転職の目的を明確にする3つのアプローチ~転職活動への活かし方も解説~

転職 目的

転職を決意したものの、目的があいまいなために、転職活動が順調に進まないということがあるようです。目的が明確でないと、志望動機や自己PRが説得力を欠いてしまう可能性も否定できません。逆に、目的を明確にすることで、転職活動自体に良い影響をもたらすことも期待できます。そこで今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、転職の目的を明確にする方法や、明確化した転職の目的を転職活動で上手に活かす方法を解説します。

転職の目的を明確にするメリット 

転職の目的を明確にすることは、転職活動に良い影響をもたらします。実際には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ミスマッチを防ぐことができる

目的を達成するための条件をもとに企業選びをすることで、自分に合った企業を絞り込むことができ、結果としてミスマッチを防ぐことができる可能性があるでしょう。スカウトサービスや転職エージェントを利用する場合は、担当者に転職の目的を伝えることでよりスムーズに企業を紹介してもらうことができそうです。 

選考で活用できる

転職の目的を盛り込むことで、志望動機や自己PRに説得力を持たせることができるため、応募書類や面接など、選考の場面で役立つことが期待できるでしょう。また、企業側に応募者に対する理解を促すこともあるでしょう。 

複数の内定が出た際の判断材料にできる

複数の内定で迷ったときは、転職の目的を達成できるかという観点を持つことで判断しやすくなるのも、目的を明確にするメリットです。最終段階で判断することで、入社後のミスマッチを予防することもさらに期待できそうです。 

転職後(入社後)の活躍やその後のキャリア形成に役立つ

応募者自身が「この目的を今回の転職で実現したい」という目的意識を持つことで、モチベーションが高まったり、新しい環境での学び直しや適応がしやすくなったりすることも挙げられるでしょう。特に管理職や役員を募集する企業は、「早期に高いパフォーマンスを発揮して既存社員に刺激を与えて欲しい」「組織の核となるリーダーシップを発揮して欲しい」といった期待を抱いているケースもあるため、目的が明確なことが転職後の活躍に功を奏するケースも多いようです。 

転職の目的を明確にするための方法

転職の目的を明確にするには、どのようなやり方があるでしょうか。3つのアプローチを紹介します。

【アプローチ1】転職・退職理由を掘り下げる

転職したい理由や、退職したい理由を自分の中で掘り下げて、自分が転職に何を求めているのか、転職によって何を得たいのかを整理してみるやり方です。現職に対する不満や不安な点など、退職理由の原因を解消するアプローチもあり得るでしょう。

【アプローチ2】転職の優先順位を考えてみる

転職に求める複数の条件について、優先順位をつけるやり方です。条件を「MUST(どうしても譲れない必須条件)」と「WANT(必須ではないが『あれば尚良い』条件に分けてみる)」に分類し、「MUST」に入ったものを優先して、目的とします。 

【アプローチ3】モチベーショングラフを使って自己分析する

「モチベーショングラフ」を作成して、「自分はどのようなことに対してモチベーションが上がるのか」「どのような場面でやりがいや楽しさを感じるのか」を明確にし、それを重視する方法です。下記リンク先記事からダウンロードできる「自己分析シート」を利用しても良いでしょう。 

転職の目的から“軸”を定めるコツ

転職の目的を明確にしたら、次は目的を達成するための条件、いわゆる“軸”を定めて、転職活動に活かしましょう。目的別に軸を定めるコツを紹介します。 

現職への不満解消が目的の場合

仕事内容や労働環境、給与・待遇、人間関係など、現職の何に対する不満なのか、問題点を整理したうえで、問題を解消する方向で“軸”を定めるとよいでしょう。例えば、現職において成果が評価されにくい体制に対する不満解消が目的であれば、評価体制が整備され、報酬に反映される制度が整っていることなどが、“軸”となるでしょう。 

キャリアプラン実現が目的の場合 

思い描いているキャリアプランを明確にして、具体的な職種やポジションなどに落とし込むことで“軸”を定めることができるでしょう。例えば、現職からのキャリアアップを目的としているのであれば、より責任が重く、裁量権のあるポジションであることを“軸”とすることなどが考えられます。 

ライフステージの変化への対応が目的の場合

結婚、出産、育児、介護、家族の事情など、プライベートでのライフステージの変化に応じて、働き方を変えることが目的であれば、ワーク・ライフ・バランスが整うスタイルで働ける環境であることが“軸”となるでしょう。例えば、「育児を優先して働きたい」という目的がある場合は、「残業が少ない」「フレキシブルな労働環境」などになるでしょう。 

転職の目的を活かして志望動機を伝える方法と例文

転職の目的を活かして志望動機を伝えるには、どのような方法があるでしょうか。目的に応じたポイントと、応募書類での例文を紹介します。 

スキルアップしたい場合

「キャリアアップ」や「スキルアップ」という目的は、人によって方向性や定義が異なるため、転職することで、どのようなキャリアを築きたいのか、どのようなスキルを身につけたいのかを、具体的に伝えるようにしましょう。 

【スキルアップしたい場合の例文】

現在は総務課長として働いておりますが、人事や情報システム部門など、一通りのバックオフィス経験とマネジメント経験があります。これからも会社を支える基盤となる、バックオフィス領域でより高い視座を持ち、スキルアップしていきたいと考えています。自身の今後のキャリアと成長を考えると、貴社のように新たな成長フェーズに向けて多様なチャレンジができる環境で、より重い責任と裁量権を持って自分のスキルを磨いていきたいと考えております。これまでのバックオフィス経験を活かしながら、管理部門全体を管掌できるようなマネジメント力を持つ人材へと成長したいと考えております。

ワーク・ライフ・バランスを充実させたい場合

ワーク・ライフ・バランスを充実させたい場合、家庭の事情などプライベートな事柄は月即伝える必要はありませんが、伝えたい事項がある場合は伝えましょう。例えば。育児や介護などを理由とするのであれば、家族など周囲のサポート体制や緊急時のフォロー体制を整えていることを伝えれば、「業務に支障が出るのではないか」という採用担当者の不安を払しょくできることも期待できるでしょう。 

【ワーク・ライフ・バランスを充実させたい場合の例文】

技術力を活かして独自性のあるプロダクトを多数保有し、各領域で優れた人材が集っている貴社の成長性に魅力を感じております。そこで、現職のエンジニア経験を強みに、人事担当として貴社の新卒・中途採用に携わることで企業価値をさらに高めることに貢献し、将来的には事業・組織の成長を経営観点から実現する、戦略人事としての役割を果たしていきたいと考えております。

前職は長時間労働が常態化しており、ワーク・ライフ・バランスを整えることが難しい環境でした。貴社はフレキシブルな労働環境やサポートがあり、自分の時間を大切にしながら、仕事に全力を注ぐことができる環境が整えられていることに魅かれ志望いたしました。

社会貢献をしたい場合

社会貢献できることがモチベーションになる人は、その企業の理念や経営方針、エシカルな取り組みなどに共感できることなどを伝えるとよいでしょう。その企業の実態をとらえた内容とすることで、説得力が増すことも期待できます。 

【社会貢献をしたい場合の例文】

貴社の社会貢献度の高いサービスに魅力を感じております。現職を通じて資源関連のプロジェクトに複数関わる中で、地球資源の問題に興味を持ったことから、環境負荷の低い新素材の開発事業に関わりたい思いが強くなり、貴社の事業が、まさにそれに該当すると考えました。ミッション・ビジョン・バリューにも共感できる貴社で、社会全体にインパクトを与える取り組みをしていくことを希望しております。

転職の目的を達成するための入社先の選び方

転職先を決める際には、本当にその企業で転職の目的を達成できるのかを確認することが必要です。入社先を選ぶ際の確認のポイントを紹介します。 

不満解消やライフステージ対応が目的の場合

不満解消が目的の場合は、労働条件や社風等、不満の原因となった点が本当に解消されるか確認しましょう。ライフステージの変化に対応するための転職など、働き方を重視するのであれば、休暇制度の利用状況やテレワークの導入具合など、社員の働き方の実態を確認することも必要でしょう。 

キャリアプラン実現が目的の場合

キャリアプランの実現が目的の場合は、社員の平均的なキャリアパスや、昇進例などを尋ねるとよいでしょう。スキルアップを狙うのであれば、研修制度等も確認しておくことをお勧めします。 

スカウトサービスや転職エージェントの利用も有効

転職によって目的が達成できるかどうかを、自分だけで確認することには、時として困難も伴います。転職エージェントを利用している場合は、担当者に相談することで、応募先企業の詳しい情報を得たり、チェックの仕方やチェックポイントを教えてもらったりすることも検討するとよいでしょう。

スカウトサービスの場合は、自身の経験やスキルに関心を持った企業や転職エージェントからスカウトが届きます。転職エージェントからのスカウトの場合は、転職エージェントの利用と同様に、困ったことがあれば相談するといいでしょう。また、給与額や労働条件など、選考の場では聞きにくいことについて、間に入って確認してもらったり、交渉のアドバイスをしてもらったりすることも期待できます。 

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アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。