転職の相談は誰にすればいい?適切な相手の選び方と相談方法を解説

握手をする人たち

キャリアの方向性に悩んだとき、転職するかどうか迷っているとき、一人で考え続けてもなかなか答えが見つからないことがあります。そんなときは誰に相談すればいいのでしょうか。適切な相談相手の選び方や相談できること、相談する際の事前準備などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職活動の相談に適切な相手と相談内容

「転職」に関する疑問や不安を第三者に相談することで、視野が広がり新たな可能性に気づけたり、思いがけない情報を得られたりすることが期待できます。また、誰かに話すことで自分の考えや気持ちを整理できる効果もあるでしょう。

では、相談相手として適しているのはどのような相手なのか、詳しくご紹介します。

すでに退職済みの元上司・元同僚

会社を辞めた元上司・元同僚は、現職で培った経験・スキルを活かして、次の職場で働いている可能性が高いと考えられます。異業界・異職種に転身している人もいるかもしれません。「現職での経験・スキルを転職活動でどう活かせるか」「現職と転職先を比較してどう感じるか」など、客観的な観点から自分の経験・スキルについて意見を聞くことができるでしょう。

そのため、元上司・元同僚は自分の強みや向いている仕事が分からなくなってしまったときの相談相手に適していると考えられます。また、転職した元上司・元同僚の体験談は、転職に不安を抱いている家族に対する説得材料にもなり得ます。

ただし、その人が語る情報は、主観的であったり偏っていたりすることもあります。リアルな実情を聞けたと思っても、それはほんの一部のことかもしれません。その人が語ることが全てではないと認識し、情報を取捨選択したうえで活用するといいでしょう。

転職エージェント

転職エージェントは、まだ転職の決意が固まっておらず、キャリアの方向性に悩んでいる状態でも相談に応じています。相談時にこれまでの経験を話す中で、自身の「強み」「仕事に対する志向・価値観」「働くうえで大切にしたいこと」などを整理していくこともできるでしょう。最新の転職市場における相談者の現在の「市場価値」、転職する場合にどのような求人の選択肢があるか、相談者と近いキャリアを持つ人の転職事例、転職するのに今が適切なタイミングかどうかといった相談をしたいときに適している相手です。詳しくは後述します。

ハローワーク

ハローワークでも、求人情報を探すだけでなく、転職に関して相談することができます。例えば応募書類の添削や面接対策、セミナーの紹介など、転職活動にかかるさまざまなアドバイスを得ることが可能です。
地域ごとの企業や転職事情に詳しいので、地元企業で働きたいという場合も活用するといいでしょう。

ただ、日時によっては相談が集中している場合もあり、じっくり時間をかけた対応が難しい可能性もあるので注意しましょう。

家族・パートナー・友人

家族やパートナー、友人は、あなたの性格・志向・価値観などを深く理解しているため、それを踏まえた意見を聞けるでしょう。自身では意識していなかった「強み」に気づかせてくれることもあります。転職をするかどうか迷っているとき、身近な人からの意見をもらいたいときなどに適した相手です。

異業界への転職を検討している場合は、その業界で働いている友人に相談してみるのも手です。業界の内情や今後の展望、人材ニーズなどについて尋ねてみてもいいでしょう。

ただ、転職市場の状況や働き方に対する価値観は、時代によって異なるため、アドバイスを鵜呑みにはせず、参考程度に受け止めることが肝心です。
また、関係が近しいからこそ相手を思いやってしまい、厳しいアドバイスを避けるというケースもあるようです。本音を聞きたい場合は「厳しいことも言ってほしい」などと伝えておくといいかもしれません。

転職の相談前に準備しておきたいこと

転職の相談をする際には、以下の準備をしておくとスムーズです。

本当に転職したいのか、自分の思いに向き合っておく

解決したい課題に向き合い、それが本当に転職で解決できることなのか考えてみましょう。
自分の思いにじっくり向き合うことで、転職の意思を確認することができ、相談したいこともより明確になると考えられます。

場合によっては、「転職がベストな選択なのかどうか」を相談するのも一つの方法です。特に転職エージェントなど転職支援のプロが相手の場合は、相談者の目線に立ち、どうすることが自身にとってよりいいのかアドバイスしてくれるでしょう。

転職したい理由(悩み・不満・実現したいこと)を言語化しておく

相談相手には、転職したい理由(悩み・不満・実現したいこと)を明確に伝えることが大切です。課題解決につながるような意見やアドバイスをもらいやすくなるだけでなく、理由によっては転職時期の見直しや転職しない選択肢を提示してくれる可能性もあるでしょう。

希望条件を整理しておく

転職で叶えたい希望を箇条書きにして整理しておくと、どの希望ならば叶いやすいのか、客観的にアドバイスをもらえる可能性があります。

特に転職エージェントなどの転職支援のプロが相談相手の場合、転職したい理由(悩み・不満・実現したいこと)と照らし合わせ、どの希望が叶えられる可能性が高いか、優先順位の付け方についてもアドバイスしてくれるでしょう。

質問したいことを書き出しておく

元上司や先輩、同僚、そして友人など、忙しい時間を割いて相談に乗ってくれる相手のことを考え、質問事項は事前に用意し、書き出しておくとスムーズです。

転職エージェントなど転職支援のプロに相談する際にも、時間は限られているため、その時間を有効活用するためにも、「何社くらい応募すればいいのか」「似たような経歴の人の転職事例を聞きたい」など質問したいことを書き出し、何から聞けばいいか優先順位をつけておきましょう。

転職の相談をした際に起こりうるトラブル

転職の相談をした際に思わぬトラブルに悩まされることがあります。よくある例と回避方法をご紹介します。

家族やパートナーの反対にあう可能性がある

転職によって一時的にでも年収がダウンする、転居を伴うなどの場合、家族やパートナーの生活にも影響を及ぼす可能性があります。転職活動を行うことを共有せずに、内定を承諾した後で家族やパートナーに相談した結果、強い反発を受けて転職できなくなったというケースもあります。

トラブルの可能性を減らすためには、自身の転職が家族やパートナーのライフプランやキャリアプランにどのような影響を及ぼす可能性があるのか考慮しておくことが大切です。特に、転職の意向についてはなるべく早い段階で家族やパートナーと共有しておきましょう。

転職の方向性を見失う

周りへ相談しているうちに、転職の方向性を見失ってしまうケースも見られます。転職エージェントなど転職支援のプロ以外が相談相手の場合、各々の経験値だけに基づいた主観的で偏りのある考えであったり、情報が古かったりする可能性もあります。あくまでもひとつの意見として参考にする程度に留め、もしその中で気になる情報があれば転職支援のプロに相談し、客観的な意見をもらってみてもよいでしょう。

転職活動をしていることを周りに知られてしまう恐れも

転職を検討していることが社内の人に知られると、引き留めにあうなど、さまざまなトラブルにつながることがあります。トラブルを避けるためには、信頼している相手であっても、現職の上司や同僚に転職の相談をするのは基本的に避けた方がいいでしょう。すでに会社を辞めている元上司・元同僚であっても、現職の人たちとつながっていれば、悪気なくうっかり話してしまう可能性もゼロではありません。

また、個人のSNS投稿から情報が漏れてしまうパターンもあります。匿名のアカウントであってもプロフィールや投稿内容から個人が特定されることがあり、転職活動を知られてしまったというケースはあります。思わぬところから情報漏洩してしまわないよう、相談相手選びと言動には格段の注意を払い、匿名であってもSNSで転職に関連する発信を行うことは控えましょう。

転職支援のプロ・転職エージェントを活用しよう

前述した通り、転職エージェントは転職支援のプロであるため、転職に関するさまざまことを相談できます。以下を一例として紹介しますが、受けられる支援は転職エージェントによって異なります。実際に相談する際はどのような支援が受けられるのか確認することをお勧めします。

転職エージェントに相談できること

例えば、転職市場で評価される経験・スキルはどういった点か、強みは何か、キャリアの方向性についてなど、プロの視点で、自身の市場価値に対する相談をすることができます。また、現在の転職マーケットの動向や、求人からは読み取れない情報(募集背景、将来性、社風、年収想定、過去採用者、選考のポイントなど)についても相談することができるでしょう。

また、転職活動全体の進め方や選考に関する相談もできます。選考を効率的に進められるよう、「強み」が伝わる応募書類の書き方、応募先企業が選考において重視しているポイントや面接対策についてのアドバイスももらえるでしょう。選考が進んだ後は、年収・待遇などの条件交渉に関するアドバイスも受けることができます。

事前に自身のキャリアや経歴を登録しておこう

転職エージェントとの面談は、相談者のキャリアや経歴をもとに進められます。昨今はオンラインで面談を行うケースが多く見られます。自身に合うアドバイスをもらうためにも、事前に転職エージェントのサイト内で自身の情報を登録しておきましょう。登録が間に合わない場合は、面談の際に担当者に口頭でキャリアや経歴を伝えることもできるでしょう。

転職エージェントへの相談に関するQ&A

転職エージェントへの相談で「よくある疑問・質問」にお答えします。

転職するかどうか決める前に相談していいですか?

転職を決心する前に転職エージェントへ相談することは問題ありません。転職市場の動向、相談者の市場価値、キャリアについてのアドバイスを受けてから、転職するかどうか検討することも可能です。

転職エージェントで転職相談をする方法は?

転職エージェントのサイトに登録して、相談を依頼するのが一般的な方法です。登録をするときに、面談日程の希望などを入力するケースが多いです。

その他に、知人に転職エージェントを紹介してもらう、ビジネスSNSなどで検索して相談を依頼するといった方法もあります。

相談料はかかりますか?

エージェントは求人を募集する企業様から頂く、紹介手数料により事業が成り立っています。そのため、ご利用頂く転職者様からは一切料金を頂いておりませんので、安心してご利用ください。

複数の転職エージェントに相談するのは問題がありますか?

転職エージェントは必ずしも最初から1社に絞る必要はありません。キャリアや転職に関しては、多角的な視点で考えることは有効であり、複数の転職エージェントに相談し、さまざまなキャリアアドバイザーと話をしてみて、自分にフィットする転職エージェントを選ぶ手もあります。ただし、さまざまなアドバイスを受けたとしても、「最終的に決断するのは自分」という意識は持っておきましょう。

転職の相談はリクルートダイレクトスカウトも活用を

リクルートダイレクトスカウトは、経験やスキル、希望条件などに関する質問に答えてレジュメ(※)を登録し、レジュメが完成すると企業や転職エージェントからスカウトを受け取ることができます。転職エージェントからスカウトを受けた場合、求人に応募する前に転職相談を依頼することが可能です。

また、スカウトを受けることで、どのような企業が自身のキャリアに興味を持つのかが分かります。リクルートダイレクトスカウトを通じたスカウトでは、応募前の「面談」が確約されているので、「なぜ自分をスカウトしたのか(何を評価したのか/どのような期待を持っているか)」などを気軽に聞くことができ、自身の市場価値を把握しやすいでしょう。ぜひ気軽に利用してみてはいかがでしょうか。

※『レジュメ』とは、リクルートの求職活動支援サービス共通で利用できる、職務経歴書機能です。リクナビNEXT等、『レジュメ』を利用する他サービスで作成したレジュメを、リクルートダイレクトスカウトでそのまま利用可能です。

リクルートダイレクトスカウトは、会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。
アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。