなど、情報を整理して文書化するといいでしょう。

職務経歴書見本を参考にする

自身の経歴をどのような表現で記載すればいいのか、どのような項目を盛り込めばいいのかわからない場合は、職務経歴書見本を参考にするといいでしょう。

第三者に意見をもらう

応募書類を作成したら、友人・知人・家族など第三者に見てもらうという方法があります。可能であれば、人事や採用の経験者だとアドバイスがより的確です。自分ではわかっていても、他者から見ると理解しにくい表現をしていることもあるものです。伝わりにくい記述をチェックしてもらい、ブラッシュアップしましょう。

応募書類は転職活動を進めながら改善しよう

応募書類は、転職活動を進めながらブラッシュアップしていきましょう。書類選考通過率や面接で企業の反応を見ながら随時改善していきましょう。

なお、応募書類はメールでの送付が一般的ですが、企業によっては郵送での提出を求められることもあります。郵送の場合は「送付状(添え状)」を同封することが一般的です。送付状は必須ではないものの、同封することで応募ポジションや同封書類を明示できます。書き方や見本について、以下の記事で紹介しているので参考にしてみてください。

転職エージェントからアドバイスをもらうのも一案

転職エージェントのサポートのひとつとして、履歴書や職務経歴書の添削を行っていることがあります。転職エージェントは、転職市場で評価されやすい経験・スキルの傾向を把握していることもあるので、職務経歴のうち何を強調してアピールするといいか、アドバイスを得られるでしょう。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。
アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。