人材業界の2023年度上半期の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2023年度上半期の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひ参考にしてください。
人材業界の2023年度上半期の転職市場の展望を一言でいうと
人材紹介・人材派遣ともに新規事業を拡大。「営業」「無期雇用派遣スタッフ」を採用。
求職者は「成長」を求める一方で、「ワークライフバランス」も重視。
1.【人材業界】業界・企業側の動き
人材紹介領域では、法人向け営業および個人向けに転職支援を行うキャリアアドバイザーやコンサルタントのニーズがあります。特に中小企業の採用意欲が高いようです。その背景は「旺盛なIT人材需要への対応」「新たな領域での紹介事業の立ち上げ・拡大」「人材サービス以外の新規事業展開」など多様です。求人は営業職が中心で、業種・商材を問わず営業・販売経験者を主な採用ターゲットとしています。ITエンジニア経験者も歓迎されています。このほか、一部企業からは新規事業に関わるポジションの求人も出てきています。
人材派遣領域では、新規参入企業が増えていることもあり、全体の求人数が伸びています。これまで一般的だった有期雇用派遣は市場が飽和状態のため、「無期雇用派遣」事業を立ち上げ、強化する動きがあります。無期雇用派遣とは、派遣会社と期間を定めずに雇用契約を結び、派遣先企業で就業するスタイルです。この事業に注力するにあたり、派遣スタッフを取りまとめるプロジェクトマネジャーやスーパーバイザーの採用を行っています。業界経験問わずマネジメント経験者を求めており、店舗運営経験者なども採用対象となっています。
無期雇用派遣の対象職種は、事務職を中心に、技術系ではIT・施工管理・機械・電気系エンジニアなど。これらの無期雇用派遣スタッフは、未経験者も対象として採用し、自社で育成しています。各社、派遣人材の獲得のため、「就業後のフォロー体制の充実」「直接雇用への移行を前提とした支援」「入社初年度から産休・育休取得可」など、魅力を高める工夫を凝らしています。
IT人材の無期雇用派遣に関しては、シニア層の力に注目し、50代後半以上のマッチングに取り組む動きも見られます。
人材業界で事業拡大を図っている企業は、新人教育の観点と営業効率の側面などから「フル出社」を基本としているケースが多く、労働時間も比較的長い傾向にあります。そのため、リモートワークを整備する企業と、働き方の柔軟性の面で比較されると、苦戦する傾向があります。採用力強化のため、残業時間の削減や賃上げなどの検討を行っています。
2.【人材業界】求職者側の動き
人材業界の営業職採用では「成長したい」「早く昇進したい」という志向を持つ人材を求める傾向が強く、その条件にマッチする20代が応募・採用されています。また、面接を受けてみて「社員に好印象を抱いた」「ロールモデルとなる人を見つけて将来像をイメージできた」と、入社を決断する人もいます。
しかし一方で「ワークライフバランスも重視したい」という声も多いです。そのため、成長できる環境に引かれて応募したものの、労働時間の長さやリモートワーク不可などを懸念して、辞退するケースも出てきました。
人材派遣領域では、販売・接客業の方々がキャリアチェンジを目指して転職活動を行った結果、「無期雇用派遣の事務職」を選択するケースが多くなっています。選考スピードが速く、面接1回で内定が出るため、そのまま決める傾向があります。派遣就業においても、重視されるのはやはり「残業の少なさ」「柔軟な働き方」です。
自社社員にしても派遣スタッフにしても、採用成功のためには「働きやすさ」の追求が必須課題と言えるでしょう。
2023年度上半期のそのほかの業界の動向について知りたい方は、こちらを参考にしてください。
【2023年度上半期】転職市場の動向|17業界コロナ禍後の中途採用・転職活動の最新状況を解説
佐久間勇旗
新卒でリクルートに入社し、一貫して人材紹介事業の法人営業に従事。現在は、主に人材派遣業界を担当。無期雇用派遣事業の事務職や技術職の大量採用の支援に携わる。
三橋 凌
新卒でリクルートに入社し、一貫して人材紹介事業の法人営業に従事。現在は、主に人材業界を担当。営業、企画スタッフ、管理部門まで幅広く採用支援を行う。