転職に年齢は関係する?年代別の転職のポイント

オフィスにてパソコンを操作する人

「転職を考えているが、今の年齢で動くのは適切なのだろうか」「年齢によって転職実現率はどのように変わるのだろうか」――転職に際して、「年齢」を気にかける方は多いようです。
結論を言えば、転職を実現できるかどうか は経験・スキルや希望条件などによる ところが大きいと考えられます。しかし、年代によって転職のしやすさは異なります。この記事では、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、各年代の転職の特徴やポイントについて解説します。

転職の平均的な年齢は?

2024年7月~12月の間に、リクルートエージェントを利用して転職が決まった転職者の平均年齢は36歳です。
年齢別の割合を見ると、25~29歳が35.38%で最も多く、次いで30~34歳が21.84%となっています。ほかの年齢を見ても、40~49歳が14.93%、35~39歳が12.39%、20~24歳が7.33%となっており、年齢にかかわらず幅広い年齢の人が転職しています。

(※)出典:「転職市場データ『転職者の平均年齢』」(リクルートエージェント)
https://www.r-agent.com/data/market/age/

また、総務省統計局発表の「労働力調査(詳細集計)」(2024年7~9月期)によると、転職者346万人の年齢階級別転職者比率は下図のようになっています。若い人のほうが転職者比率は高い傾向にあるものの、30代、40代、そして50代以降も一定割合あり、ここからも年齢に関係なく転職を実現していることが分かります。

年齢階級別転職者比率
(※)出典:「ビジネス・レーバー・トレンド2025年1・2月号『転職者の状況 ―労働力調査(詳細集計)の結果から―』」(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2025/01_02/c_01.html

若年層が転職しやすい理由

上記のデータでは、さまざまな年代が転職しているものの20代が最も多いという結果になっています。20代を中心とした若年層のほうが転職しやすい理由としては、主に次のような要素が挙げられます。

柔軟性が高く新しい環境に馴染みやすい傾向がある

20代は一通りのビジネス経験を積んでいる一方で、「固定観念 にとらわれず新しい環境になじめる柔軟性もある」と捉える企業もあり 、転職市場ではニーズが高い年代と言えます。この年代は、異業種・異職種へのキャリアチェンジのチャンスも比較的多い傾向にあります。

中高年層と比較すると希望条件が複雑ではない

年齢を重ねていくにつれ、結婚して家庭を持ったり、ローンで住宅を購入したり、家族の介護を抱えたりする人の割合が増えます。そのため、「年収」「勤務地」「勤務時間」などにおいて転職条件に制約が加わることがあり、転職活動をして内定を獲得できても、条件が折り合わずに断念するケースも少なくありません。

さらに社会人経験が長くなると、年収や勤務地などの条件のほか、「転職先でも何らかの役職に就きたい」と希望するケースが多くなる傾向にあります。管理職以上のポジションは数が限られているため、自身の希望や条件に合致する求人になかなか出会えず、転職活動に苦戦するケースもあるようです。

「長期勤続によるキャリア形成」の求人が多い

一定規模以上の企業では、社風に馴染み将来的に事業を支える人材を育成するため、新卒を採用して長期でのキャリア形成を行っています。
しかし、少子高齢化が進んでいる現在、新卒採用に苦戦している企業が増え、新卒採用予定数を満たせないケースも出ています。その結果、入社後に自社で育成していくことを前提に社会人経験1~3年程度の「第二新卒」をはじめ、20代を中心にポテンシャルを評価し採用を行う企業があるようです。

転職は何歳までが目安になる?

「35歳の壁」という言葉があるように、かつては35歳以上の転職は難しいとも言われていましたが、前掲のデータで分かるように、今は「転職できるのは何歳まで」という状況は過去のものと言えるでしょう。少子高齢化による労働力不足を背景に、多くの企業が人手不足の状態にあり、転職における年齢の壁はほぼなくなっています。特に近年は、中高年の豊富な経験に注目し、積極採用する企業も増えつつあります。

ただ、年齢(=社会人としての経験年数)によって、求められる経験やスキルは変わります。年齢を重ねるほど、より高い専門性やマネジメント力などが求められる傾向もあります。自身の年代が求められる経験、スキルは何かを理解し、転職活動でそれを的確にアピールすることが大切です。

中高年層にもますます門戸が広がっている

日本では少子高齢化が進み、構造的な労働力不足が深刻な問題となっています。労働力を増やすため、女性や外国人と並び、シニア層の活用も促進する機運が高まっています。
総務省統計局の「労働力調査」によると、2023年の65歳以上の就業者数は、2004年以降20年連続で前年に比べて増加しており、914万人と過去最多となっています。

これまでは、中高年のベテラン層を多数採用するという企業はそう多くはありませんでしたが、徐々に採用実績が蓄積し、活躍する中高年人材が増えたことで、企業側の認識も変化しています。

一方、中高年層の転職意欲も高まる傾向にあります。定年や役職定年を機とした年収の低下や裁量権の縮小を見越して、転職を検討するミドル・シニアが増加傾向にあるほか、平均寿命の伸長により「人生100年時代」と言われる中、いくつになっても働き続けたいという考え方が広がるなど、労働者側の心境も変化しています。このことから、今後も中高年層の転職機会は増え、長く活躍する人も増えると考えられるでしょう。

(※)出典:「労働力調査(基本集計)」(総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topi142_02.pdf

【年代別】転職で期待されていることと、転職活動のポイント

年代別に、転職において企業に期待されていることと、それを踏まえた転職活動のポイントを解説します。

20代は仕事への姿勢や熱意が見られる

20代は、ポテンシャルとポータブルスキル(業種・職種を超えて活かせる能力)が重視されると考えられる年代です。
20代前半では、ビジネスマナーなど社会人としての基礎力が備わっていることを前提に、成長意欲や仕事に対する熱意があれば、将来に期待して採用されるケースが多くあります。
20代後半では、ポータブルスキルに加え、一定の業務経験があると考えられることから 経験やスキル、実績に加え、業務の遂行力やテクニカルスキルなども評価対象となります。

そのため、転職活動では自分の強みや仕事に対する姿勢を具体的なエピソードとともに伝えることが大切です。20代前半で、まだアピールできるような実績がない場合は特に、これらが重視されるでしょう。
未経験職種へのチャレンジもしやすい年代なので、将来のキャリアプランとマッチする業界・職種を幅広く検討すると良いでしょう。

30代は即戦力としての活躍+マネジメントの素養が評価される

一定の経験を積んでいると考えられる 30代は多くの場合、即戦力としての活躍が期待されています。さらに、自ら考え、自律的に行動する姿勢も求められます。
特に以下のような経験・スキルは、評価される傾向にあるので、自身の経験を振り返って棚卸しをすると良いでしょう。

  • 課題を自ら発見し、解決まで主体的に動いた経験
  • チームやプロジェクトを牽引した経験
  • 顧客折衝や業務改善、デジタルツール導入など、実務面での変化に対応した取り組み

なお30代後半になると、これらに加えてマネジメントサイドとしての活躍も期待されるようになります。

これらの経験・スキルを伝えるためには、応募書類や面接で、実績やプロセスを数字で示しながら分かり やすく説明することが重要です。実際のエピソードを交えて伝えると、聞き手がよりイメージしやすいでしょう。
なお、30代は育児や介護など、ライフステージの変化が起こりやすい年代でもあります。応募先を選ぶ際には、プライベートとの両立やライフプランに合わせた働き方ができるかどうかという視点も必要になるでしょう。

40代には高い専門性とマネジメントスキルに期待

40代は、特定分野における高い専門性とマネジメント経験が主に期待されると考えられます。特に、40代半ば~後半の、20年以上の社会人経験を持つ人の場合は、特定領域での知見の広さや実績の多さが求められます。
また、組織改編・新規事業開発・DX推進・IPO準備といった変革フェーズにある企業では、これらの変革を率いた経験やスキルを持った経験豊富な人材が重宝される傾向にあります。
さらに、リーダーやマネジャーとしてチームをまとめた経験があることも重要な評価軸となり、部下の育成やチーム全体の成果創出に貢献できる力が求められます。

したがって、職務経歴書や面接では、特定の分野における経験やスキルを伝えるのはもちろん、それらをどのように活かしてきたか、どのような成果につなげたのかを、具体的に説明しましょう。
「プレイヤー」としての実務力と「マネジャー」としての統率力、その両方をバランスよくアピールできるとより効果的です。
一方で、ベテラン層になるほど「柔軟性に欠けるのではないか」「新しい環境に適応しにくいのではないか」と 懸念される可能性もあるため、変化を恐れない姿勢、新たなチャレンジにも前向きに取り組む姿勢を伝えることも重要です。

50代以上は豊富な経験・スキルに加え「柔軟性」「謙虚さ」も見られる

業務経験豊富と考えられる 50代以上に対しては、専門性の高さや業界知見、マネジメント経験、そして自律性と安定感が求められます。特に、以下のような経験・スキルが評価されやすい傾向があります。

  • 経営に関する知見や役員との折衝経験
  • 数十名規模の組織マネジメント経験
  • 財務・人事・事業戦略など、経営機能に関わる経験
  • 長年の業界経験を活かした提言力や改善提案力

また、企業によってはアドバイザー的な立場や、後進育成・管理体制構築といった役割も期待されることがあります。

前述のように、50代以降のベテラン層を評価し、採用する企業は増える傾向にあります。「年齢に関係なく採用する価値がある」と企業に思わせるだけの経験の広さ・深さと、再現性のある実績が求められます。
また、50代の転職では、「柔軟性」と「謙虚さ」も重要視されるため、面接での受け答えの際に意識すると良いでしょう。

転職エージェントやスカウトサービスを活用するのも一つの方法

希望の転職を実現できるかどうかは、年齢よりも経験・スキルによるところが大きいでしょう。十分な経験・スキルを持っている人でも、それを活かせる求人を選択できるか、希望条件の優先順位を整理することができるか、応募企業に対して適切にアピールできるかどうかによって明暗が分かれます。

自身の専門領域の求人動向に精通した転職エージェントから情報を得たり、転職活動のサポートを受けたりすることで、転職実現率は高まります。まずはご自身に合う転職エージェントに出会い、相談してみてはいかがでしょうか。
年齢だけでなく経験・スキルを重視した企業からオファーが届くスカウトサービスを活用するのも一つの方法です。特に経験豊富な中高年層は、ハイクラスな求人が集まりやすいスカウトサービスを選ぶと良いでしょう。

アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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