IT通信業界の2022年の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2022年の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。
IT通信業界の2022年転職市場の展望を一言でいうと
DX推進への投資が再び加速。IT企業・事業会社の採用競争が激化へ。
求職者側は内定を複数獲得。辞退を防ぐため、企業はより多面的な情報開示が必要に。
1.【IT通信業界】業界・企業側の動き
求人数はコロナ禍前水準以上に回復し過去最高のレベルで採用が活発です。コロナ禍で一時DX推進や採用をストップさせた企業も、withコロナでのDX・採用投資に改めて踏み込んでいます。製造・流通・官公庁・金融など、どの業界でも案件が増加しています。
技術者派遣においても、非常に高い稼働率が続いています。案件に対して採用が間に合っていない状況です。未経験者採用を強化するほか、ミドル・シニア人材の活用にも動いており、50代の採用実績も増加しています。
IT業界全体で人材不足が慢性化しているばかりか、あらゆる業種の事業会社もIT人材の獲得を図っているため、採用競争は更に激化しています。業界をけん引するような大手IT企業でさえも即戦力層の採用に苦戦しており、未経験者の採用を積極化する動きが目立ちます。将来のDX推進を担う人材のポテンシャルをどう見極めるのか、未経験での中途入社者のキャリアプランや制度をいかに構築するかが課題。これらの確立が採用成功のキーとなるでしょう。
採用が活発な状況では、既存社員のリテンションも非常に重要だ。社員の満足度を高めつつ、生産性とスキルを上げていく取り組みも必要です。一部のベンダーでは年収を上げていく動きもあります。
事業会社では、IT部門のみならず、事業部門でIT人材を採用する動きもあります。事業とITベンダーとの交渉をスムーズに行い、また、より近いところで事業特有の課題に向き合い、解決のスピードアップを図ります。
人材不足のままDX推進を行わなければならない中では、コスト削減・工数削減のためのITの標準化・クラウド化などを進める必要があります。これまでのようなプログラミングやテストのオペレーションスキルだけではなく、ビジネスと照らし合わせた要件定義やセキュリティ対策なども重要視されるようになります。未経験者の採用を強化する一方で、社内の人材のITスキルを可視化・リスキリングを図っていくことも検討する必要があるでしょう。そして経営サイドも、ITのリテラシーがなければ経営を担えないようになっていくでしょう。
2.【IT通信業界】求職者側の動き
一人の求職者が複数の内定を獲得することが当たり前になっているため、内定辞退も増えています。一人ひとりにカスタマイズされた条件提示や、求職者に寄り添った施策が求められています。企業側としては、入社へ結びつけるために、入社前のフォローがより重要になっています。ビジョン、働く環境、一緒に働く人の魅力、キャリアパスをしっかりと伝える、マイナス面もきちんと開示することで信頼を得られます。
口コミサイトを見る人も増えている印象です。企業側は学習費用の補助といった福利厚生面などを充実させ、アピールする動きも出てきています。一方、求職者も企業のどの点に不安・不満を抱いているのかを考え、開示していくことで、すり合わせを進めていく必要があります。
現職をすぐに辞められない方からは「副業で試せないか」と要望するケースも出てきました。比較的融通が利く企業であれば、まずは副業で受け入れ、お互いの感触を確かめる、ということも求職者から見えと魅力的に映えるでしょう。
<IT通信業界の転職動向>
出所:リクルート『リクルートエージェント』転職決定者数の分析
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【2022年】転職市場の今後|全15業界の中途採用状況
中山 江利華
銀行系シンクタンク、ITコンサルティング企業を経験し、その後リクルートに入社。入社以来、一貫してIT領域を担当。キャリアアドバイザーを経て現在は大手企業をメインに担当する法人営業組織のマネジャーに従事。
丹野 俊彦
銀行系証券会社で営業、人事採用担当を経験後、リクルートキャリア(現リクルート)に入社。IT/Web系人材の転職支援、企業の採用支援を中心に、面接力向上セミナーの講師や拠点長など幅広く担当。現在はハイキャリア専門のコンサルタントとして事業会社IT領域の採用支援とITコンサルタントやエンジニアの転職支援を担当。