【2023年度上半期】化学業界の転職市場は今後どうなる?

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化学業界の2023年度上半期の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2023年度上半期の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひ参考にしてください。

化学業界の2023年度上半期の転職市場の展望を一言でいうと

全体の求人はやや減少。「新規事業」「サステナビリティ」「環境」などの採用は継続。
求職者は、自身の専門分野に注力する企業、ライフスタイルに合う企業を求める。

1.【化学業界】業界・企業側の動き

化学大手ではコロナ禍の特需の反動を受け、昨年度と比較すると採用は落ち着いている傾向が見られます。2023年初頭には活況だった半導体、ライフサイエンス領域の求人はやや減少しています。とはいえ、例えば100人の採用計画を30人に抑制するといった状況であり、完全に募集が止まったわけではありません。

一方、積極採用を継続しているポジションもあります。化学業界は変革期の真っただ中にあり、既存ビジネスの再構築、新規ビジネスの創出への取り組みを止めるわけにはいきません。変革を担う「新規事業企画」や「生産技術・生産管理のDX推進」などの採用意欲は引き続き旺盛です。また、「サステナビリティ企画・推進」「環境安全」「化学物質管理」などのポジションも募集を続けています。これらの領域は経験者が少なく売り手市場となっているため、各社、採用に苦戦している状況です。

領域別に採用ニーズが高いポジションをピックアップすると、まずEV関連では電池の研究開発職のニーズが依然として高く、電池メーカーや自動車メーカーとの争奪戦が続いています。「脱炭素」の動きの中では、CO2削減を担うプロセス開発の求人が増加傾向です。再生可能エネルギー関連では、水素社会の到来に向け、水素を生成する触媒開発の求人が増えています。ライフサイエンス領域では、製薬企業から医薬品の製造を受託する「CDMO」に注力。この事業に関わる人材が不足しており、製薬業界経験者を求めています。

大手では人事施策の変革にも積極姿勢が見られます。賃上げを実施している企業が多いほか、リスキリングにより社内でDX人材を育成する取り組みもあります。女性活躍も推進しており、女性管理職の採用にも意欲を見せています。

2.【化学業界】求職者側の動き

転職に踏み切る理由として最近増えているのは、「所属企業の業績悪化」「事業の撤退・縮小」。自身の専門分野が会社の注力対象分野から外れたのを機に、「自身の技術を求めている分野・企業に移りたい」と転職相談を寄せる人が増えています。「○○分野に行きたい」という希望対象は絞らず、自身の経験が生かせる場を幅広く模索している印象です。また、「在宅勤務」「勤務地固定」「職種チェンジ」を望む声も多数聞こえてきます。

現在手がけている商材の市場が縮小に向かっている場合、求職者の希望は「まっとうに開発に取り組める環境に移りたい」。経験年数・内容にもよりますが、この希望を実現するチャンスはあります。実際、合成・配合のスキルを生かし、異なる商材の研究開発職への転職を果たしている事例があります。

一方、引く手あまたである電池の研究開発職の方が「今は電池メーカーで働いているが、もともとは化学が専門。化学のコア技術を使い、素材から携わりたい」と、化学メーカーに転職した事例もあります。昨今の求職者は、以前ほど「大手企業」への入社にこだわらない傾向が見られます。「自身のスキルを生かせること」「ライフスタイルに合う働き方ができること」が、企業選びの軸となっているようです。

化学業界への転職者数の推移

2023年度上半期のそのほかの業界の動向について知りたい方は、こちらを参考にしてください。
【2023年度上半期】転職市場の動向|17業界コロナ禍後の中途採用・転職活動の最新状況を解説

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足立絵美

大学では化学を専攻し、リチウムイオン蓄電池を研究。リクルートキャリア(現リクルート)入社後は、大手製造業(化学・自動車・技術者派遣)を中心に法人営業を担当した後、化学のハイキャリアのエンジニアを中心に転職活動を支援。