日本のものづくりをトップパートナーとして支える──富士通の事業ブランド「Fujitsu Uvance」の取り組みとは

野田智孝氏

富士通は2年前に全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation(フジトラ)」を本格始動した。富士通自身の変革を進める中、新たな事業ブランドとして発表されたのが「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」だ。グローバルな専任組織を立ち上げ、2022年4月1日に1,000人規模の体制でスタートを切った。Uvanceの注力分野の一つに、製造業を支援する「Sustainable Manufacturing(SM)」がある。事業部長の野田智孝氏に、同事業の取り組みや人材採用、キャリア入社者への期待について話を伺った。

「日本の社会であるべきICT企業」を体現するため、大きな変革が進む

──野田さんは外資系ICT企業で経験を積まれた後、2021年に富士通に入社されています。なぜ、転職先として富士通を選んだのでしょうか?

一言で言えば、「日本のものづくりの支援に、自分のキャリアをかける価値があると思ったから」です。

私はこれまで数十年、「ものづくりにITをどう取り入れていくか」というテーマに向き合って仕事をしてきました。欧州企業にも在籍していましたが、特に欧米ICT企業は「複雑なものを標準化する」というものづくりDXで台頭しています。

富士通は「ものづくりのIT化」において、日本でトップを走っていた存在。しかし、こうした欧米ICT企業勢のビジネスモデルにおいては遅れをとっていました。日本経済にとって、ものづくりは非常に重要です。それを支えるIT業界も、日本企業がトップにいてこそ、日本の次世代に産業を残せる。富士通にはその責務があると考えています。

私は50代を迎え、現役生活の終わりを気にするようになりました。残りのビジネス人生をどう過ごそうかと考えていたとき、Uvanceの価値観に出合いました。富士通では、時田社長をはじめとする経営陣が「本気で」会社の変革を進めています。「日本の社会であるべきICT企業の姿の実現に向けて、自分の最後のキャリアをかける価値がある」──そう確信し、富士通に入社しました。

実際に入社してみると、かなりドラスティックな取り組みが進んでいました。入社前は体質が古いようなイメージも抱いていましたが、それらは覆されましたね。あるべき姿の実現に向け、つまらない忖度など一切なく進むのが、今の富士通のカルチャーです。

野田智孝氏

「サステナビリティ・トランスフォーメーション」を加速

──野田さんが魅力を感じた「Fujitsu Uvance」の概要を教えてください

出発点は、富士通グループのパーパス「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」。このパーパスを実現する事業として、7つのKey Focus Areas(重点注力分野)を定め、2021年10月に新ブランドとして発表したのが「Fujitsu Uvance」です。

Uvanceとは、Universal+Advanceを組み合わせた言葉。あらゆる(Universal)ものをサステナブルな方向に前進(Advance)させるという想いが込められています。私たちは2030年の世界をこのようにデザインしています。

「サステナブルで誰も取り残されない社会とグリーンな未来の実現に向けて、人・地域・企業・もの・データが繋がり合い、生活者視点での価値提供や社会課題の解決に立脚したイノベーションが起こる世界」

Uvanceを通じ、業種の垣根を越えて企業をつなぎ、それぞれの強みを活かして地球や社会をより良いものにしていく「サステナビリティ・トランスフォーメーション」を加速させます。

なお、Uvanceの7つのKey Focus Areasは以下のとおりです。

<社会課題を解決するクロスインダストリー4分野>

・Sustainable Manufacturing
・Consumer Experience
・Healthy Living
・Trusted Society

<クロスインダストリーを支える3つのテクノロジー基盤>

・Digital Shifts
・Business Applications
・Hybrid IT

Uvanceの7つのKey Focus Areas
▲「Fujitsu Uvance」を構成する7つのKey Focus Areas(重点注力分野)

先進的な企業様と手を結び、新たな考え方・価値を続々と創出

──野田さんが手がけるのは4分野のうち、製造業を支援する「Sustainable Manufacturing」ですね。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか

まず、以前の富士通が抱えていた課題からお話ししましょう。もともと富士通の強みといえば、個々の顧客企業の悩みに対して実直に寄り添う力です。しかし、これは強みでもありましたが、業界全体の課題を横串で捉えにくく個人のケイパビリティに依存するモデルという弱みにもなっていました。

多くの人材を集められる時代ならそれでもよかったのですが、今は人材確保が困難になっています。しかも日本以外へ展開しづらいモデルであるため、ビジネスのスケールアップに限界が見えていたのです。

そこでUvanceでは、社会課題や業界課題についてその「解決策」「あるべき姿」にアプローチしていきます。お客様自身がまだ気付いていない課題として、「解決策」「あるべき姿」を提案します。そして、お客様と富士通コンサルタントが並走しながら、真の課題を掘り下げていきます。

あるべき姿については、業務カバーできるベストなツール(自社製/他社製)を、事前にある程度の完成度のアプリケーションサービスとして準備しておきます。コンサルティングの結果をもとに組み合わせるサービスインテグレーションモデルへの展開です。これを富士通のクラウドベースのマネージドサービスで提供します。さらに、ユースケースが成熟したものをSaaSサービスに転換していきます。スキル・コスト・時間面で導入負荷が低いこのモデルを、全世界に展開していきます。

これまでの取り組みの一例には、次のようなものがあります。

GHG(Green House Gas:温室効果ガス)排出量の算定と、目標実現に向けた施策立案を支援

GHG排出量の算定と、目標実現に向けた施策立案を支援

AR(Augmented Reality:拡張現実)技術による確実な作業ナビゲーション

AR技術による確実な作業ナビゲーション

HPC(High Performance Computing:高性能計算)とAIの活用により、カーボンフリー触媒の探索を加速

HPCとAIの活用により、カーボンフリー触媒の探索を加速

このように先進的な企業様と手を結び、新たな考え方・価値を創出していっています。まさに卵を生むような感覚です。

富士通の優位性は「最後まで自らの手でつくり上げられる」という強み

──このビジネスにおいて、富士通の強み・競合優位性はどのような点にありますか?

大手ITコンサルティングファームなどが競合にあたりますが、私たちの優位性は、あらゆる領域において最後までしっかりとシステムをつくり上げられるところです。

具体的には、「CRM」「ERP」「PLM」「SCM」「MES」「WMS」「ロジスティクス」「スマートファクトリー」「データ利活用」「カーボンニュートラル削減」「マテリアルインフォマティックス」など、幅広い業務・業種領域でのシステムコンサルと導入経験が活かせる。コンサルの結果、最後まで自ら責任を持って遂行できる力が、私たちにはあります。

今後は業界課題のコンサルティング力を強化し、それに幅広いシステム構築力を掛け合わせることで、お客様の経営課題解決・DXを牽引する企業になります。

野田智孝氏

ゼネラリストもスペシャリストも、多様なタイプの人が活躍できる

──現在の富士通では、どのような人材が活躍できるのでしょうか。Uvance事業でのキャリアの可能性についてお聞かせください

ビジネス企画、セールス、業務コンサルティング、業務アプリケーション開発、システム導入、マーケティングの経験など、幅広い領域の経験者を求めています。「全工程に携わるゼネラリスト」と「専門領域のスペシャリスト」、いずれのタイプの方にも活躍の場があり、全体をリードする事業企画などのキャリアも描けます。

業務を理解し、業務のあるべき姿をデザインできる方に来ていただきたいですね。例えば、製造業で長きにわたりものづくりに関わってきて、近く迎える役職定年をきっかけに転職を図りたいという方も歓迎します。日本企業に対して思い入れを持つ方と一緒に、よりよい未来をつくるチャレンジをしたいと思います。

もちろん、新しいことに取り組みたい若手世代にも注目していただきたい。先ほど挙げた「CRM」「ERP」「PLM」「SCM」「MES」「WMS」「ロジスティクス」「スマートファクトリー」「データ利活用」「カーボンニュートラル削減」「マテリアルインフォマティックス」など幅広い業務・業種を経験することができます。様々な企業を渡り歩きながらスキルを磨くのではなく、大きなひとつのミッションの連続性の中で、スキルを磨くことができます。

いずれにしても、ちょっと尖った人、変わった視点を持っている方をお迎えしたいです。もちろん最低限の協調性は必要ですが、自分の考えや思いを持ち、しっかりと主張できる方に期待を寄せています。

野田智孝氏

「日本企業で、ここまでダイバーシティが体現されているのか」という驚き

──「自分を主張する人」を受け入れる風土があるということなのですね

実は私自身も入社してみて意外に感じました。「日本企業でここまでダイバーシティ(多様性)が体現されているのか」と。さまざまなタイプの人を受け入れますし、誰もが意見やアイデアを自由に発信できる雰囲気があります。その発信に対してとがめられることもない。外資系から来た私でも、「そこまで言っちゃっていいの⁉」とびっくりするような意見も飛び交っています。

入社前は富士通という会社に対して、「お客様に言われたことをやる企業」という印象を抱いていました。事実、そのような性質はあるのですが、入社後はポジティブな印象に変わりました。

単なる御用聞きではなく、「お客様に言われたことを絶対に実現してやる」という気概を持つ、職人の集団でしたね。役に立とうとする姿勢と技術力、とにかく「個人の力」が非常に高い。「下町ロケット(※)」に登場する企業と重なる感覚を抱いています。

※TBS系「日曜劇場」枠で放送された、池井戸潤の小説「下町ロケットシリーズ」を原作としたテレビドラマ

野田智孝氏

住む場所にも制約ナシ。「自己責任で仕事をする」意識が徹底された風土

「意外と自由」という点でいえば、住む場所にも制約がありません。私が交流している社員には、沖縄在住の方もいます。「自己責任で仕事をする」という意識が非常に強い風土です。

富士通では、全社員がリモートワークを実践できる環境を整備しています。2020年7月に発表した新しい働き方のコンセプト「Work Life Shift」の推進により、リモートワーク率80%を実現。社外サテライトオフィスの利用に関しては、月平均で約6,000人に達しています。

──大手企業は「階層が厚く、意思決定が遅い」とよく言われます。スピードについてはどう感じますか

スピードは速いです。もちろん計画に対するチェックはきっちりと入りますが、しっかりした説明ができれば決裁は早い。スタートアップやベンチャーは意思決定が早いと言われますが、資金調達の状況で実行が遅れることもあるでしょう。富士通は役員がその決裁権を持っているので、納得を得られればすぐに実行に移すこともできます。

キャリアパスとして能力次第でランクが一気に2~3アップすることもめずらしくありません。また、「フジトラ」による改革では、幹部社員の階層も薄くしています。私の組織でも、事業部長である私の下に幹部は2階層。それ以上に階層を深くしてはいけないことになっています。

その改革により風通しが良くなり、より意見を吸い上げやすくなりました。また、階層が薄い組織では、「任せる」ことをしないと仕事が進まないので、若い世代を育てる施策としてもよく考えられていると思います。

大きな変革期にある組織で切磋琢磨し、自らを尖らせたい方にとってはうってつけの環境です。「日本の製造業を支えていきたい」という想いを持った方々に、ぜひUvance事業に参加していただきたいですね。

野田智孝氏

野田 智孝氏

明治大学大学院理工学研究科卒業。製造業のデジタル化業務に約20年従事。2001年 テクノマティクス社入社。生産ラインシミュレーション、ロボットシミュレーションの開発導入を通じ、製造現場のデジタル化に従事。2008年 (企業買収により)シーメンス株式会社所属。PLM導入プロジェクト、ポートフォリオ開発日本責任者、 Industrie 4.0に関連したコンサルティング、MES事業立上に従事。2021年富士通入社。サステナブルな世界の実現に向け、社会課題の解決にフォーカスしたビジネスに従事。

富士通の企業概要

総合エレクトロニクスメーカーであり、総合ITベンダー。通信システム、情報処理システム、電子デバイスなど、幅広い領域のプロダクト、サービス、ソリューションを提供し、約13万人の社員が世界180か国でお客様をサポートしています。2019年よりDX企業への転換を宣言し社内DX改革を推進している。
設立:1935年6月20日
従業員数:124,216人(2022年3月末時点)
資本金:3246億2500万円(2022年3月31日時点)
売上高 連結:3兆5897億02百万円(2021年3月期)

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